亡くなった新村桜利斗ちゃん
https://digital.asahi.com/articles/ASP9Q73RHP9QPTIL029.html

「やっぱり」という感想です。

大阪府摂津市のマンションにて新村桜利斗ちゃん(3)が内縁の父に暴行を加えられて死亡した事件につき、母親の行歩寿希(新村寿希)容疑者が逮捕されました。

https://www.youtube.com/watch?v=Pm-sYAd91hk

大阪府摂津市の集合住宅で8月、住人の新村桜利斗ちゃん(3)が熱湯をかけられ死亡した事件に絡み、桜利斗ちゃんの頭部をクッションで殴ったとして、大阪府警は27日、暴行容疑で、母親の無職行歩寿希容疑者(23)=同府羽曳野市=を逮捕し、傷害と暴行容疑で交際相手の松原拓海容疑者(24)=同、殺人罪で起訴=を再逮捕した。

2人の逮捕容疑は6月20日午後、共謀し、同居していた摂津市の集合住宅で桜利斗ちゃんの頭部をクッションで殴打して転倒させ、暴行した疑い。松原容疑者は5月5日ごろ、集合住宅で桜利斗ちゃんの顔を殴り、けがをさせた疑いも持たれている。

https://nordot.app/825919707252998144

母親は面白がって暴行を加えていた様子が窺えます。内縁の夫が暴行を加える様子を動画で撮影していました。

 また松原容疑者と母親は共謀して6月20日、母親が桜利斗ちゃんの注意を引く間に、松原容疑者が桜利斗ちゃんの顔面をクッションでたたき、ソファから転落させるなどした暴行の疑いがもたれている。(中略)

府警によると、6月の事件については、松原容疑者のスマートフォンに当時の様子が映った映像があったという。母親が撮影したとみられる。松原容疑者は調べに対し、「クッションでたたいたのは遊びだった」と供述したという。

https://digital.asahi.com/articles/ASPBW3R47PBTPTIL028.html

子どもを守るどころか暴行に荷担していました。

クッションで軽く「トントン」とするぐらいなら遊びかもしれませんが、顔面を叩いてソファから転落させるのは一線を越えています。転落した弾みで大ケガを負う危険がある行為です。

実は事件後に母親の声や氏名が全く報道されていませんでした。全くの被害者ならば「悲しみの声」が報じられる筈です。しかしながら皆無でした。

私自身は「母親が逮捕される日も近い、捜査が進んでいる」と感じていました。案の定という結果でした。

桜利斗ちゃんへの一連の暴行につき、一つ一つにどれだけ母親の関与があったのかを慎重に捜査していたのでしょう。

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(11/18追記)
母親に罰金10万円の略式命令が言い渡されました。

 8月に大阪府摂津市の集合住宅で住人の新村桜利斗ちゃん(3)が熱湯をかけられ死亡した事件に絡み、大阪簡裁は18日までに、桜利斗ちゃんの頭をクッションで殴ったとして暴行罪で略式起訴された母親の行歩寿希さん(23)に、罰金10万円の略式命令を出した。17日付。

また、桜利斗ちゃんに対する殺人と暴行の罪で起訴された交際相手の松原拓海被告(24)について、大阪地検は18日、傷害容疑で不起訴とした17日の処分内容について「嫌疑不十分」から「起訴猶予」に訂正した。「捜査の結果、諸状況を考慮した」としている。

https://jp.reuters.com/article/idJP2021111801000329

死に至る暴行の一つとしてでは無く、「クッションで殴っただけの暴行」と評価したのでしょうか。桜利斗ちゃんの死に関し、母親は何ら責任を問われていません。腑に落ちません。

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(6/22追記)

交際相手は暴行内容や殺意を否認しました。

 大阪府摂津市のマンションで2021年、交際相手の長男(当時3)に高温の湯を浴びせ続けて殺害したとして、殺人などの罪に問われた同府羽曳野市の無職松原拓海被告(25)の裁判員裁判の初公判が22日、大阪地裁で始まった。松原被告は「熱湯を浴びせ続けた事実はありません。殺意もありません」などと述べ、起訴内容を一部否認した。

https://digital.asahi.com/articles/ASR6P6JQMR6NPTIL02C.html

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(6/28追記)
治療に当たった医師は「重度のやけど」「満遍なく全身に熱湯を浴びたと思う」などと証言しました。

 27日は証人尋問が実施され、やけどなどに詳しく桜利斗ちゃんの蘇生行為にも携わった大阪大学高度救急救命センターの医師が出廷し、運ばれた当時の状況ややけどの程度について証言しました。

救急搬送された際、桜利斗ちゃんはすでに「全身の90%以上が、植皮(皮膚移植)が必要となるような重度のやけどだった」と話しました。

またやけどの状態について、「熱湯を浴びると人は一般的には退避行動をとるため、ここまでのやけどを負った症例は経験上ほとんど無い」「まんべんなく全身に熱湯を浴びなければ、被害者のような全身のやけどにはならないと思う」と指摘しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/65e8e75552cba86e45a0344cea29c7070d750025

逃げられない状態にした上で熱湯を浴びせ続けたと示唆しています。極めて悪質です。傷害では無く殺人です。

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(7/4追記)
交際相手に懲役18年が求刑されました。

大阪府摂津市のマンションの浴室で2021年、交際相手の女性の長男、新村桜利斗(おりと)ちゃん(当時3)に高温の湯を浴びせ続けて殺害したなどとして、殺人などの罪に問われた松原拓海被告(25)=同府羽曳野市=の裁判員裁判は4日、大阪地裁で結審した。検察側は「極めて悪質で、危険極まりない行為だ」として懲役18年を求刑し、弁護側は傷害致死罪で懲役6年が妥当と主張した。判決は14日の予定。

https://digital.asahi.com/articles/ASR736VQ6R73PTIL01V.html

同種事案と比べて求刑される年数が若干長いと感じています。見落としていましたが、本件は「殺人罪」で起訴されています。

検察側は論告で、やけどが全身の広範囲に及んでいることから「被告が意図的に湯を浴びせた以外は考えられない」と指摘。すぐに救急要請せず、交際相手に連絡していたなどとし、「死亡する危険性を認識しながら放置しており、殺意があった」と主張した。

殆どの児童虐待事件が傷害致死で起訴される中、殺人罪での起訴は決して多くありません。

本件の特殊性は高温の熱湯を掛け続けた点にあるのでしょう。暴行のみであれば「しつけのつもりだった。死ぬとは思わなかった。」という主張が成り立つかもしれません。

しかし、本件は確実に重い火傷を負う熱湯を掛け続けて、しかも放置していました。死亡する危険性は十分に認識していた筈です。

判決は7月14日の予定です。

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(7/14追記)
交際相手の松原拓海被告に対し、懲役10年が言い渡されました。殺意を認めず、傷害致死罪を認定しました。

大阪地裁は14日、松原被告に懲役10年の実刑判決を言い渡しました。

坂口裕俊裁判長は暴行の罪については起訴内容の通りに認定しました。一方で、争点となっていた殺人の罪については「殺意が認められない」として、傷害致死罪と認定しました。

判決の中ではまず、「被害者が何らかの理由で浴室で意識を失ったとしても、60度や75度の熱湯に触れれば、起きるはずで、少なくとも5分以上はお湯を浴びていたことからすれば、松原被告が意図的にお湯をかけたということは認められる」と桜利斗ちゃんに松原被告が意図的に熱湯をかけた事実については認めました。

しかし、「被告人が60度または75度のお湯をかけて、被害者が死ぬと考えていたかについては疑問が残り、殺意があったとまで認められない」として、殺人罪ではなく傷害致死罪にあたると判断したということです。

そのうえで、坂口裁判長は「被告の行為に殺意がなかったとはいえ、残酷というほかなく、傷害致死罪の同種の事件の中でも重いものだ。被告人は裁判の中で信用できない供述を繰り返しており、反省の態度もみられない。前科がないとしても、主文の通りの実刑判決はやむを得ない」と指摘しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b639d3d49b51c283b4d278e95f0331334f61ff29?page=2

60度から75度のお湯は熱湯です。数秒たりとも触っていられません。無抵抗な子供に熱湯を長時間掛けたらどうなるか、子供でも分かる話です。少なくとも死んでしまうかもしれない、死んでしまっても仕方がないという認識はあった筈です。

また、傷害致死罪の中でも重いものという指摘も疑問です。千葉県野田市で実子を虐待死させた事件では、傷害致死罪等として懲役16年を言い渡しました。

【野田市10歳女児虐待死・3/4追記】栗原勇一郎被告に一審・二審で懲役16年の実刑判決

他にどういった事件が併合されているかは分かりません。が、同じ虐待死です。同種事件の中でも重いものだという裁判長の指摘は肯首し難いです。

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(7/31追記)

2021年に大阪府摂津市で、交際相手の3歳の息子にシャワーで熱湯を浴びせ続け死亡させた男の裁判。7月14日に大阪地裁は、殺人罪ではなく傷害致死罪を適用し、懲役10年の判決を言い渡しましたが、期限の7月28日までに検察側は控訴しませんでした。(中略)

そして大阪高裁へ控訴する期限は7月28日でしたが、検察側は「控訴しても裁判所の判断を覆すのは困難と判断した」として控訴を断念したということです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b438fb0422c74a482f32c92f8b104eab51234bb0

乳幼児の虐待死事件で殺意が認められるケースは極めて稀です。すぐに思い浮かんだのは、2010年に大阪市西区堀江で発生した幼児2人のネグレクト死です。

大阪2児餓死事件
大阪府大阪市西区のマンションで2児(3歳女児と1歳9ヶ月男児)が母親の育児放棄によって餓死した事件。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA2%E5%85%90%E9%A4%93%E6%AD%BB%E4%BA%8B%E4%BB%B6

虐待死で殺意が認められるハードルは相当に高いのでしょう。事実認定や同種事案と照らし、控訴しても結論は変わらないと判断しました。

もしも当初から傷害致死罪で起訴し、同じ懲役18年を求刑していたら、言い渡される量刑は果たして10年だったでしょうか。

(さらに追記)
被告人が控訴しました。

 大阪府摂津市で2021年、交際相手の女性の長男(当時3)を殺害したとして、殺人罪に問われた松原拓海被告(25)=同府羽曳野市=について、傷害致死罪を適用して懲役10年(求刑懲役18年)とした一審・大阪地裁の裁判員裁判の判決に対し、松原被告が不服として大阪高裁に控訴した。

https://digital.asahi.com/articles/ASR7V5SFFR7TPTIL008.html

検察が控訴していないので、高裁では懲役10年を超える判決は言い渡されません。