(追記)
大阪府立高校改革については、大阪府学校教育審議会において議論が進められています。

令和6年2月には「府立高校改革の具体的な方向性とそれを踏まえた入学者選抜制度のあり方について(中間報告)」、1月には「多様なニーズに応える府立学校のあり方検討部会(報告書)」が報告されています。

多様化する生徒の状況やニーズを踏まえ、不登校・障害・日本語指導等により配慮した学びを検討したものです。

上記中間報告の末尾には「これまでの審議を踏まえ、多様な生徒がチャレンジしやすく、一人ひとりの学習機会を保障するために望ましい大阪府立高校全体としての入学者選抜制度のあり方について、引き続き審議を重ねていく。」という文言があります。

実はこの中間報告は「府立高校改革の具体的な方向性」しか記されておらず、後段部分たる「それを踏まえた入学者選抜制度のあり方」は触れられていません。

具体的な方向性が示唆されたのが、産経新聞の記事だったのでしょう。

ただ、私立高校授業料完全無償化によって生徒の志望動向が大きく変化してしまいました。府立高校改革も選抜制度のあり方も抜本的な考え直しが不可欠でしょう。

我が家がお世話になっている中学校では、勉強する生徒と全く勉強しない生徒との二極化が深刻です。定期テストの平均点は50点前後が多く、更に点数は30点台~70点台までなだらかな台形(もしくは50点台が凹んだ形)を示しています。

子供は「平均点より○○点良かった」とはしゃいでいますが、問題難易度に対する平均点が余りに低すぎるのです。

日々の復習や定期テスト試験対策を行わない生徒が、府立高校入試に向けた勉強をするのは難しいです。

これまでは保護者等が「授業料が安い府立高校へ進学して欲しい」と強く促せましたが、私立高校授業料が完全に無償化されると難しくなります。

「私立高校の高額な授業料」という、学校や保護者が生徒に勉強を促す強い動機付けが消失してしまいました。府立高校の受験を諦め、入学試験が形骸化している私立高校へ進学する生徒が増えるのが当然です。

どの様に府立高校を改革しようとも、この流れは止まりません。そもそも府立高校が何を考え、どの様な授業を行っているかが中学校や中学生・保護者に伝わってきません。

以前に中学校の先生に「生徒に高校等への進学説明をするのはいつ頃か?」と訊ねた所、「中学3年生の1学期末」という返答がありました。驚愕しました。府立・私立高校の情報を集めて説明会に参加したり、内申点を工夫したり、入試に向けた学習を積み重ねるには遅すぎます。

高校進学に興味関心がある家庭は、中学1-2年生の段階から情報収集に動いています。各校の説明会に参加する、塾から話を聞く、ネット上のブログ(府立高校受験ブログはアメブロに集中している)を読み込む等、様々な方法があります。

しかし、中3の1学期末や夏休みから動き始めても、既に手遅れです。面倒な府立高校受験を回避してしまうのでしょう。高校入試(もしくは中学入試)で真面目に受験勉強をしなければ、大学入試で受験勉強に没頭するのは困難です。子供にも同趣旨の話をしています。

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高校授業料の完全無償化に続き、大阪府の高校入試が激震が走りそうです。早ければ令和8年度入試より、大阪府立高校入試が変更されそうです。

大阪公立高の志願者激減、入試日程見直しへ 私学完全無償化で

大阪府教育庁が、毎年3月に実施している公立高の入試日程などを見直す方向で検討していることが28日、関係者への取材で分かった。令和6年度以降に段階的に導入する私立高の授業料完全無償化で私学人気が急上昇し、今春入学となる公立高志願者が激減。現行の選抜制度では生徒らの需要に応えられないと判断した。今夏に府学校教育審議会から制度見直しの答申を受け、早ければ8年度入試から変更する。

今月公表された中学3年対象の進路希望調査によると、4年度と比べ私学希望者が約1600人増えたのに対し、公立希望者は約2400人減った。卒業見込みの生徒のうち、公立希望者の割合は現行制度を導入した平成28年度以降初めて6割を切った。府教育庁の担当者は「私学授業料完全無償化の影響は大きい」と語る。

府内公立高の選抜は、一部学科を除き大半が3月に行われる。一方、私学入試はそれよりも早い2月上旬に実施。ある中学校長は「早期に進路を決定し、安心したい生徒や保護者が増えていることも私学人気を後押ししている」とみる。

現行制度導入から年月が経過し、同庁関係者は「多様化する生徒や保護者のニーズに応えきれていない」と指摘する。試験日程や受験科目、特色入試の導入など幅広く検討する必要があるとしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d98f1f92e2bdebb446e36bbf66b4bd635e1d1add

今春に行われている令和6年度入試にて、私立高校への入学を希望(かつ公立高校を受験しない)する「専願」の割合は、過去最高の31.64%に達しました。約1600人増加したと考えられます。

私立高校専願受験率が31.64%へ急上昇、授業料無償化の影響か 大阪府

反対に府立高校の入学希望者がは激減し、6割を切りました。過去最低です。

大阪の公立希望者、衝撃の6割切り 無償化の影響で私学人気か
https://www.sankei.com/article/20240209-PY6MX4FKJ5M7FFAK7DYKTBONXY/

率や人数に若干の上下があるとは言え、こうした変化が起きるのは入試前から明らかでした。それだけ私立高校授業料無償化の影響は甚大です。

公立高校の入試倍率も急激に落ち込んでいます。まだ希望調査の段階ですが、昨年より0.2-0.3倍も落ち込んだ高校が少なくありません。中には少なくない生徒が国公立大学へ進学する、地域の拠点校もあります。

大阪・京都・兵庫の私立高校入試が概ね終了 大阪の私立高校専願率は過去最高31.64%、大阪府立高校希望者は減少

先生や子供の話を聞く限り、早期かつ学校の成績に基づいて合否が判明するのを私立高校のメリットと感じている生徒は少なくない様子です。中学3年生になっても受験勉強せず、中学校の実力テスト勉強だけで進学できてしまうぐらいです。

私立高校と公立高校では設備レベルに雲泥の差があります。大阪府立高校の老朽化は極めて深刻であるにも関わらず、大阪府は抜本的な対策を打とうとしていません。

老朽化が深刻な大阪府立高校、築70年以上で改築予定

情報発信レベルの違いも如実です。数校の学校説明会に参加しましたが、総じて私立高校の方が説明が上手く、中学生や保護者の興味関心を引きつける内容でした。

反対に公立高校(特に文理学科)は教育レベルが非常に高く、驚くほどでした。授業自体を見る機会は恵まれなかったものの、校内の掲示物や宿題プリント等を見れば分かります。

府立高校の入試はシビアです。特に文理学科や普通科上位校は深刻です。

中学1年生から塾に通いながら定期テスト勉強をし、内申点を積み重ね、英検を何度も受験し、中3では模試試験を毎月受け、高倍率の文理学科や普通科上位校を受験しても、1/3~1/4程度の受験生に桜は咲きません。長い時間と費用が必要です。

競争を激化させた事により、一部の高校の超高倍率化、そして受験勉強に力を入れなくても進学できてしまう私立高校への進学を後押ししてしまいました。学区統合・私立高校授業料無償化に代表される2014年以降の政策は、中学生に「二極化」を加速させる政策でした。

府立高校の入学希望者減少は、大阪府自身が招いたものです。受験生や保護者のニーズ変化を主張するのは本末転倒、責任転嫁です。

制度変更は早ければ令和8年度入試、すなわち現在の中学1年生の高校受験から実施されます。

恐らく試験日程は前倒しされるでしょう。他都道府県と比べ、大阪府立高校の試験日程は極めて遅いです。既に合否が発表されている都道府県が多いにも関わらず、大阪府は願書すら出していません。近畿各県と比べても突出して遅いです。

その他には受験科目の変更(一部の高校は5教科→3教科に?)、普通科等への特色入試(推薦入試?)の導入(私立高校入試より先に実施?)なども考えられます。

ただ、小手先の制度を変更しても、中学生の希望が公立高校に戻ってくるのは難しいです。府立高校への予算を大幅に増額するのが不可欠です。

英検優遇を廃止して!!!

保護者目線で変更して欲しいのは「英検制度の廃止(もしくは点数引き下げ)」です。英語C問題で高得点を取るよりも、何度も英検2級を受験して合格する事による読み替え点(8割換算)の方が容易に高得点を得られるのは、余りに理不尽です。

過熱する大阪の英検熱、背景に入試優遇・重い私費負担

英検受験による得点保証制度は、何度でも受験できる世帯ほど有利に働きます。家庭の経済状況によって通塾する機会が異なるのとは違い、「(経済状況が良ければ)何度でも受験できる」のは試験の公平性を根底から揺さぶります。

何よりも英検を合格した事によって英語の受験勉強を止めてしまい、高校入学後に困ってしまう生徒の発生は深刻です。以前に府立大手前高校の校長先生が警鐘を鳴らしていました。

しかしながら、この資格を活用して入学した生徒の中から、「英語資格を取得してからは英語の勉強をしてこなかったので、高校の英語の授業についていけない」「資格を取った後も英語の受験勉強をしっかりしておくべきだった」という声を懇談の中で聞くことが少なくありません。

また保護者からも「資格取得後に英語の学習がおろそかになり、中学まで得意科目だった英語が高校では苦手科目になってしまったようだ」という意見もありました
https://otemae-hs.ed.jp/otemae_wp/wp-content/uploads/2020/10/R2eigoshikakukatsuyou.pdf

英検2級は高校卒業程度の英語力を求めるものです。これを中学生に要求するのは、果たして公立高校入試として適当なのでしょうか。そうは思いません。どういった学力を有する中学生に入学して欲しいかを、入試問題で問うべきです。