「南流山福祉会」「足立区立新田三丁目なかよし保育園」、何だか聞き覚えがある名称です。
保育所の運営費が裁判所に差し押さえられて運営が立ち行かなくなりかねないという、前代未聞の事態が生じています。
東京都足立区の「区立新田三丁目なかよし保育園」の運営費が裁判所に差し押さえられ、同園が今後、運営できない恐れがあることが分かった。区が指定管理者に定めた法人内部のずさんな運営が原因。区は20、21日に保護者説明会を開き、直営化などを検討していることを伝える。
◆マンション建設ラッシュ、人口急増
同園は社会福祉法人「南流山福祉会」(本部・千葉県流山市)が、区の委託を受け、2013年の開設当初から運営。マンションの建設ラッシュで人口が急増した地域にあり、1~5歳児36人が在籍する。
区の資料などによると、法人が別に運営する「私立流山なかよし保育園」の元園長らが、給与が未払いだとして法人側を提訴。千葉地裁松戸支部は法人側に約5000万円の賠償を求める判決を出した。
訴訟は係争中だが、同支部は賠償を巡り、今月2日付で、新田三丁目と流山市の保育園運営費の差し押さえ命令を出した。区が20日までに法人に振り込む予定だった運営費も差し押さえの対象になり、支払えなくなったという。
◆直営や園児の転園を検討
区は同法人に本年度、運営費計約8500万円を支払う予定で、運営費が支払われなければ保育の継続が危ぶまれる。区は指定管理を解除し、直営にすることや、園児の転園に対応することを検討している。
法人を巡っては、区内の別の園で飲食代や交際費など不適正な支出が13~14年度に約443万円あった。今年6月にも新田三丁目の保育園で賞与の遅配があり区が指導していた。法人を所轄する千葉県も8月、不適切な支出や会計処理などを是正するよう求める改善勧告に従わなかったとして、県内初の法人名公表に踏み切っていた。
足立区によると、保育へのクレームや問題はなく、指定管理を打ち切れなかったという。区子ども施設運営課の島田裕司課長は「保護者や子どもに申し訳ない。保育が継続できるよう対応していく」と説明した。
南流山福祉会側は取材に「理事長は不在で連絡がつかない。理事長以外では答えられない」と話した。 (以下省略)
足立区立新田三丁目なかよし保育園は東京都足立区新田3-17-14にあり、社会福祉法人南流山福祉会が運営しています。60名(3歳児…20名、4歳児…20名、5歳児…20名)が在籍しています。
実は当ウェブサイトでは南流山福祉会の経営が混乱する様子を取り上げていました。
保育園運営費を差し押させる切っ掛けとなったのは、元園長等が未払賃金等の遅払いを求めて法人を提訴した民事訴訟でした。
そもそも未払賃金等が発生したのは、理事長が運営費を私的に流用した為です。
足立区の調査委員会が作成した答申文には目を疑う項目が掲載されています。
http://www.gikai-adachi.jp/iinkai/shidai/soumu/pdf/20161206houkoku3.pdf
本来は理事長の私的流用が発覚し、ずさんな経営が明らかになった段階で指定管理を打ち切るべきだったかもしれません。正常な運営が見込めなければ、正常な保育を行うのも難しいでしょう。
しかしながら、足立区は保育自体には問題がないとして、指定管理を打ち切らなかったそうです。運営費を差押えられる事態を想定していなかったのでしょう。見通しの甘さが出ています。
保育を継続する為には区の直営に戻す、法人理事長等を入れ替える、別法人に指定管理を委託する等の方法が考えられます。
こうした事例が発生した場合には法人理事長や理事等を総入れ替えし、同一法人が運営を継続する方法が多く見受けられました。
ただ、本件では法人に対する訴訟が原因となっているので、理事長等の入替では問題を先送りにするだけとなってしまいます。
このままだと保育所の運営がストップし、園児は転園せざるを得なくなってしまいます。何ら責任がない園児や保護者が被害を被るとは言語道断です。