東京パラリンピックによってクラスターが誘発されました。しかも中学校です。

 千葉市教委は29日、若葉区の市立貝塚中学校で教諭6人が新型コロナウイルスに感染し、夏休み明けの30日から9月3日まで同校を休校にすると発表した。6人のうち2人は東京パラリンピックの学校連携観戦で生徒を引率していた。市教委はバスに同乗した生徒ら計約150人に検査を行う。今のところ、体調不良を訴える生徒の報告はないという。

市教委によると、感染が判明したのは30代~50代の男女教諭。23日に50代女性に発熱の症状が出たのを皮切りに28日までに体調不良が相次ぎ、26~29日に陽性が判明した。感染経路やクラスター(感染者集団)に該当するかは保健所が調査中。

6人のうち40代と50代の男性教諭が25日の幕張メッセでのパラ観戦で1年生を引率。40代教諭は27日、50代教諭は28日にそれぞれ発症した。引率中は不織布のマスクを着用するなどしていたが、市教委はバスに同乗した1年生18人にPCR検査を行う。

同校が発熱した教諭の確認後にパラ観戦を行ったことについて、市教委は「観戦を見直す際の指針は特になかった」と釈明。パラ観戦は継続する方針で、一度断念した生徒らへの観戦前検査を再検討するとした。

また、夏休み期間中に学習相談を行っていた教諭がおり、接触があった生徒100人程度を検査。教職員約30人の検査も予定している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f65d22f944e2df9cfe6d98e1ca34419a0516793b

千葉市立貝塚中学校は市中心部からやや離れた場所にあります。「貝塚」とは加曽利貝塚を示しています。

学校ウェブサイトには今回の件は掲載されていません。

貝塚中の北島校長は「やって良かった」と話しています。

 同市若葉区の貝塚中は1年生55人が観戦。生徒は教員10人と貸し切りバス5台に分乗して学校と会場を往復した。同校では当初、204人が観戦予定だったが、コロナ感染者の急増や他自治体の観戦辞退報道などを受け減ったという。北島啓行校長は「生徒たちは障害者について知識を持っていても、実際に出会う経験が少ない。感染対策を取りつつ経験を積んでほしかった。帰りのバスで聞くと選手の迫力や会場の臨場感に感動した生徒が多かった。やって良かった」と話した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c7c598e6066d633ec7dc0e9ca536c7c67ad28a84

職員室で感染が広がっている可能性が強まる中、「やって良かった」とはどの口で言えたものでしょうか。デルタ株を軽視し、生徒や保護者を不安のどん底に追いやりました。学校長失格です。

千葉市は東京パラリンピックの学校連携観戦に極めて積極的な自治体の一つです。市内にある幕張メッセで一部競技が開催される事、そして前市長たる熊谷知事が熱心に取り組んでいました。

多くの自治体が学校連携観戦を取りやめる中、千葉市は行う方針を堅持しています。しかしながら不安に感じた保護者や児童生徒の不参加が相次ぎ、参加率は低迷しています。

市教委によると、25日は市立中学校12校の生徒計468人が幕張メッセで観戦した。対象生徒は1746人で参加率は26・8%。23日の事前アンケートでは61%が参加の意志を示していたが、直前になって見合わせる生徒が相次いだ。

しかし、今回はその熱心さが完全に裏目に出てしまいました。

始めに教員の陽性が確認されたのは8月23日でした。この日が学期中であれば、一般的には濃厚接触者の特定及び検査が行われるまでは休校となるでしょう。

が、この日は夏休みでした。体調不良者が相次ぐ中、2日後の25日はパラリンピック連携観戦日でした。

どうして「体調を崩す職員が相次いでいる。職員室でクラスターが発生している可能性がある。学校を臨時休業にし、パラ観戦を中止すべきではないか。」と判断できなかったのでしょうか。

多くの教職員の検査が行われていないのも杜撰です。学校内で最もコロナが広がりやすい場所の一つは職員室です。千葉市保健所は何をしていたのでしょうか。

最悪な事に、パラリンピック観戦を引率した教員2名が陽性でした。多くの生徒を誘導する為にバス車内や会場等で教員は声を出し続けたでしょう。生徒に感染が広がっている可能性は否定できません。

千葉市教委は「観戦を見直す際の指針は特になかった」と釈明していますが、「何が起きてもパラリンピック観戦を実施するつもりだった、中止は考えていない。」という考えの裏返しです。

ここまでの経緯を見る限り、23日に教員の陽性が確認された事を生徒は知らされていなかった可能性もあります。もしも知っていたら、大半の生徒は連携観戦をキャンセルした筈です。

全てがパラ観戦へ向けて一直線に動いています。市教委や学校がこうした判断を強行した背景には、千葉市長や千葉県知事の強い意向を無視できない雰囲気があるのでしょう。

こうした事態に至っても、千葉市教委はパラ観戦を継続する方針だそうです。児童生徒や教員の感染予防よりパラ観戦を重視するなんて、物事の優先順位を何ら理解していません。

千葉県の熊谷俊人知事は「次世代を担う子どもたちが見ることは、共生社会の実現に大きく貢献する要素になる」と述べています。

パラ学校観戦、何のため? 10代も感染増加中、広がる疑問
https://www.chunichi.co.jp/article/313682

しかし、パラリンピックはテレビ越しでも観戦できます。うちの子は昨日も今日もテレビで見続けていました。外出しにくい代わりに、パラがステイホームを有意義にしています。

子供は「義足で踏み切る走り幅跳びは遠くまで跳べるんだ」「車いすラグビーの音が凄い」「水泳選手は私よりも泳げる、がんばらないと・・・・」と話していました。

現地観戦だけではありません。感染状況に応じて柔軟に計画を見直す事が重要では無いでしょうか。

ましてや観戦に引きずられてクラスターが起き、多くの生徒を巻き込んでしまいました。これでも観戦を強行するのであれば、児童生徒の健康をパラに売り渡したようなものです。

なお、千葉市の教員の殆どはワクチン未接種だそうです。


接種が遅く、そして未接種者に引率させるなんて。いろいろとおかしいです。

もう千葉市の学校連携観戦は成り立たないと思います。殆どの児童生徒はキャンセルすると見ています。誰も乗っていない貸切バスで学校と会場を往復するなんて、お化けでも出そうです。

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(追記)
より詳しい前後関係が朝日新聞に掲載されています。

市教委によると、感染したのは30~50代の男女教員。最初に感染が確認されたのは50代の女性。23日に発熱し、24日に学校を休んで発熱の連絡をしたうえで、26日に陽性が確認された。貝塚中は、最初の教員が発症した2日後の25日に観戦プログラムに参加。6人のうち50代と40代男性教員2人は他の教員と1年生55人を引率して幕張メッセでゴールボールを観戦した。2人はその後の27、28日に発症した。

教員も生徒もパラ観戦ではマスクをしており、「2メートル以内」「計15分以上」の接触者がいないため、市保健所は生徒を濃厚接触者に当たらないと判断。今のところ体調不良を訴える生徒はいないが、参加生徒のうち感染した教員と一緒にバスに乗っていた18人が今後PCR検査を受ける。教員6人相互の接触は調査中で、保健所は同中を今のところクラスター(感染者集団)認定していない。しかし、校内で発熱した教員がいると分かりながら観戦したことについて、市教委は対応基準の策定などを検討するという。

また、20日には教職員会議、23~26日には感染した一部の教員が1~3年の一部の生徒約100人に対し、校内で面談した。感染対策をしていたが、保健所の指導で、参加した教職員30人と生徒約100人が、9月3日までにPCR検査を受けるという。

https://digital.asahi.com/articles/ASP8Y74H4P8YUDCB004.html

女性教員が発症・発熱したのは観戦前ですが、陽性が確認されたのは観戦後でした。この段階でパラ観戦を止めるのは、非常に難しかったと感じました。

校内で完結する行事であれば学校長が中止や延期等を判断できます。しかし、今回はパラリンピック観戦です。中止するとしても、相手先や市教委との入念な調整が不可欠です。

現場としてはどうしても予定通りに決行したい(決行せざるを得ない)との判断に傾いてしまうのはやむを得ません。当時はパラ観戦を直前に中止にする確定的な理由が乏しかったのは事実です。

ましてやパラ観戦は教育的意義が過度に強調された国家的事業です。「念のために中止」という決断は非常に難しかったです。

「観戦前にPCR検査を行えば回避できた」という意見もあります。ただ、宿泊行事ですらPCR検査がままならない中、日帰りの短距離行事で検査を行うのは困難でした。

今更になって都知事が「検査を行う」と主張していますが、いつ誰がどこで検査を行うかは定かになっていません。

当初は「学校長失格」と書きましたが、一方的に責められるべき経過ではありませんでした。批難されるべきは、こうした結果を助長したパラ観戦そのものです。

観戦を中止した自治体は今頃胸を撫で下ろしているでしょう。臨機応変な判断が要求される今、学校がイニシアチブを取れない行事を決行するのはハイリスクです。

この後に及んでも市教委は方針転換ができません。

市教委はパラリンピックの学校連携観戦プログラムは「子どもたちの教育環境を考慮すると、引き続き実施する」として続ける方針。

教育環境を考慮すると、パラ感染よりも日々の学校活動一択です。恐らくは市教委も大きな力に取り憑かれ、思う事が言えないのでしょう。

パラや子供が政治の道具にされています。

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(更に追記)
千葉県の学校連携観戦は中止となりました。観戦が感染になった可能性がある以上、当然かつ遅すぎた判断です。

千葉県は、現在、実施している東京パラリンピックの「学校連携観戦」チケットによる子どもたちの観戦について、一転して中止する方針を決めました。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210830/1000069573.html