大阪市で「こども誰でも通園制度の試行的事業」が始まってから2週間が過ぎました。あくまで「試行的事業」という建て付けですが、実施施設数や申込率は決して高くありません。

試行的事業を実施している施設は大阪市全体で17施設(全体の2%弱)に留まりました。また、1か月辺りの受入人数は649人に留まっており、大阪市が当初想定していた1408人を大幅に下回りました。

思い当たる理由はいくつかあります。真っ先に指摘できるのは、申し込んだ年齢の偏りでしょう。

開始初日に各社が取材した住の江幼稚園(認定こども園)で初回に利用したのは1歳児2人でした。その他の施設でも利用者は0歳児や1歳児に偏っており、2歳児枠は大量に余っていました。

一定の家庭外保育を必要とする2歳児は既に保育所等を利用していたり、幼稚園の2歳クラスを利用していたりしています。特に大阪市はここ10年ほどの間に非常に多くの保育所等を新設しました。誰でも通園制度へのニーズが乏しく、屋上屋を架しているのが現状です。

反対に0-1歳児は多くの申込があった保育所等もあったと考えられます。保育所等の2歳児クラスと同じ様に2歳児枠を「満3歳を迎えた年度末まで」とする、2歳児枠を0-1歳児に振り返る等の対応が必要でしょう。

0歳児や1歳児の家庭育児で特に大変なのは食事関係です。もう思い出したくもありません。代わりに昼寝さえしてくれれば、外出はできなくても親は気が抜けます。

誰でも通園制度で申込者が集中した時間帯の一つに「昼食を挟んだ時間」がありました。登園・遊び・昼食(・お昼寝)までを施設で担って頂けると、親は本当に助かります。

試行的事業の実施施設がごく僅かに限られた最大の理由は、保育士や施設等の保育資源が不足しているからでしょう。我が家がお世話になっている保育園は「職員も保育室もない」と即断したそうです。

それに加え、夏場特有の事情もあります。「水遊び」です。

我が家がお世話になっている保育園では、夏場は水遊びやプール遊びを実施しています。6月上旬には各家庭へ説明プリントを配布し、準備や体調管理等を促しています。

しかし、これに誰でも通園制度で登園した児童が混じるのは非現実的です。事前準備の多さに加え、普段はいない児童にまで保育士が注意を払うのは難しいです。水遊びには監視要員としての保育士等も必要となります。人手が不足しがちです。

同じ様な事態は秋の運動会、冬の発表会等でも起こり得ます。誰でも通園制度によって季節特有の遊びや行事(準備)等のスケジューリングが影響されるのであれば、「だったら通園制度はやりたくない」となるのは自然です。

2025年度以降に本格実施?

政府は2025年度以降に本格実施をする方向で検討を進めています。月あたり利用時間の上限の引き上げを検討するそうです。

 こども家庭庁は、親の就労の有無に関係なく保育所を一定時間利用できる「こども誰でも通園制度」について、2025年度以降の本格実施に向けた検討を開始した。(中略)

 試行では、利用時間の上限を月10時間としているが、一部自治体からは足りないとの指摘が出ている。保育士の負担が増えることも考慮しながら、制度化する際の新たな上限を検討する。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f0e1bd43c4f54732e8d2032472052487a7457462

また、今年4月にバックデートする形で要支援家庭の子供や医療的ケア児を受け入れた施設への補助額を大幅に加算しました。

こども家庭庁によりますと、国と自治体が保育所などに出す補助額は、1人1時間あたり850円を基本とし、虐待などが疑われる要支援家庭の子どもを受け入れる場合、400円を加算します。また医療的ケア児など、外出が困難な子どもを受け入れる場合、居宅への訪問などより手厚い支援体制を作れるよう、基本の補助額850円に2400円を加算します。

https://news.yahoo.co.jp/articles/eaa491bd5794d8d6e52b33a1930eb874acd7ae94

しかし、要支援家庭の子供は誰でも通園制度ではなく、正規の園児として保育等を行いながら見守るのが望ましいでしょう。月10時間では保護者や子供との信頼関係が築くのが難しいです。

更に誰でも通園制度はそもそも医療的ケア児の受入を想定した制度なのでしょうか。責任が重大過ぎます。受入れ態勢が整っている施設等で更に受け入れる余地はあるのでしょうか。

誰でも通園制度は一定のニーズがあるのは間違いありません。しかし、現時点では上手く噛み合っていない部分が多いと感じています。現在はあくまで「試行的事業」なので、本格実施するまでに問題点を解消していくのでしょう。