大阪市でも7月1日から「こども誰でも通園制度の試行的事業」が始まりました。先日の記事で申込が「昼食提供」や「0-1歳児」に偏っている事をお伝えしたばかりです。

【6/25追記】「昼食提供」「0-1歳児」に集中 大阪市こども誰でも通園制度の試行的事業(関目中央保育園の事例より)

学校や保育所等で節目となる行事や新たな制度が始まったりした際、大阪市はマスコミ等が取材を行う施設を指定するのが専らです(指定施設はその都度変わる)。

「大阪市こども誰でも通園制度の試行的事業」の開始初日に取材対象となったのは、認定こども園住の江幼稚園(住之江区)でした。

【速報】大阪市で「誰でも通園制度」試行実施始まる 母親「夫が仕事を抜けて病院に…制度ありがたい」「少しでも自分の時間が」

大阪市住之江区の「住の江幼稚園」では、試行実施初日の午前9時半から、子どもを幼稚園に預ける保護者の姿が見られました。(以下省略)

https://news.yahoo.co.jp/articles/118745b68c181967001271aa1e2db29073a2869f

同園は募集枠を午前と午後とで区別し、それぞれ1歳児2人・2歳児4人を定員としています。

報道を見る限り、初日の出足は決して好調だったとは言い難いです。6人の枠に対し、確認できた児童は2人のみでした。これに対して保育士2人が保育に当たっていました。

他の時間帯にどれだけの申込があったかは不明です。ただ、受入枠をほぼ充足したとは考えにくいです。

今回はあくまで「試行的事業」です。充足率の低迷や申込の偏り等は織り込み済みでしょう。これらを踏まえ、今後の本格実施へ繋げていきます。

とは言っても解決が難しい問題もあります。「待機児童問題」や「保育士不足」です。大阪市の待機児童は「2人」まで減少しましたが、2500人以上の申込者が入所保留となっているのが実情です。

【重要】大阪市の待機児童は2人、保留児童数は2,541人、決定率下位は旭区・西淀川区・東淀川区(2024/4)

誰でも通園制度の対象と入所保留児童は真っ正面からぶつかります。保護者が就労等をしている児童の受入人数の拡充を図り、入所保留数を減らすのが優先です。多くの保留児童の存在を脇に置き、「誰でも通園制度を充実させます」とは理解され難いです。

保育士不足もリンクします。大阪市は保育士の待遇の充実を図っていますが。依然として保育士は不足しています。我が家がお世話になっている保育園でも全く余裕がないと聞いています。

限られた保育士にどの様な役割を担ってもらうかと考えると、誰でも通園制度の優先順位は下がってしまいます。

住の江幼稚園が試行的事業に手を挙げた理由の一つとして推測される事柄があります。同園は同じ所在地に「すみのえひよこ保育園」を運営しています。

同園の定員は39人ですが、充足率は決して高くありません。住之江区のウェブサイトによると、2024年7月1日時点で0歳児1人・1歳児7人・2歳児6人の空きがあります。充足率は約7割です。

これらから同園では約3割の未充足定員を行えるだけの人的・物的な余裕があると推測できます。これらを試行的事業に充てたものだと考えられます。

この様な運用方針であれば、施設にも利用者にも無理が掛かりません。更には保育認定に満たない家庭であっても、より長い時間で保育所等を利用出来る制度も視野に入ります。

一方で大阪市内中心部の様に待機児童問題が未だ深刻な地域では、誰でも通園事業に人手を割くのはまだまだ難しいでしょう。

恐らくは全ての園で一律に誰でも通園事業を実施するのは不可能です。当面は様々な事情で人的・物的な面に余裕があり、かつ一定の利用ニーズが見込める施設が手を挙げる形式が無難だと感じています。

誤算だったのは2歳児ニーズの少なさでしょう。既に何らかの施設を利用している2歳児が多いのに加え、満3歳児以降は利用出来ないのが主な理由です。2歳児枠を満3歳以降に拡張する、もしくは0-1歳児に振り替えるのが不可欠です。