大阪市の横山市長は2024年秋から第2子保育料を無償化する方針を打ち出しました。

大阪市の保育料無償化、来年秋にも所得制限撤廃 対象も第2子以降に

大阪市の横山英幸市長は8日、0~2歳の保育料無償化について、2024年秋にも所得制限を撤廃した上で、対象を広げる方針を示した。市議会の一般質問で明らかにした。今年度の補正予算に関連経費を盛り込むという。

市によると0~2歳の保育料無償化は現在、所得制限があり 、無償の対象も第3子以降に限られる。横山氏は24年秋に所得制限を撤廃し、無償の対象を第2子以降に広げると表明した。今春の市長選で公約に掲げていた第1子への拡充も今後、工程表を作って段階的に取り組むとしている。

横山氏は、対象となる子どもが増えることを踏まえ「受け皿や保育人材の確保、多額の財源確保など乗り越えていかなければならない様々な課題への対応が必要だ」と述べた。

また横山氏は、小学生の一部と中学生への月1万円の塾代助成についても、24年秋に所得制限を撤廃する方針を示した。今春、対象を小学5、6年生にも広げたが、扶養する親族の数に応じて所得制限が設けられていた。

https://digital.asahi.com/articles/ASR686D8GR68OXIE03V.html

保育所等を利用している家庭、もしくはこれから利用しようと検討している家庭にとっては、極めて大きな話です。

まずは現行の保育料制度をおさらいします。大阪市及び殆どの自治体では、下記の様な保育料制度を用いています。

年齢同時在籍している人数保育料副食費
3~5歳児誰でも無償別途徴収
0~2歳児第1子0円~数万円(応能負担) x 100%保育料に含む
第2子0円~数万円(応能負担) x 50% → 無償に?第3子
第3子以降無償

令和5年度 保育施設等の保育料のお知らせより作成)

大阪市は「市によると0~2歳の保育料無償化は現在、所得制限がある」としています。ただ、無償化が適用されているのは、生活保護世帯・住民税均等割非課税世帯等に限られています。いわゆる生活困窮世帯のみです。

「所得制限」というと中高所得世帯等が例外的に制限されているイメージです。が、0~2歳児保育料は殆どの世帯が保育料を負担しています。こうした事例で「所得制限」という言葉を用いるのは語弊があります。

横山市長が検討しているのは、0歳~2歳児・第2子の保育料(現在は応能負担で定められた保育料の50%を負担)を無償化するものです。

【ニュース】「まずは第2子保育料無償化」 大阪市の横山市長

2人以上の子供を育て、かつ保育所を利用している世帯へのインパクトは大きいです。たとえばフルタイムで共働きしている世帯は、第2子の子供の保育料として月額2万円~3.5万円程度(1人目だと4万円~7万円程度)を納入しているケースが多いでしょう。これが無償化されます。

懸念されるのは待機児童問題の深刻化です。大阪市内は既に未就学児が減少に転じ、一時期より保育所等には入りやすくなっています。

ただ、地域差は大きいです。特にファミリー層に好まれる地域では入所保留児が未だ多く、特に6年保育を行う保育所等には未だ入所しにくいのが実情です。

第1子から保育所等を利用している家庭は第2子でも保育所等を利用するので、この制度によって保育所等への入所希望者が爆発的に増加するとは考えにくいです。待機児童問題への悪影響は殆ど無視できるでしょう。

一方で無償化による経済的メリットは中高所得世帯に偏ります。子育て世帯間の格差を助長する効果が生じます。また、少子化対策(=子供が増える)となるかは未知数です。

最大限に見積もっても、第2子の保育料が現在より減額されるのは126万円(3.5万円x36か月)です。もう1人子供を産む動機付けとなるには少なすぎる額です。

「第2子」の定義は変わらない?

横山市長が明言しているわけではありませんが、「第2子」の定義を拡張する旨の発言は見受けられません。

実は保育料の計算に於ける「第2子」とは、保育所等に在籍している子供のみを数えます(異なる保育所等でも可)。例えば5歳児・2歳児のきょうだいが在籍していると、それぞれ第1子・第2子となります。

しかし小学3年生・2歳児というきょうだいだと、計算外・第1子となってしまいます。世帯にとって2人目の子どもであっても、保育料は満額が掛かってしまいます。

年齢の近いきょうだいは保育料の計算において優遇される反面、年齢が離れたきょうだいは何ら考慮されないのは理不尽な制度です。周囲にも年が離れたきょうだいを育てている家庭は少なくありません。中にはきょうだいが6歳離れ、常に満額の保育料を支払っている家庭もあります。

理由付けの一つとして「保育所に同時に在籍していると2人分の保育料を支払う負担は重いから」がありますが、3歳~5歳児保育料が無償化された現在は説得力がありません。むしろ学校関係・習い事・食費が掛かる小学生以降の方が、家計の負担は重いです。

保育所等を利用している子育て世帯として、第2子保育料の無償化は歓迎します。但し、こうした制度を導入するならば、「第2子」の定義自体を合理的に見直して欲しいです。