画期的な判決です。

高層マンションの建設によって陽当たりが著しく悪くなった保育所の運営団体や園児等が不動産会社を提訴し、陽当たりを確保する為に負担した費用等の賠償請求が認められました。

 名古屋教会幼稚園(名古屋市中区)の隣に立てられた高層マンションを巡り、園を運営する日本基督教団名古屋教会と通っていた園児らが、不動産会社「プレサンスコーポレーション」(大阪市)などに高層階の取り壊しや慰謝料など約二千二百万円の支払いを求めた訴訟の判決が三十日、名古屋地裁であった。唐木浩之裁判長は「日照に配慮すべき義務を十分に尽くすことを怠った」と同社の不法行為を認め、二百五十九万円の支払いを命じた。 

 唐木裁判長は子どもの権利条約や児童福祉法の趣旨に触れ、「園児らは適切な環境の下で保育を受ける権利があり、日照阻害の判断に際しても考慮するべきだ」と述べた。
 判決によると、同社のマンションは二〇一七年七月に着工。園との協議を三回開いたが、日照阻害の対応などを求める園側との交渉は平行線に終わり、一九年二月に十五階建てマンションが完成した。

 判決理由で唐木裁判長は「秋分の日から春分の日まで、午後一〜二時は園庭全体が日陰となるため、園庭は暗く、寒い場所になり、園児らが外で遊ぶ時間が減っている。活動はかなりの制約が生じている」と影響を指摘。「同社は園長らの意見を聞いて保育への影響を十分に検討せずマンション建設を決めた」と協議の過程に不備があったことを認めた。

 その上で、マンション建設により、園は日当たりをよくするために南側の「牧師館」を撤去せざるを得なくなったとして、撤去費用の負担を命令。高層部の取り壊しや慰謝料の請求は「影響が我慢できないほどではない」として退けた。

 判決後、市内で会見した石原ゆかり園長(60)は「子供たちが人間らしく豊かな環境で育つことの大切さを説いてくれた大きな一歩」と話した。

https://www.chunichi.co.jp/article/227651

これまでの経緯は同幼稚園のブログに掲載されています。

名古屋教会幼稚園「おひさまを守る会」裁判までの経緯
https://www.nagoya-church.net/%E7%89%A7%E5%B8%AB%E3%82%88%E3%82%8A/%E5%90%8D%E5%8F%A4%E5%B1%8B%E6%95%99%E4%BC%9A%E5%B9%BC%E7%A8%9A%E5%9C%92%E3%80%8C%E3%81%8A%E3%81%B2%E3%81%95%E3%81%BE%E3%82%92%E5%AE%88%E3%82%8B%E4%BC%9A%E3%80%8D%E8%A3%81%E5%88%A4%E3%81%BE%E3%81%A7/

大阪在住の方でしたら「プレサンスコーポレーション」という名称に聞き覚えがあるでしょう。

関西を中心として数多くのワンルームマンション等を建築するデベロッパーです。一方で2年前には当時の社長が業務上横領の疑いで逮捕されました。

【深層】“消えた21億円” …不可解な手口に潜む『思惑』 事件はなぜ起きたのか

大阪の学校法人・明浄学院をめぐる“消えた21億円”事件。

12月16日、大阪地検特捜部はさらなる立件に踏み切った。
大手不動産会社プレサンスコーポレーションの山岸忍社長(56)を、業務上横領の疑いで逮捕したのだ。

https://www.fnn.jp/articles/-/15913

もう一方の当事者は名古屋教会幼稚園です。愛知県庁や名古屋市役所にほど近い、名古屋位置の繁華街である栄地区にも接しています。いわば「都会の幼稚園」です。

同幼稚園と接する様に建設されたのはプレサンス丸の内フォートです。位置関係は下記のグーグルマップが分かりやすいでしょう。

幼稚園の園庭はビルに囲まれていますが、一定程度の日照は確保できていた様子です。園庭東側には大津橋ビルがそびえ立っていますが、敷地南西部分はビル敷地として利用されていません(低層の建造物がある)。

また、園庭の真南方面には駐車場が連なっています。日照を阻害する物はありません。

周辺の地権者等の間に「幼稚園の園庭に日が当たらないのは問題だ」という意識が共有されていたのでしょう。園児が園庭で遊び出す午前9時以降は、園庭の大部分に日照が降り注いました。

しかし、プレサンス丸の内フォートの建築で一変しました。


グーグルマップより)

園庭の南西部分に建築され、正午以降の陽当たりが遮断されてしまいました。きっと冬場の昼食後は寒くて外遊びができなかったでしょう。

午後の陽当たりがなくなってしまうと、草花や野菜の成育にも影響を及ぼします。園児が大切に育てて収穫する野菜等も育ちにくく、貧弱になってしまいます。

園側の要請にプレサンス社は耳を貸さず、最終的には15階建てのマンションを建築しました。

このマンションを一言で言い表すと「壁」です。大津通側からのストリートビューが分かりやすいですね。

幼稚園は少しでも日照時間を確保する為に、園庭南部にあった牧師館(牧師先生や家族が生活する、青い屋根の2階建て住宅)をやむなく撤去しました。

この判決で重要なのは「園児らは適切な環境の下で保育を受ける権利があり、日照阻害の判断に際しても考慮するべきだ」という部分でしょう。

一方、裁判は日が当たらない事に関して「影響が我慢できないほどではない」とも指摘しています。日照権をストレートに認めたものではなさそうですね。

ただ、午後からの日照が通年に渡って遮られる事が、果たして受忍限度内と言えるのでしょうか。

子育て家庭の目線からすると、日照は極めて重要です。日照が不十分な環境は、子供の生活や成長に悪影響を及ぼすのは自明です。私も居住する場所や保育施設の選択では、「陽当たりの良さ」を重視しました。

こうした主張を幼稚園は何度もプレサンス社に伝えた筈です。しかし、同社は耳を傾けず、幼稚園児の生活環境を軽視し、自らの不動産価値を最大化するだけを考え、壁の様な高層マンションを建築しました。

高層マンションの建築は法律的な問題はないでしょう(あったら建築できない)。しかし、皆が大切にしてきた「幼稚園児の生活環境」を踏みにじってしまいました。

なお、名古屋市名東区ではサムティ社(同じく大阪資本のデベロッパー)が日照権を侵害したとして、周辺住民と紛争が起きていますね。

マンション建設「日照侵害だ」 名古屋で相次ぐ紛争なぜ
https://www.asahi.com/articles/ASMCN42FQMCNOIPE013.html

関西系デベロッパーと名古屋は相性が悪いのでしょうか。