亡くなった新村桜利斗ちゃん
https://digital.asahi.com/articles/ASP9Q73RHP9QPTIL029.html

「またか」という溜息しか出ません。

大阪府摂津市のマンションにて、内縁の夫が妻の子供(3歳児)に暴行を加えて殺害しました。熱湯を浴びせた疑いが持たれています。

大阪府摂津市内のマンションで8月、同居していた交際相手の長男に高温の湯を浴びせて殺害したとして、大阪府警捜査1課と摂津署が22日、同居していた無職の男を殺人容疑で逮捕した事件で、男が調べに対し、容疑を否認していることが分かった。今年5月ごろに母親が、男から長男が暴行を受けていると摂津市に相談をしていたことも判明。結果的に府警と情報共有されず、事件を未然に防げなかった。

府警によると、男は同府羽曳野市南古市の無職、松原拓海(たくみ)容疑者(23)。亡くなったのは、松原容疑者が交際していた20代女性の長男で、保育園児の新村桜利斗(にいむら・おりと)ちゃん=当時(3)。松原容疑者は昨年10月ごろ、女性との交際を始め、今年5月ごろから現場マンションで3人で暮らしていた。

逮捕容疑は今年8月31日午後、摂津市鳥飼本町のマンション一室で、桜利斗ちゃんに熱湯を浴びせるなどし殺害したとしている。松原容疑者は「熱湯を故意には浴びせていない」と容疑を否認しているという。

事件は31日午後4時50分ごろ、外出中の母親から電話で促された松原容疑者が「浴室内で男児が呼吸をしていない」と自ら119番して発覚。桜利斗ちゃんは心肺停止の状態でリビングに倒れており、搬送先の病院で死亡が確認された。

松原容疑者は逮捕前の府警の事情聴取に「男児の体を洗うために風呂場に連れていった。シャワーの温度を徐々に上げる遊びをしていたが、子供に当たるようにはしていない」などと説明していた。府警は、松原容疑者が桜利斗ちゃんを押さえつけ、熱湯を浴びせたとみて調べている。

府警によると、今年5月には、女性が「(松原容疑者から)男児がほっぺをたたかれた」と相談し、対応を求めていたという。摂津市などを管轄する大阪府吹田子ども家庭センター(児童相談所)の担当者は「個別の事案については個人情報の観点から回答はできない」としている。

マンション住人の40代女性は事件当日について「子供の『ギャー』と叫ぶような声が2回聞こえて、何事かと思った」と振り返る。大勢の救急隊員らが駆け付け、救急車で人工呼吸や心臓マッサージを施していたという。近所の男性(60)は「男児が救命処置を受けている間に、母親らしき女性が慌てた様子で帰ってきて、その場にいた男に『あんた何したん』と怒っていた。おかしいなとは思っていたが、まさか虐待だったとは」と驚いた様子だった。

一方、松原容疑者の両親は産経新聞の取材に「ここ数年は連絡をとっておらず、何をしているのかわからない。虐待については心当たりがない」と話した。

https://www.sankei.com/article/20210922-QSRAV4EXCJLK7HR2X62LG2HCSE/

事件現場はエリータ鳥飼(大阪府摂津市鳥飼本町5丁目16−37)でした。大阪高槻線(府道16号)に面し、マンション1階にはお弁当屋が入居しています。

主な間取りは2DK(約40平方メートル)です。

https://www.homes.co.jp/archive/b-10446495/u-10728066/

最寄駅は約1km先に大阪モノレール南摂津駅があります。大阪市中心部や摂津市内へ移動するには適していない路線です。日常的な移動は自動車や自転車が主でしょう。

記事にある通り、男児の母親は5月に摂津市役所へ相談していました。また、別の報道では母親の知人や保育所からも情報提供がありました。

摂津市によりますとことし5月に母親が市役所に面談に来た際、「交際相手が子どもをたたいた」と担当者に話していたということです。この6日後には市の担当者が自宅を訪れ、松原容疑者とみられる母親の交際相手に対し「たたくことはだめだ」と伝えると、相手はうなずいて「わかった」と答えたということです。また、ほかにも桜利斗くんが通う保育所や母親の知人から虐待を疑わせる情報提供があったということで、この家庭について摂津市は、大阪府の児童相談所と情報を共有していたということです。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210923/2000051648.html

摂津市によりますと、去年1月と今年4月、桜利斗ちゃんが通う保育所から虐待を疑う報告がありました。6月にも母親の知人から通報があり、児童相談所と対応を協議しましたが、警察には情報を共有していませんでした。

母親の知人「6月2日に摂津市役所のDVや虐待の相談に乗ってくれるところに行ったが、結局、事件起こっているので、どうなんかなって」

https://news.yahoo.co.jp/articles/5eed2f56735148fa1e5a82ac16268b4c5a0bbf64

 桜利斗ちゃんの母親は夫と離婚後の2018年10月、桜利斗ちゃんとともに大阪府内の別の自治体から摂津市内に転居。20年秋ごろから松原容疑者と交際し、同居を始めたのは事件の約3カ月前だったとされる。

知人らはマンションに遊びに行った際、松原容疑者が桜利斗ちゃんを怒鳴ったり、物を投げつけたりしている姿を目撃。顔に不自然な傷を確認したこともあった。21年6月には「虐待の可能性がある」と考え、摂津市役所の家庭児童相談課に桜利斗ちゃんの一時保護を求めていた。

市によると、母親と桜利斗ちゃんは以前から「行政による継続的な見守りが必要な母子」とされていた経緯があり、支援担当者が毎月1~2回、母親と面会を重ねていた。

母親も5月初旬、「交際相手が子どもに手を出した」と相談していたが、松原容疑者が市側に「もう手を出さない」と約束していたという。市の担当者は「緊急的な危険があるとは考えていなかった。対応に問題はなかった」と話した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0c9bb7eb8ca46ba22fe27cf70c5de84e1504e322

2人は出会い系アプリで知り合ったそうです。

母親本人・母親の知人・保育所から何度も相談等がありました。しかし、摂津市役所や児童相談所等が一時保護等に動いた形跡はありません。

5月~6月に摂津市役所の担当者が訪れ、松原容疑者とみられる人物に注意しただけです。「みられる」とされており、市役所職員が男の氏名や虐待行為の有無等を確認していなかった可能性があります。

少し引っかかったのは、保育所から報告があったのが「昨年1月と今年4月」とされている点です。松原容疑者が母親と交際を始めたのは昨年10月とされています。交際以前から虐待行為があったのか、それとも別の誰かが以前に虐待していたかは不明です。

桜利斗ちゃんの命を繋いできたのは保育所でした。内々に市役所から見守り(要保護)の必要性を指示されていたのでしょう。毎日無事に登園しているかと気に掛けていました。

しかし、それが暗転してしまう事態が起きました。新型コロナウイルスです。桜利斗ちゃんが無くなる6日前(8月25日?)から保育園は臨時休業(報道は「学級休業」)を行いました。

この日以降、桜利斗ちゃんは日中も自宅で過ごしていたのでしょう。母親の職業は不明ですが、日中の保育が難しいから保育を利用している筈です。

となると、日中の育児を同居している内縁の夫に委ねるのは自然です。

しかし、育児経験が殆どない23歳男性が1人で3歳児の育児を行うのは難しいです。特に2歳児は「イヤイヤ期」と呼ばれる時期です。何をしても「イヤ」です。親の話が全く通りません。私自身も異常なストレスを抱えてしまい、保育士さんに「どうにもならない」と泣きついた事がありました。

桜利斗ちゃんが亡くなったのは8月31日(火)でした。土日は内縁の妻(子供の母親)に任せて束の間の開放感を味わったでしょうが、30日(月)からは再び1人育児となりました。

以前から行っていた虐待行為がエスカレートしたのは間違いありません。遂には高温の熱湯を浴びせ続け、死に追いやりました。

死に至る切っ掛けとなったのは保育園の臨時休業でした。この際、保育園の園長や担任は「虐待の恐れがある園児の臨時休業中の過ごし方」に思いが至ったのでしょうか。

家族構成等が頭に入っていたら、臨時休業中は虐待男と桜利斗ちゃんが2人で過ごす可能性が強いと気づけた筈です。

しかし、こうした懸念は見過ごされてしまいました。新型コロナ休業で園は七転八倒し、それどころでは無かったのは実情でしょう。

市役所・児童相談所・保育所、そして母親も虐待行為に気づいていました。救えた筈の命でした。

暴行を加えて殺したのは松原容疑者の責任です。そして救えなかったのは周囲の大人の責任です。