大阪府が近畿他府県も対象にと検討している「高校授業料無償化」につき、滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山の私立中学高等学校連合会・協会が「反対」を申し入れました。
大阪府が実現を目指す高校授業料の完全無償化について、兵庫県や京都府などの私立高校などで作る団体が7日、大阪府の制度案は「不公平を生み出す」として、制度への反対を表明する申し入れを行いました。
大阪府の現行制度では、高校の授業料は、生徒の世帯年収が590万円未満の場合は公費補助により無償。年収590万円以上の世帯については、段階的に世帯の負担額が増える制度になっています。
新しい制度案では、所得制限を撤廃。1人当たり年間63万円までの授業料は、一律で公費負担となります。授業料が63万円を超えた場合の超過分は、生徒側ではなく、学校が負担することになります。
大阪府の私立学校で作る団体は、当初は完全無償化案に反対していましたが、公費負担額を当初の60万円から63万円に引き上げることを府が決め、学校側の負担が大幅に減ることなどが見通せたことなどから、今年8月に合意しました。
大阪府の制度案では、大阪府外の学校であっても、“大阪府の制度に加入すれば”、大阪府に住む生徒の授業料については、年間63万円までは国と大阪府が負担し、無償となります。
一方、大阪府外に住む生徒が、大阪府内の私立高校に通う場合、大阪府の無償化策は適用されず、国の補助分以外の授業料は生徒側の負担となります。
こうしたことから、兵庫や京都の私立高校などでつくる団体は「不公平を生み出す」と反発を強めています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/943f4857f3e255324c921acf320f6d8646bf5591
大阪府の私学団体が当初反対したのと同じ立て付けです。「標準的な授業料(大阪では当初60万円→63万円に拡張)を越える部分を誰が負担するか」が問題視されました。大阪では「学校が負担する」、そして大阪以外の府県は「大阪府民以外の学生や保護者(加えて学校も)が負担する」という理由です。
大阪は標準授業料の引き上げ及び私学助成の拡張と引き替える形で、私学団体は大阪府と合意しました。私学団体及び私立学校は助成拡大及び授業料無償化による生徒募集の促進という、いわば良いとこ取りを果たしました。
しかし、大阪府と大阪府以外の私学団体がこうした交渉を行う余地はありません。反対するのも当然です。
ただ、大阪府の授業料無償化が単純な「授業料助成」であったらならば、受け入れる余地はあったでしょう。例えば府外の私立高校へ通う生徒が支払う授業料の内の一定額(63万円)を府が負担し、それ以外を家庭が負担する制度です。
上限を超える授業料を学校が負担する「キャップ制」を採用した事により、話が非常に複雑な物になってしまいました。
また、全ての私立高校が63万円以上の授業料を設定しているわけではありません。これを下回る金額ならばキャップ制の適用を受けません。一部の学校は独自に大阪府へ無償化対象校として申請を行う可能性が皆無では無い、かもしれません。
授業料無償化拡大が中学生の志望動向に及ぼす変化は未だ見えていません。「私立専願が増える」「専願基準が引き上げられるのでは無いか」といった噂話は耳にしますが、まだ憶測に過ぎないと感じています。
実は私立高校授業料無償化によって最も大きなメリットを受けるのは私立中学校の受験者・進学者です。中学校3年間の授業料は負担しなければなりませんが、高校3年間の授業料は無償化されます。6年分の授業料負担を覚悟していた筈なので、これが半額で済むメリットは大きいです。
加えて私立中学校の受験者・進学者は高所得世帯や富裕層が多いとされます。多くは従来の無償化基準(年収910万円未満)に抵触します。が、所得制限の撤廃により、こうした世帯も授業料が無償化されます。
不安なのは大阪府立高校です。何校か見て回りましたが、設備の老朽化が深刻な学校が多いと感じました。
教育方針・人事・財政・地域への配慮・生徒募集等、そもそも公立高校と私立高校が同じ土俵の上で競争するには前提条件が違いすぎます。勉強嫌いの生徒が事前相談で早々に進路が決定してしまうと、3月に受験を行う公立高校は太刀打ちできません。
例えば「学び直し」を主眼に置くエンパワメントスクールは入試を前倒ししなければ、生徒募集がますます厳しくなると推測しています。
一方で大阪府内の中学生が府外の私立高校へ進学する動きにはブレーキが掛かるでしょう。府外ならば授業料が必要ですが、府内の私立高校ならば無償です。親目線では「府外の私立高校だけは避けて欲しい」となるのは当然です。
我が家も私立併願の候補を何校か考えていましたが、府外の高校は候補から外す方針です(そもそも遠い)。