昨年5月に大津市で多数の園児が交通事故で死傷した事故は記憶に新しいところです。
保育園児等が外出する際にどうやって安全確保を図るかは、多くの保育施設が頭を悩ませている問題でしょう。特に園庭がなく、保育士数に余裕がない小規模保育等にとっては切実な課題です。
そこで大阪市は、園児が外出する際の見守り役「キッズガード」を小規模保育等が雇用した際の費用を一部負担する制度を令和2年度から導入します。
子ども見守る「キッズガード」導入へ…保育所の安全対策 大阪市が一部費用負担
滋賀県大津市で散歩中の園児らが死傷した事故を受け、大阪市は保育所の安全対策のために「キッズガード」と名付けた補助員を新たに配置していく方針を固めた。
去年5月、大津市で散歩中の園児ら16人が死傷した事故を受け、大阪市は4月から小規模保育所などが散歩や野外活動の見守り役「キッズガード」を雇った場合、市がその費用の一部を負担する方針を固めた。
国による安全対策の対象が大規模な認可保育所などに限られる一方、大阪市内には待機児童対策で設けられた小規模な保育所が多いため、市が独自に行うことにした。
大阪市の松井一郎市長「保育士だけで十分対応できない部分を、そういう補助員を付けて子どもたちの環境をよくしていきたい」
さらに、大阪市は4月から1年間で保育所や幼稚園近くの交差点など1200か所に、ガードレールを整備する方針。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200205-00000028-ytv-l27
少し気になったのは、対象となる施設です。
上記記事は前段で「保育所の安全対策のため」と記載している一方、後段は「小規模な保育所が多いため、市が独自に・・・・」としています。
予算案でも表記が定まっていません。この制度は「お散歩時の安全対策推進事業」として予算計上されています。
お散歩時の安全対策推進事業
保育所外等での活動において、子どもが集団で移動する際の安全確保を図るため、園外活動時の見守り等をする保育支援者の配置に必要な経費を補助する。予算額:3億2220万円
http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/cmsfiles/contents/0000488/488631/25.xlsx
制度趣旨は合理的です。ただ、誰を雇用するかという具体像が見えてきません。
多くの小規模保育等では、園児が外出するのは午前中が専らでしょう。午後は午睡の準備や片付け、帰宅準備等で忙しい為です。
また、毎日散歩するわけでもありません。雨天や酷暑日は散歩するのも危険です。複数クラスが外出するとしても、その時間はせいぜい1-2時間程度でしょう。
となると、勤務する時間は不規則かつ短時間に限られてしまいます。被雇用者がイメージできません。
多くの保育施設は保育士不足に加え、保育士以外の人材も不足しています。保育士も行っている様々な作業の一部でも誰かが手伝ってくれれば、それだけでも楽になります。
であれば、キッズガードの雇用を助成するのではなく、保育施設が抱える様々な業務(特に安全対策)を補助する人員の雇用を助成する制度の方が現実的ではないかと感じます。
こうした狙いがあるのか分かりませんが、予算案には「保育所外等」「園外活動時の見守り等」と書かれています。
これは保育所内の活動での安全確保を図る目的もあるのかもしれません。水遊びの見守り要員が典型例でしょうか。
当初予算には3億2220万円が計上されています。小規模保育1施設あたり、概算で200万円前後の金額となります。外出時の見守りだけで消化するには難しい金額ですね。
市内1200か所にガードレールを設置
なお、上記記事には保育所や幼稚園近くの交差点等にガードレールを整備する方針とも書かれています。これは極めて重要かつ効果的な施策です。
ここ数年、様々な新設保育所の立地現場を見てきました。中には交通量が多い道路に接していながらもガードレールが設置されていない保育所もありました
今でもすぐに思いつくのは、2年前に開所したソフィア稲荷町保育園(浪速区)です。
当時に「歩道が無い」と指摘しました。開所した今も歩道やガードレール等は無いそうです。
登降園の際に一瞬でも子供から目を離してしまうと、あっという間に車道に飛び出してしまいかねません。
子供の前後に車が停まっていたら、道路を走行する車両からは影も形も見えません。衝突しかけた現場を何度も目撃しました。
物理的や対策や人員配置により、子供の事故は減らせます。その為には積極的に予算を投じて欲しいです。