いわゆるNIMBY訴訟ですね。

NIMBY(ニンビー)とは、英語: “Not In My Back Yard”(我が家の裏には御免)の略語で、「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」と主張する住民たちや、その態度を指す言葉である。日本語では、これらの施設について「忌避施設」「迷惑施設」「嫌悪施設」などと呼称される。

https://ja.wikipedia.org/wiki/NIMBY

“保育園児がうるさい”住民訴訟 騒音認めるも訴え退ける

東京 練馬区にある保育園の近隣の住民が園児の声がうるさいとして騒音を止めるよう求めた訴えについて、東京地方裁判所は、騒音レベルが環境基準を超える傾向にあったと認めたものの、保育園側が園庭遊びを減らすなど音を抑える取り組みをしているとして、住民の訴えを退けました。

東京 練馬区に10年余り前にできた保育園の近隣の住民は、園児の声がうるさいとして、運営する会社に対し、騒音を止めることや賠償を求める訴えを起こしました。

18日の判決で、東京地方裁判所の伊藤正晴裁判長は、住民が測定した騒音のデータや裁判所の鑑定を元に、「日中の騒音レベルは環境基準を上回る傾向にあった。保育園の開設から2年程度は環境基準を大きく上回る騒音レベルがあった」と指摘しました。

一方で、「保育園は住民からの苦情も踏まえて園庭の使用を減らすなど、保育園から出る音が抑えられるように試行錯誤を重ねたと評価できる。こうした事情も考慮すると、騒音が我慢できる限度を超えているとは認められない」として、住民の訴えを退けました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200618/k10012475011000.html

東京・練馬の保育園「騒音」訴訟、住民の請求を棄却

 東京都練馬区の保育園の隣に住む住民が、園児らの声が騒がしいとして、園の運営会社などに騒音の差し止めと慰謝料を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。伊藤正晴裁判長は「騒音レベルが抑制されている」などとして、住民の請求を棄却した。

 伊藤裁判長は、開設後しばらくは、園側の騒音対応に「真剣さを疑わせるところもあった」とする一方、後に原告を含む近隣住民の苦情を踏まえて「騒音レベルが抑制されるよう試行錯誤を重ねたと評価し得る」と指摘。これら経緯も踏まえ「現状が継続するなら、園の騒音が受忍限度を超えるものではない」と判断した。

 判決によると、園の開設は平成18年に計画。近隣住民は騒音が生じるとして園庭の場所を変えるよう求めたが、園側は変更せず防音壁を設置して19年に開設した。開設後も住民から騒音の苦情があったが改善せず、原告らが都公害審査会に調停を申請。調停は不調に終わったが、園側は園庭の使用頻度を制限するなどし、27年以降の園庭の使用は月に15日以下、1日に30分以下に減ったという。

https://www.sankei.com/affairs/news/200618/afr2006180058-n1.html

本訴訟で当事者となった保育所はアスク関町北保育園だと考えられます。設立認可年月日は記事と同じ平成19年です。

保育所 アスク関町北保育園(きっずぷらざあすくせきまちきたほいくえん)
1 施設の概要
郵便番号 177-0051
所在地 東京都練馬区関町北4-35-14
設立認可年月日 平成19年4月
設置主体 株式会社 日本保育サービス
経営主体 株式会社 日本保育サービス
定員 120名

https://www2.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/houjin/dbdata/0451747.htm

防音壁の設置、使用時間の制限も共通しています。

「静かに外に出ましょうね」。東京都練馬区の保育所「アスク関町北保育園」で、保育士が口に人さし指を当てて扉を開けると、約20人の4~5歳児が次々と園庭に飛び出す。

虫捕りやドングリ拾いを始めて15分後、近隣住民の苦情を受けた区役所から電話がかかってきた。「子供の声が大きいから注意して」

同園は、日本保育サービス(名古屋市)が2007年4月に住宅街の空き地だった場所に開設。「騒音」を懸念する住民の意見が区役所や同社に寄せられていたことから、園庭の周囲には高さ3メートルの防音壁を設置した。園庭で遊ぶ時間は1日最大45分に制限し、1クラス(約20人)が交代で使っている。

それでも苦情はやまず、12年には一部の住民が「騒音に悩まされ、平穏な日常生活を害された」として騒音の差し止めと損害賠償を求めて東京地裁に提訴。今も係争中だ。

https://www.nikkei.com/article/DGKDASDG21H0A_T21C14A0CC1000/

更に園庭に置かれた小屋がNHKの画像とほぼ一致しています。

同保育所は西武新宿線武蔵関駅の北約300メートルの住宅街の真ん中に立地しています。

西は公道を挟んで中学校、北は大きな駐車場、東は児童遊園、そして東南から南に掛けては住宅と接しています。住宅4棟との間には、防音壁らしき物が確認できます。

今でも甲高い、大きな子供の声が聞こえてくるでしょう。住民が苦痛に感じる気持ちは理解できます。

住民側は設立前に園庭の場所を変更する様に求めていたそうです。

ただ、園庭を敷地北部に整備した場合、園舎の南側が隣地住宅を接するので採光に問題が生じます。また、新たに園舎内から聞こえる子供達の声に悩まされます。

敷地が更に狭ければ、屋上園庭という選択肢も考えられたでしょう。しかしながら建築費が跳ね上がってしまいます。

この訴訟と前後して、東京都は「子供の声」を騒音条例の数値規制の対象から外しました。

東京都議会は3月27日、本会議において「子どもの声」を都の騒音条例の数値規制の対象から外す東京都環境確保条例改正案を全会一致で可決した。

これによって保育園、幼稚園、公園などで子どもの遊ぶ声や一緒にいる保護者、保育士などが発する声について違法であるかどうかは、”受忍限度論”によって判断されることになった。

https://toyokeizai.net/articles/-/64622

住宅街には様々な人が住んでいます。高齢者から新生児まで様々です。

そこで子供の声を制限してしまうと、「うるさい子供はこの住宅街から出ていって欲しい」という排斥論に繋がりかねません。

確かに子供の声はうるさいです。私自身、1日に何度も「うるさい!!!」と怒っています。

ただ、誰しもが子供の頃は騒がしくてうるさかったでしょう。年齢を重ねた後に「うるさいから音を出さないで欲しい、賠償して欲しい」と要求するのは道理が通りません。

ここ数年、保育を必要とする子供は都市部等の住宅密集地に集中する傾向が高まっています。現在も全国各地で同種の訴訟が行われ、今後も続くでしょう。