東大阪市の留守家庭児童育成クラブ事業(学童保育)が揉めています。
新たな受託事業者を選定したところ、旧受託事業者から「不当・違法だ」と指摘されています。
大阪府東大阪市の学童保育事業で、市が不透明な選考で委託契約を打ち切るのは不当だとして、市内の5団体が16日、契約の継続を求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。
申立書によると、「八戸(やえ)の里こぐまクラブ」など5団体は、前身の頃を含めて市内の学童保育事業を30年以上担ってきた。
市は2018年度から、事業者の提案内容を比較して委託先を決めるプロポーザル方式をとる。5団体は18~20年度も運営を受託したが、昨年11月にあった21~23年度の選定では契約更新が認められなかった。
団体側は、長年受託を続けてきたことから、市とは期間の定めがない業務委託契約が成立していたとし、一方的な契約破棄は不当だと主張する。事業者選定に関わった委員名や評価点の内訳が公表されないなど、手続きが不公正で違法だとも指摘している。
市青少年教育課は取材に「申し立て内容を確認していないのでコメントできない」とした。
記事に名前が出ている八戸の里こぐまクラブは、長年に渡って東大阪市立八戸の里小学校における留守家庭児童育成クラブ事業の運営を受託していました。
同市は東大阪市留守家庭児童育成クラブ事業 運営・管理業務委託仕様書を平成29年10月に定めました。
また、同仕様書には「事業委託期間 平成30年4月1日から平成33年3月31日まで(3年間)」と記載されています。これを踏まえ、2018年度から2020年度における事業が同クラブ等へ委託されました。
事業委託期間の終了まで半年を切った昨年11月、2021年度から2024年度の委託事業者を定めるプロポーサルが行われました。
これにより、八戸の里を含む一部の児童育成クラブで受託事業者が変更される事が決まりました。
東大阪市留守家庭児童育成クラブ事業 運営・管理業務委託プロポーザルの選定結果
運営区分O(八戸の里)
審査結果(運営区分O)
優先交渉権者 株式会社イング
事業者が変更されたクラブは下記の通りです。
小学校区 | 旧事業者 | 新事業者 |
玉串 | 玉串留守家庭 | シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社 |
高井田東 | いきいき意岐部 | シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社 |
楠根 | 一粒の麦 | シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社 |
小阪 | 小阪 | 株式会社イング |
八戸の里 | 八戸の里こぐまクラブ | 株式会社イング |
大蓮 | 大蓮みどり会 | シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社 |
池島(学園) | 池島スマイルクラブ | シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社 |
地域密着型と推測される小規模事業者から、大きな資本力を有する株式会社に変更されています。
公の事業である以上、一定期間毎に事業者を評価し、より適した事業者への変更も行い得るのは当然でしょう。
適切な評価がないままに漠然として長きに渡って業務を受託し続けるのは「既得権益」と呼ばれても仕方ありません。
一方、児童クラブには教育的側面や保育的側面が求められています。長期に渡って児童との人間関係を形成し、それぞれの子供に応じた健やかな接し方が必要です。
委託期間を単年度ではなく「3年間」としているのは、同事業のこの様な性質を加味した為でしょう。
仮処分を申し立てた事業者は「市とは期間の定めがない業務委託契約が成立していたとし、一方的な契約破棄は不当だ」と主張しているそうです。
ただ、3年前にも同様のプロセスで選定されている事、そこで新たに3年間の業務委託期間が定められた事、そして期間の定めがない委託契約は税の公平な支出という観点から問題がある事から、この主張が難しいと感じています。
契約期間を満了する以上、「契約の打ち切り」でもないでしょう。無条件での契約更新が想定された事業でもありません。
ただ、「業者選定に関わった委員名や評価点の内訳が公表されない」という指摘はその通りです。
ウェブサイトには選定された事業者のみが掲載されており、選定基準(ウェブにない要綱に記載?)、選定委員、評価点等の内訳等は見つかりません。
同種事業たる「児童いきいき放課後事業」を事業者に委託している大阪市は、委員名・評価項目・評価点を掲載しています。
児童いきいき放課後事業 運営・管理業務委託予定者の選定結果について
「委員・評価項目・点数は不明ですが、新年度から事業者が変更されます」と発表されても、これまでの受託事業者や子供達は納得できないでしょう。
根拠を示した丁寧な説明は不可欠です。