保育所等への入所を検討する方の多くは、保育所や認定こども園を第1希望としています。最も大きな理由は「6年保育が保障されている」からです。

数年前から待機児童問題が深刻な0~2歳児を対象とした「地域型保育事業(小規模保育・保育ママ)」が開始しました。

しかし、保育が行われるのは2歳児クラスまでに限られています。3歳児クラスからの保育は改めて別の保育所等へ入所を申しこむか、卒園児から優先的に入所できる「連携施設」へ転所する事となります。

当初は卒園児の多くを連携施設で受け入れるかの様な方針がありました。しかし、連携施設の大半は同一法人が運営する保育施設でした。

運営法人が異なる保育施設同士が連携施設となるのは、非常に難しかったのが実情です。書類の形式一つとっても異なります。画に描いた餅でした。

保護者目線としては、3歳児クラスで改めて保育所等を見学して入所を申し込むのは大きな負担です。できる限り避けたいです。

結果として多くの地域型保育事業は第1希望者が極端に少なく、2次調整でも充足しない施設が相次ぎました。

この傾向は2022年度一斉入所でも変わらず、むしろ急激な少子化によって充足率が更に低下する可能性が強いです。地域型保育事業の生き残り策は急務です。

こうした欠点を公立保育所で補う自治体があります。一例が大阪府高槻市です。

高槻市は地域型保育事業の卒園児を対象とした優先入所枠を公立保育所に設けます。2022年度は3歳児募集数の約半数を、そして2023年度は全てを優先枠とします。

公立保育施設における小規模保育事業所等卒園児優先枠の設定について

令和4年度から、小規模保育事業所等から2歳児クラスを卒園される児童について、新たに公立保育所・認定こども園への優先枠を設けます(小規模保育事業所等に同一法人の完全連携施設がある場合を除く)。

令和4年度については、新3歳児の受入枠のうち、約半数を優先枠とします。令和5年度以降は、原則募集見込枠がすべて優先枠となる見込みです。優先枠が埋まらなかった場合のみ、一般枠での入所児童が決定します。優先枠選考についての具体的な手続きは、在籍される各小規模保育事業所等を通じてお知らせします。

http://www.city.takatsuki.osaka.jp/kurashi/kosodatekyoiku/ikuji/hoikusyo_youchien/oshirase/1634706615076.html

法令を意識した側面もあります。

2020年4月から地域型保育事業の卒園児が保育所等を優先的に利用出来る措置を講じている場合、受け皿となる連携施設の確保が不要となりました。

https://syokibohoiku.or.jp/topics/3-3

地域型保育事業を利用しても、3歳児以降の保育が保障されるのは心強いです。

しかしながら欠点もあります。代表的なのは「100%保障されているわけではない」という点です。これは既存の連携施設でも生じています。

優先枠が設けられますが、全ての卒園児数に相当するだけの優先枠が設けられるとは限りません。卒園児数>優先枠、という事態は否定できません。

こうした場合は、優先枠の利用希望者同士で調整が行われるのが一般的です(大阪市も同様)。優先枠で入所できなければ、それ以外の入所希望者と同一基準で調整が行われます。

また、自宅の近所に公立保育所があるとは限りません。通いにくい場所にある公立保育所の優先枠は利用しにくいです。大阪市内でも「別区にある連携施設へ進級しにくい」という話を聞きました。

ただ、こうしたデメリットがありながらも、公立保育所へ優先入所できるのは大きな魅力です。地域型保育事業を利用しやすくなります。

反面、新制度によって排除されてしまうのは、3歳児からの保育を希望している世帯です。多くの自治体では地域型保育事業の卒園児に一定の加点を加えているので、既に3歳児からの新規入所は難しくなっています。

優先入所枠が設定されてしまうと、選択肢はますます減少します。保育施設を利用し始める年齢が更に早くなりかねません。

今後は0歳~2歳児は保育所等、3歳児以降の入所は幼稚園といった分化がますます進みそうです。少子化も相まって、今後も保育施設を取り巻く環境が急変していきます。