【摂津3歳児熱湯死】無数のケガ、母親の交際相手、保育所のコロナ休業、リスクの過小評価が死へ

母親の交際相手によって虐待死した新村桜利斗ちゃんの死亡事故につき、大阪府が報告書を公表しました。

亡くなった新村桜利斗ちゃん
https://digital.asahi.com/articles/ASP9Q73RHP9QPTIL029.html

令和３年度児童死亡事案検証結果報告書（摂津市事案）の公表について
https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=43658

2年間でケガ21回以上

本事案で何よりも問題だと感じたのは、桜利斗ちゃんのケガの多さです。令和元年5月末から令和3年8月末までの約2年3ヶ月の間に、少なくとも21回のケガが確認されていました。最後のケガが火傷による死亡でした。

報告書に記載されたのは、摂津市職員等が確認したケガのみです。これら以外にも知られなかった無数のケガがある筈です。

報告書には何度も「安全配慮不足による怪我」と指摘されていました。しかし、これほど多数のケガが安全配慮義務で片付けられる筈がありません。もしも全てが本当に不注意であれば、育児を行う能力が欠落しています。

交際相手の発生により面会・ケガが急減？

報告書によると、令和2年6月から12月にかけてはケガが確認されていません。実はこの頃に母親が出会い系アプリを使っており、10月には松原容疑者との交際を始めました。

同年6月から11月の間は摂津市が親子に接触できた形跡がありません。協議が1回、保育所からの相談が1回あったのみです。母親が交際相手との関係を優先し、摂津市からの面会等を断っていたのではないかと感じました。

面会する機会が激減した時点で「何かおかしい」と気づけなかったのでしょうか。市が交際相手の存在を認識したのは年末でした。

子供（特に男の子）にとって、母親の交際相手の存在は極めて高いリスクを招きます。交際相手や内縁の夫が連れ子を虐待した事件は数え切れないほどです。

摂津市は令和3年1月に2度のケガを確認しました。母親は「いつできたかわからない」「交際相手の２人で過ごしているときに怪我をした」と弁解しました。重大な安全配慮義務違反、ないしは交際相手からの加害行為があったと考えるのが自然です。

しかし、摂津市はリスクアセスメントを「ネグレクト：中度」に据え置きしました。ここで「最重度」に変更しなかったのは全く理解できません。

担当者が問うても交際相手との同居を否定

令和3年は担当者が頻繁に母親と接触しました。日々の生活や桜利斗ちゃんを細かく聞いています。

ニュースでは「4月に摂津市の担当者が総交代し、母親との意思疎通に齟齬を来した」という内容が報じられました。しかし、報告書を読む限りでは、そうした事情は感じられません。頻繁に面会を行っています。

ただ、母親が頑として否定した事がありました。「交際相手との同居」です。交際から半年以上が経過した6月3日も否定しています。担当者は交際相手との同居している事実を認識できていたでしょう。ここで否定した時点でより強く警戒して欲しかったです。

また、同時期には匿名（母親の友人）による虐待通告がありました。交際相手との同居と暴力、完全な赤信号です。

致命傷となったのは、新型コロナウイルス感染症による保育所の臨時休業でした。交際相手と桜利斗ちゃんが2人で過ごしている日中に悲劇が起きました。

リスクの過小評価

報告書を読んで痛感したのは「リスクの過小評価」でした。度重なるケガ、交際相手との同居及び虐待、匿名通告、荒れる家庭、たとえ一つずつの要素が小さいとしても、重なる事により非常に大きなリスクとなります。

報告書には何度も「アセスメントするべきだった」という文言が掲載されています。必要なのは「するべきだった」ではなく、「しなかった理由」です。

本事案で最大のリスクとなったのは、「保育所の休業」でした。保育所等に見守りを依頼している要保護児については、保育所等から市へ定期的な連絡等が行われています。保育所等や保育士も注意すべき児童と認識しています。現に保育士がケガ等を見つけ、市へ何度も連絡していました。

しかしながら保育所等が休業してしまい、こうした連絡経路が絶たれてしまいました。休業中は交際相手との密室生活です。これが死に至った決定的な理由となりました。

本報告書には保育所等の臨時休業リスク、休業に対する担当者の認識の有無、休業中の安全を担保する体制等について記載されていません。重大な問題点です。

関係者がリスクを適切に評価していれば、桜利斗ちゃんの命は助けられました。「見殺しにした」と指摘されても仕方ありません。