2012年4月から2922年の間に、主に学校の施設や設備を原因として小中学生が死亡したと考えられる事故は少なくとも9件ありました。多くを窓からの転落が占めています。
校舎の窓からの転落や、倒れてきたゴールポストの下敷きになるなど、学校の施設や設備による子どもの死亡事故などを防ぐため、消費者庁の安全調査委員会、いわゆる「消費者事故調」は、近く取りまとめる報告書の内容を明らかにし、文部科学省に対して、全国の学校で危険性の高い場所の緊急点検を行うことなどを求めるとしています。
消費者事故調は、学校の施設や設備などが原因で、子どもが死亡したり大けがをしたりする事故が起きているとして、3年前から再発防止のための調査を進め、近く取りまとめる報告書の内容を3月1日、明らかにしました。
消費者事故調によりますと、去年3月までの10年間に小中学生合わせて9人が死亡していて、掃除中に窓際にあった本箱の上でバランスを崩し、校舎の2階から転落したケースなど、「窓からの転落」が半数を占めていたということです。
また、去年3月までの5年間に起きた、死亡にはいたらなかった事故合わせて103件を分析したところ、設備別では、ガラスで腕を切るなど「窓やドアなどのガラス」によるものが最も多く、全体の4分の1ほどに上ったということです。(以下省略)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230301/k10013995041000.html
報告書が公表されました。
学校の施設又は設備による事故等
https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_019/
内容は概要版に分かりやすくまとめられています。
9件の内、5件は窓からの転落、他は吹き抜けからの転落、椅子からの転倒、ゴールポストの転倒、防球ネット支柱の倒壊でした。大半が転落、その他は野外大型設備の転倒に巻き込まれていました。保育所等での死亡事例にて窓からの転落は聞きません。建物の高さの違いに加え、保育所等では棚の上に園児が上るのが物理的に難しいのでしょう(高くて上れない)。
https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_019/assets/csic_cms101_230301_01.pdf
報告書本文には具体的な内容が記されています。事故が起きたシチュエーションが容易に想起できるものばかりです。
【事例1】(小学生)
掃除終了後の休憩時間中、教諭の資料が、教室の南側柱に設置されていた扇風機にからんでいるのを発見した他の児童が、棚の上に乗って直そうとしていた。本児童が手伝うと言い、棚の上に乗って資料を移動させた時バランスを崩し、2階の窓から1階のコンクリート部分に転落した。その際、頭部を強打した。(担任は、廊下で他の児童の指導をしていた。)すぐに落下場所に駆けつけたが、反応がなかった。救急車で搬送、さらにドクターヘリで、病院に搬送した。治療を受けたが翌日死亡した。
【事例2】(小学生)
5校時終了後に行った全校集会以降、保護者より依頼のあった待機児童十数名については、3階図書館で預かりを実施した。最初の内は本を読んだり、宿題をしていたり、友だちと読み聞かせをしていたが、走り回ったりかくれんぼと思われる遊びをしている児童もでてきて、落ち着きのない状況となっていた。午後4時前に職員が不在となって以降、本児童は北側窓の下部にあった本棚に上がり、さらに開いていた窓の窓枠に、室外を背に座るなどしていた直後に転落した。事故直後は、呼吸停止、心停止状態であったが、心臓マッサージと人工呼吸を行い、救急車を要請、専門の医師と看護師がヘリコプターで到着し、救急救命処置を行ったが、同日死亡した。
【事例3】(小学生)
親子奉仕作業時、2階図書室で本を読んでいた本児童に、母親が掃除するよう声を掛けると窓際の本箱に乗った。その際、同級生に手伝ってくれるようにと依頼し、同級生が本箱に手をかけたとき本児童は後ろによけ、その際バランスを崩して足を滑らせ、約5メートル下の地面に転落し、頭部、胸部等を受傷した。直ちに救急車を要請、意識不明の状態だったので、頭と身体を固定した。しばらくして意識混濁の状態になり、救急車で病院に搬送、治療を続けたが、約1ヵ月後に死亡した。
【事例4】(小学生)
本児童が校舎南館2階にある教室前の廊下の窓から転落し、中庭通路にうつ伏せになって倒れていた。児童らからの聞き取りによると、本児童は、1.8mの高さにある窓の鍵を開けるため、2階廊下の窓際に置いてあった金属製の用具入れ(高さ 90 ㎝)に乗って窓を開けた。右足を窓と手すりの間に入れており、降りるためにふり返った際、バランスを崩して後ろ向きに転落し、1階中庭通路(コンクリート)に転落したものと思われる(傷病の程度 死亡)。
【事例5】(中学生)
昼食時休憩時間中、3階の教室でカーテンがかかった窓辺に座って友人と話していた際、窓が開いていることに気付かず寄りかかろうとして、そのまま中庭に転落した。救急車で病院に搬送され手術を受けたが、数か月後に死亡した。
【事例6】(中学生)
休憩時間中、4階渡り廊下の吹き抜け部分で周囲を囲む柵の上に乗り、120㎝のスペースを飛び越えようとした際、誤って1階まで転落した。教員が心肺蘇生(AEDを含む)を行い、救急車で病院に搬送され治療を受けたが、同日死亡した。
窓際に置かれた棚などの上に上がり、転落してしまったケースが数多く見受けられます。子供に注意を促すのは難しいです。窓際に棚を置かない、窓を開けられない様にする等、物理的な対策が不可欠でしょう。
【事例7】(小学生)
本児童は荷物棚の上に置いてある水槽の中のメダカの観察をしていた。廊下にある手洗い場で「水槽の水替えをしよう」ということになり、児童椅子の上に立っていた本児童が椅子から降りようとした際、バランスを崩して椅子から転倒し、教室の床で後頭部を打撲した。外傷・出血がなく、意識もはっきりしていたので、保健室でこぶを冷やしていた。当日の夜、自宅で嘔吐がみられ、病院を受診。4日目に自宅で安静中に急変し、病院に運ばれたが、死亡した。
水槽等はやや高い場所に置かれる事もあり、椅子から見下ろしたかったのでしょう。椅子の上に上るのにも注意が必要です。
【事例8】(小学生)
体育の授業中、サッカーのゲームをしていた。ゴールキーパーだった本児童は、自陣がゴールを決めて得点を入れたことに喜んでサッカーゴール(ハンド
ボール用ゴール)のネットにぶら下がった。その際、バランスを崩して地面に倒れ込んだ。直後にゴールポストが転倒し、倒れてうずくまっていた本児童の肩・背中を圧迫した。救急車を要請し、ドクターヘリにて移送され治療を受けたが同日死亡した。
【事例9】(小学生)
小学校の校庭に設置されていた防球ネットで児童が遊んでいたところ、2本の木製支柱のうち1本が根本から折れ、児童2名に直撃した。病院に搬送されたが、1名が死亡、1名が重傷。
ゴールポストや防球ネットで遊ぶ子供は本当に多いですね。他にもバスケットゴールにぶら下がる子もいます。普段から設備点検等を行っている様子ですが、すぐに買い換えるのは容易ではありません。
先日、お世話になっている学校で授業参観がありました。記憶の範囲では、校舎内にこうした危険な箇所は見受けられませんでした。ただ廊下に物が多く、雑然としているのが気になりました。
学校内の安全点検等は教員や用務作業員が行っていると聞きます。ただ、用務作業員の人数が限られる(複数校を掛け持ちしている)のに加え、予算が足りないので即座に対応できない事もあるそうです。先生が「学校は耐震補強対策を重点的に行った反面、それ以外の部分にお金が回っていない」と嘆いていました。
繰り返しになりますが「窓際に置かれた棚の上には上らない」のが鉄則です。子供に注意させると共に、学校には設置場所の変更を求めたいですね。