やや時期は早いながらも来たるべき高校入試に備え、積極的に高校説明会に参加しています。各校の雰囲気等を実感できるのは大きなメリットです。オンライン等では体感できまえん。

一方で気掛かりと言いますが、各校にとっては「見て欲しくない場所」も発見できます。その一つは「校舎の老朽化」です。

とある大阪府立高校の説明会・学校見学会に参加した際、校舎の著しい老朽化に気づきました。酷い雨漏りが発生したと思われる箇所がありました。

これ以外にも壁塗装の剥落・床材の凹み・養生テープによる補修部・錆だらけのロッカー等、校舎の様々な箇所で老朽化や修繕不足が目立っていました。

帰宅後に校舎の築年数を調べた所、想像を遙かに超える程の古さでした。民間企業の賃貸ビルでは見た事が無い築年数です。オフィスビルならば借り手が見つからず、当然の様に建て替えられている築年数です。

実は多くの大阪府立高校の校舎は築年数が嵩んでいます。棟別耐震性能一覧表【府立学校】に建物毎の建設年度・面積・耐震性能等が掲載されています。

一番上に掲載されているのは北野高校です。平成11年度(1999年度)に建設された建物が大半です。築年数は24年です。

次に掲載されているのは東淀川高校です。大規模な校舎は昭和31年度(1956年度!)・昭和34年度・昭和44年度・昭和46年度・昭和55年度(1980年度)に建設されています。築年数は43年~67年です。

https://www.taishin.pref.osaka.lg.jp/gakkou/ichiran.html

最も古い校舎は寝屋川高校にあります。昭和12年度(1937年度)に建設されました。築86年です。大阪府職員の誰よりも高齢です。大阪府も重い腰を上げ、改築に着手しています。

この資料は非常に興味深いです。近所にある高校や進学を検討している高校の数字は是非確認して下さい。

では、どうして大阪府は老朽化した校舎を建て替えせず、使い続けているのでしょうか。大阪府教委の考え方は府立学校施設長寿命化整備方針に詳しく掲載されています。

これに「従来は築60年で改築(建替)を検討していたが、今後は築70年以上とする」とあります。

長寿命化の推進

学校施設の改築時期については、概ね築後60年で検討していたものを10年以上延伸し、築後70年以上を目標とする。また、維持管理について、これまでの事後保全型から予防保全型に転換することによって学校施設の安全・安心を確保するとともに、長寿命化を図り、維持・改築経費の平準化と事業費削減をめざす。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/19427/00000000/tyoujumyouka.pdf

親目線では「それはないよ」が率直な感想です。現時点において築60年の建物が建てられたのは1963年です。東京オリンピックの前年です。下手をすると、生徒とその祖父母が同じ校舎で学ぶ事となってしまいます。

まだ適正な修繕や維持管理が出来ていたら救いがあります。が、少なくとも先日訪れた学校では全く出来ていませんでした。同レベルの民間賃貸ビルに借り手は付きません。常日頃から「民間感覚」を強調している知事に、「大阪府立高校の維持整備は民間では考えられない程に劣悪だ」と抗議したいぐらいです。

一方でトイレは綺麗に改修され、各教室には電子黒板やWi-Fi等が整備されていました。これらはコロナ禍における感染症対策やGIGAスクール構想にて、多額の予算が学校へ投じられたと聞きました。

大阪府は私立高校授業料無償化を推進しており、令和8年度からは全学年が対象となります。予算は関連予算は計242億円(無償化に229億円、経常費助成に13億円)を予定しています。

所得制限のない高校授業料の無償化に向けて、大阪府は、令和8年度には、すべての学年を対象とする方針で新たに229億円の予算が必要になると推計しています。
内訳は、▽全日制の私立高校などが168億円、▽府が認可した通信制の私立高校が11億円、▽全日制と通信制などをあわせた公立高校などが23億円、▽府内の子どもが通う関西の他府県の全日制の私立高校などが27億円となっています。

このほか、私立高校に対する経常費助成を生徒1人あたり2万円程度、増額するため、新たに13億円が必要になるということです。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230825/2000077308.html

何カ所か見学した私立高校は、どこも新しくて手入れが行き届いた校舎ばかりでした。しかも授業料は無償化されます。今後は中学生が私立高校への進学に絞り、公立高校の受験・進学を回避する動きが強まると想定されます。

授業料無償化等による子育て世帯の負担軽減も大切ですが、多くの大阪府立高校の老朽化対策は待ったなしです。現状は余りに酷いです。