様々な不適切保育を行っていた長寿認定こども園(三重県桑名市)に対し、三重県や桑名市は特別監査等を実施しました。
三重県桑名市にある認定こども園で、園児に給食を4時間にわたって食べさせるなど、不適切な行為があったとして、市が調査を行っていることが分かりました。
桑名市によりますと、市内にある私立「長寿認定こども園」で、昨年度、給食を食べ切れなかった園児1人に対し、保育士がおよそ4時間にわたって食べるように指導を続けたということです。園児はトイレに行けず失禁してしまったということで、ことし3月、保護者から市に相談があり発覚しました。
桑名市が園への聞き取りなどを進めたところ、園も事実を認めたということです。
桑名市は現在、立ち入り調査を行い、今回の行為が起きた原因や、他に虐待が疑われる行為がなかったかなど聞き取りを進めています。
また、この保育士は現在、自宅待機をしていて、園長は辞職の意向を示しているということです。桑名市は園に臨床心理士を派遣するなどして児童のケアにあたっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6643ff0088edeccaaf5d4af9359d00e0424da97d
これと平行して設置された第三者委員会が桑名市・長寿認定こども園理事長に報告書を提出しました。
桑名市不適切保育の再発防止に関する第三者委員会
https://www.city.kuwana.lg.jp/kikikanri/daisansya.html
個々の不適切保育が許されないのは当然としつつ、それを引き起こしたのはこども園の運営体制、すなわち不適切保育が行われた当時の加藤晶子園長(現在は運営法人たる花園福祉会理事長)や副園長のマネジメントを厳しく批判しています。
本件事案が生じた背景は、園長(及び組織のリーダー層)の日常的な指導や振る舞いが原因となり、その結果、適切ではない保育を誘発する状況が生じていたと受け止め、理解する必要がある。この問題は、当該クラスや保育士個人の資質の問題だけでは起こりえない。不適切な保育が生じにくい職場環境を整備することは、施設長及び法人の管理責任者の責務である。
園長のトップダウンで保育環境が定められ、職員の意見を取り入れようとしなかった実態が見られた。例えば「玩具が少ない」、「遊びのエリアの区切りがなく1か所で多くの子どもが遊ばざるを得ない」、「外遊びが少ない」、「砂遊びができない」、「土、緑、遊具がない」、「2歳児移動用の乳母車がない」といった意見が聞かれた。
本園においては新しい保育園舎を傷つけたり汚したりしないため、子どもたちの遊具や遊びを制限したり、保育士に頻繁な掃除を命じたりしていたという話も聞かれ、保育と施設管理の優先順位を取り違えた対応も見られた。
園長、副園長、主任の役割として、全体の状況を把握し、教育やサポートをする必要があるが、園長は現場にいないことが多く、副園長、主任においても、その機能が十分に果たされたとは言えない状況であった。
さらに、前園長は、本園にいないことも多く、直接保育に関わったり、保護者対応をしたりすることもほとんどなかったほか、現場を統率し、保育士に指導・監督する立場である副園長が産休で不在であったこともあり、職員間の連携が著しく不足していた。
本件事案発生の原因は、前園長の意向によることが大きい。現に、前園長には園舎を傷つけさせたくないという理由で、おもちゃの配置や遊具の設置、園児及び職員の
行動等について制限してきたことが認められる。その結果、園児の行動等に対し、職員が怒鳴ったりすることにも繋がったといえる。他方で、対応困難な園児につき、お遊戯会への参加を遠慮させたり、事実上の退園を迫ったりしたことが前園長の意向で行われたことが認められている。したがって、本件事案が発生したことについては、前園長のマネジメントに大きな原因があったといえる。
過去に園長をここまでこき下ろした報告書を読んだ経験はありません。言葉を選んでいるものの、事実上「こども園の園長として著しく相応しくない。資質及び能力に欠ける。」と強く批判しています。
この様な人物が園長に就任した理由はただ一つ、「創立者一族」だからです。これまでも様々な保育所等で不適切な事案が行われていました。その多くは「同族経営による保育所等」でした。内部牽制が効かず、公私の分別が付いていないケースが多く見受けられます。
加藤園長(当時)が園児の行動を強く制約した一因は、新しい園舎の建築にありました。新園舎は2017年8月に地鎮祭が行われ、2019年2月に竣工しました。加藤園長等、多くの関係者が祭事に参加した写真が残されています。
ウェブサイトでも分かる通り、本当に新しくて綺麗な園舎です。羨ましいぐらいです。多くの入所希望者が集まっていたのも頷けます。
多くの子供達が日常生活を過ごす施設である以上、園舎が少しずつ痛んでいくのは避けられません。徐々に傷が増え、角が丸くなり、くすんでいきます。これを嫌がっていては、保育所等は運営できません。
自宅も同じです。毎日の様に子供が荒らし、部屋や家具は傷んでいきます。その都度注意していますが、半ば諦めています。
報告書は元園長の影響力が未だに残っている状況を強く危惧しています。実は現在も「法人理事長」の職にあります。こども園を運営する法人の最高責任者であり、こども園の人事や運営に強い影響力を発揮できてしまいます。職員や園児に関する様々な情報も知り得ます。
保護者にも強い忌避感情があります。様々な不適切保育を牽引した元園長の姿を園内で見かける機会もあるでしょう。園長は辞めても、それ以上の最高権力者として居座っています。
前園長は、本件事案の責任を取る形で園長を退任したが、現在も運営法人の理事長の立場にある。そして、依然として園を運営する法人の最高責任者の立場であることについて、保護者らの不満も強い。
組織改革という観点からは、園児及び保護者との信頼関係の再構築が必要であり、客観的にも新たなガバメント体制が構築され、前園長の影響が排除される状態にあることが望まれる。
しかしながら、前園長が運営法人の理事長という立場にあることは、客観的に前園長の影響が排除されたとは認められず、園児及び保護者との信頼関係を再構築するための支障になるものと思料され、現実として保護者の理解は得られていない状況にある。
職員も元園長の意向を気にせざるを得ません。異議を唱えたら、どの様な報復措置を受けるか不安で仕方ありません。良識ある職員から退職していくでしょう。
事件後に就任した新園長(氏名等は不明)にも疑問を投げています。
前園長の退任後、本園で長年、主に事務を担当していた職員が園長に就任している。現園長は、保育補助に携わることはあったが、保育士資格や幼稚園教諭の免許は有していない。(中略)
園長として、保育士資格等が必要なわけではなく、現園長は本件事案の背景にある労働環境の改善や保護者との信頼関係の回復に向けて尽力しており、職員及び保護者
から一定の評価を受けていることは事実である。しかしながら、不適切保育の防止という観点からは、保育の専門知識及び経験は重要であり、保育士の相談に応じるとともに園を改革していく立場を考えれば、本来は保育士等の専門資格を有する者が園長に就任することが客観的には望ましい。
現園長は、本園の事務に長年携わってきており、本園の状況については熟知していると考えられるので、労働環境の改善等について、園長を補佐する立場で対応することが適任とも考えられる。
法令上、こども園の園長(施設長)には保育士資格を有していない人間でも就任できます。しかし、子供の保育を行う場であり、多くの保育士等が働いている以上、同様の資格を有している方が望ましいのは当然です。
特に今は多くの不適切保育が行われ、園全体が動揺しています。園長が保育に関する相談を受けても、自身の経験を基にした適切な返答や指示等を行うのは難しいでしょう。
新園長が長年に渡って事務に携わっていた経験を踏まえ、報告書は園長を補佐する立場(副園長・園長補佐等)が望ましいと指摘しています。
では誰が新園長として適任なのでしょうか。報告書は桑名市から派遣されている、所長経験もある公立保育士の働きを賞賛しています。
派遣された公立保育士は所長経験者がほとんどで、実際に保育の現場に入り、子どもの保育をするというより、現場の保育士に子どもへの関わりについ
ての助言や方法の提案などを主な業務としていた。派遣された公立保育士たちは、現場の保育士に対して時に提案を文書化して出すなどして、理解を深める工夫をしていた。
本園の保育士にとって、これまで外部の保育士等との交流は皆無だったところに、公立保育士の派遣があったことは、従来の保育を見直し、適切な保育の在り方について実践を通して学ぶよい機会となり、派遣の肯定的評価として挙げられる。
本園における不適切保育の再発防止のためには、種々の問題に対し、リーダーシップをとって取り組むことが必要であり、そのためには保育の専門知識及び経験を有する者が就任することが望ましい。
このため、運営法人においては、保育士又は幼稚園教諭等の専門資格を有し、一定の保育経験を有する人材を園長に配置することを検討されたい。
暗に「派遣されている公立保育士、もしくはそのOBが園長に相応しい」と示唆しています。事実、不祥事等が起きた保育所等では自治体や公立保育所出身者を新園長・理事長に据えるケースが少なくありません。
加藤晶子元園長(現理事長)の影響力を削ぎ、桑名市によるガバナンスを効かせる観点からは当然の判断です。市にこども園の人事権はありませんが、こうした方向性に与するようにと迫っています。