保育施設(保育所・一部のこども園・地域型保育事業等)への検査権限は都道府県・政令市・中核市が有しています。一方、指導した施設や内容を公表している自治体は1割に満たないそうです。
保育施設への改善指導、公表自治体1割に満たず
保育施設への検査権限をもつ121自治体のうち、改善を指導した施設名と指導内容を公表している自治体は1割に満たないことが、読売新聞の調査で分かった。改善指導の内容が公表されなかった施設で死亡事故が起きたケースもあり、保護者への情報開示が十分でない実態が明らかになった。
調査は昨年11~12月、都道府県と政令市、中核市の計121自治体に実施。全自治体が回答した。
改善指導した施設名と指導内容を公表していると答えたのは、東京都、横浜市など11自治体。その他の自治体は一切非公表または、「施設名を出さず指導内容のみ公表」などとしていた。
公表しない理由について「人手不足で手が回らない」「保護者の不安をあおる」「施設の運営を妨げかねない」などの意見が目立った。
愛知県岡崎市の担当者は「保育士研修などの業務の合間に検査に回っている。人手も時間も足らず、とても結果の公表まで手が回らない」と話した。
国に統一的な公表基準を求める声もあった。内閣府などが2016年に定めた保育施設などの事故防止ガイドラインは、検査結果の公表について「公表している自治体の例を参考に、実情に応じて検討する」という記述にとどめる。担当者は「公表は事故防止につながると考えているが、あくまで各自治体が自ら判断すること」と話す。これに対し青森県の担当者は「公表は保護者の役に立つと思うが、施設からの反発も予想される。全国で同じ公表の基準があれば、施設側にも説明しやすい」と語る。
児童福祉法などは、自治体が原則年1回以上、保育施設に立ち入り検査を行うよう定めている。検査では資格を持った職員の人数が基準を満たしているか、避難路が確保されているか、などを調べる。しかし、今回調査の対象とした121自治体が17年度中に検査したのは、約3万7000施設のうち68%。「全施設の検査を行っておらず、一部のみの公表は不公平」とする自治体もあった。
内閣府の集計によると、保育施設では13~17年に計71件の死亡事故が発生している。(以下省略)
上記記事によると、施設名と指導内容を公表しているのは東京都・神奈川県・横浜市・川崎市・新潟市・広島市・福岡市・高崎市・八王子市・姫路市・松山市のみだそうです。
例えば横浜市は監査実施日・施設名・指摘事項・改善状況等をウェブサイトにて公表しています。
児童福祉施設に係る指導監査結果(平成28年度)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/kannsa/kanendokekka.html
保護者が保育施設を選ぶにあたり、施設の安全性は極めて重要な要素です。これを判断するには、行政から指導された内容を確認するのが最も適切です。
自治体から重要な問題を指導され、かつ改善されていないのであれば、多くの保護者は入所を躊躇うでしょう。当然です。
しかしながら、こうした情報を公表している自治体はごく一部に限られています。情報公開に積極的な大阪市すら、公表しているのは業務改善命令等の重大な指導を行った一部の事例に限られています(但し認可外保育施設への指導内容は公開している)。
公表しない理由としては、「人手不足で手が回らない」「保護者の不安をあおる」「施設の運営を妨げかねない」という意見が目立ったそうです。
「人手不足」は同情します。急増する保育施設を監査するだけで精一杯なのでしょう。
一方、「保護者の不安をあおる」「施設の運営を妨げかねない」という意見は自分勝手です。
正確な情報を伝える事こそが保護者の不安を抑制し、冷静な判断を促します。また、問題を指摘された施設の運営に支障が生じるのは当然です。問題があるのに滞りなく運営を継続している事が問題です。
施設からの反発を恐れる自治体は、誰の為の保育施設かと考え直して欲しいです。八尾市の様に保育施設ばかりに目を向け、そして保護者に背を向ける自治体は、いつか子育て世帯からそっぽを向かれるでしょう。