大阪市立高校(全21校)を大阪府へ移管する大阪市の条例案が本会議で可決しました。

大阪市立高の府移管、条例案可決 市議会

大阪市議会は9日の本会議で、市立高校など21校を令和4年度に市から大阪府に移管する条例案を、大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決した。府と市の二重行政解消の取り組みの一環。市は学校の校舎や土地も府に無償譲渡する方針だ。

松井一郎市長が代表を務めていた大阪維新の会は、大阪都構想の実現を見据えて、市立高と府立高の運営の一元化を公約に掲げていた。府議会でも関連条例案が採決される。

市議会の反対討論で自民党は、都構想に絡めた政治目的だとして批判し、「無償譲渡することで市民の利益は何なのか、客観的な根拠がない」と強調。これに対して、松井氏は記者団に「市立高は定員割れも目立ち、子供たちのニーズに合っていない。20年、30年先を見て必要なことをやっている」と述べた。(以下省略)

https://www.sankei.com/west/news/201210/wst2012100008-n1.html

大阪市議会が「市立高21校の府移管」条例案可決 「違法の疑い」と自民反対

大阪市議会は9日、市立高校全21校(一部は中高一貫校)を2022年度に府へ移管する条例案について、大阪維新の会、公明党の賛成多数で可決した。今後、府議会でも関連条例案が採決される。市は約1500億円とされる土地と建物を府に無償譲渡する方針だが、自民党は地方財政法などに違反する疑いがあるとして反対した。

政令市が公立高校を都道府県に移管すれば全国初になる。

自民は反対討論で「教育目的ではなく、大阪市廃止構想で生まれた政治目的であると言わざるを得ない」と批判。無償譲渡は「特に無償とする必要がある場合に限り」と市財産条例が定める要件を満たしていないと訴えた。

また、学校教育法によると府立高校の経費は府が負担すべきもので、地方公共団体同士の経費負担区分を乱すことになるため、地方財政法にも違反する可能性があると指摘した。共産党も「高校教育行政を市が放棄するのは、(11月1日の)住民投票の民意を無視する暴挙だ」と訴えた。

一方、維新は「府が高校運営を一体的に管理運営することで、長期的な視点を持って魅力のある学校づくりができる」と賛成意見を述べた。市教委と府教委が財産の処分や収益の活用方針などを具体的に協議し、市議会に報告するよう求める付帯決議をつけ、条例案は可決された。(以下省略)

https://news.yahoo.co.jp/articles/a3e03271f6b81b8b4d0f26fce7c9dc24bf0e4bfd

可決された条例案は既に掲載されています。

大阪市立学校設置条例の一部を改正する条例案
https://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/result/pdf/2020gian182.pdf

全てを調べたわけではありませんが、21校もの市立高校を運営しているのは大阪市だけでしょう。国内最大規模の市立高校群です。移管計画に則って大阪府へ移管されます。

大阪市立の高等学校等移管計画(案)
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000516/516507/keikau.pdf

移管される各校・コース(課程)・2020年度入試志願倍率等を一覧にしました。

主なコース名称志願倍率(括弧書きは特別選抜)備考
普通科系桜宮高校0.99(1.43)人間スポーツ科学科
東高校1.30英語科・理数科
大阪市立高校0.99英語科・理数科、いちりつ高校へ改称
汎愛高校1.03(1.22)武道科・体育科
南高校0.89桜和高校へ統合(教育文理学科)
西高校1.24
扇町総合高校1.20
商業系大阪ビジネスフロンティア高校0.98英語強化、進学特化
淀商業高校1.12地域密着型
鶴見商業高校0.83商品開発型
住吉商業高校0.82観光ビジネス
工業系都島工業高校0.93総合募集制へ
泉尾工業高校0.64統廃合を予定
東淀工業高校0.57
生野工業高校0.66
工芸高校(1.37)
中高一貫咲くやこの花高校0.98(1.35)
水都国際高校(1.28)
昼夜間単位制中央高校(0.78)
夜間定時制都島第二工業0.16閉校し、全日制課程と併置する
第二工芸0.30閉校し、全日制課程と併置する

商工業が集中する大阪市という特色からか、商業系や工業系の高校が半数弱を占めています。ただ、これらの高校の大半は志願倍率1倍を割っています。四大進学を意識した普通科志向の高まり、そして大阪府による高校無償化によって私立高校への進学希望者が増加したのが背景にあるでしょう。

商業系・工業系の大阪市立高校は、多くの中学生やその保護者のニーズと食い違っていると感じました。ただ、「たとえ保護者等のニーズが低くても、産業界からのニーズがあれば存続意義がある」という指摘もあります。

一方、普通科系の高校の志願倍率は概ね1倍強をキープしています。スポーツ・理数教育・英語教育に特化したタイプの高校が人気を集めていますね。

一覧表を見て強く感じたのは「抜群の進学実績を有する伝統校がない」という点です。文理学科が設置された府立北野高校・天王寺高校・大手前高校・高津高校に相当する学校がありません。

ざっと見た限り、2020年度入試にて大阪市立の各高校から京都大学へ合格した生徒は見つかりません(東高校から大阪大学が2名)。

他府県の市立高校には、こうした進学実績を有する高校が少なくありません。近畿では京都市立堀川高校西宮市立西宮高校が典型例ですね。

大阪府へ移管する背景には伝統校や進学校の有無、そして志願倍率の低さから滲み出る市民ニーズの低さがあるでしょう。

私自身は移管自体には反対しません。大阪府立高校と一体的に運用できるスケールメリットは計り知れないでしょう。

その反面、大阪市が独自に有する考え方に則った中等教育が行えなくなるのは大きなデメリットがあります。大阪市で活躍する事を期待した人材を自らの手で教育できなくなってしまいます。大阪府立高校となると、大阪市の考えが及ぶ範囲は限られるでしょう。

今更論となりますが、大阪府へ移管する前に何らかのテコ入れはできなかったのでしょうか。移管したいが為に行わなかった、という邪推すらできてしまいます。中等教育へ更に投資するのでは無く、切り離してしまいました。

大阪府への移管は2022年4月に行われます。