昨晩、クローズアップ現代+(NHK)にて「幼保無償化 現場で何が ~少子化対策をどう進める~」が放映されました。
10月から始まった「幼児教育と保育の無償化」。子育て世代の負担を軽減することで少子化対策につなげようと、多額の予算があてられる。保護者からは、「無償化をきっかけに働きに出られるようになった」など、歓迎の声があがっている。その一方で、保育の現場からは、「保育士不足なのに預かる子どもが増えて手が回らない…」という戸惑いも。また、税収が多い一部の自治体では、無償化にともなう費用を負担する必要があり、これまでのサービスの見直しを迫られるケースも出ている。“幼保”無償化から2ヶ月。いま何が起きているのか。可能性と課題を考える。
要旨を文字に起こしました。
【冒頭】
・保育所の申込が殺到
・保育士不足で対応が追いつかない
・自治体の住民サービスに影響も
・無償化をきっかけに働き始める母親が増えている
・財源は約8000億円(国、自治体の合計)【川崎市内の保育施設】
・延長保育の利用者が大幅に増えている、延長料金を払ってでも働いた方が良いと言う判断
・とある保育所での延長保育利用者が40人から60人へ増えている
・延長保育時の保育士はそのまま、子供に目が届かない
・園児が多いと様々なトラブルが発生する
・今まで出来ていた事が出来ず、保育の質が落ちている
・保育士を増やして欲しい
・保育士の有効求人倍率が3倍超え、全職種平均の倍
・ハローワークでは見つからず、派遣会社を利用している
・紹介料は1人あたり最大100万円
・給与や労働条件で折り合う人はなかなか見つからない
・保育所のサービス維持に頭を悩ませている
・保育現場は混乱している、子供達に影響する【NHKへのメール】
・低賃金、事務処理、疲弊する毎日
・無償化で幼稚園の預かり保育が増え、仕事が倍増
・多くのメールが窮状を訴える保育士から【関西の保育所で働く20代保育士へのインタビュー】
・手取りは166,730円、責任に見合わない待遇
・頑張り続けるには限界がある
・無償化後、夜遅くまで預ける保護者が倍増
・余裕が無い保育士、保育の質はガタガタ、忙しいからピリピリ、子供に辛く当たってしまう
・退職を考えている【岡山市】
・待機児童数が全国で4番目に多い
・今年10月の入園希望者は、前年同月比118%
・保育士が確保できず、待機児童が解消するメドが立っていない
・こじかこども園の定員は135人、保育士が7人足りずに縮小運営を行っている
・賃金は市内トップクラス(月額20万円+各種手当+賞与4.5カ月分)、残業削減等の待遇改善を進めている
・昨年までは新卒応募があったが、今年は応募ゼロ
・保育士養成校に県外から数多くの求人が届いている、県を跨いでの争奪戦
・ここ5年で57施設を新設、5,000人分の受け皿を整備した
・約3割の施設で保育士不足、縮小運営中
・減少中だった待機児童が増加に転じた、来年の待機児童ゼロは困難に
・来年4月の入所申込に保護者が殺到
・「幼稚園も落ちた」「全然入れない」という声
・園長会が保育士確保支援制度の充実を市へ要請、市は補助金の継続や増額を検討【スタジオ】
・取材した保育園では大きな変化が起きている
・待機児童や保育士不足と言った影響が大きくなっている
・高齢者に偏っていた資源配分を若年層に切替
・教育の外部性、若い世代への投資は社会全体にメリットが
・保育士不足に対しては処遇改善を実施、来年度までに32万人分の受け皿を計画している(内閣府)
・処遇改善が保育士に反映されていない(園で止まっている)という声も
・90万人分の受け皿が必要という指摘も【埼玉県和光市の財政負担】
・保育関連費用は歳出トップ、10年前から倍増
・来年度の無償化費用は最大3億円
・国は消費税の増収分や交付税による補填で賄う計画だが、財政が豊かな自治体は補填されない恐れが
・財政課の試算では1億8,000万円の不足、市の一般財源で補わざるを得ない
・消費税増税分を老人や障害者向けサービスに充てる余裕は皆無
・少子化と高齢化に同時に対応する難しさ【待機児童数全国ナンバーワンの世田谷区】
・無償化で3億円の赤字と試算
・待機児童対策も待ったなし、無償化との矛盾に直面している【スタジオ】
・和光市は保育の質を重視していたが、一部予算を無償化に回した
・高齢者や障害者向け支出も無償化に回した
・保育施設の事務負担が重くなっている
・絵本や遊具が非常に少ない保育施設も多い、保育の質を高める財政支出が必要
・保育士の待遇改善も必要
従来は「応能負担による保育料」で保育需要と供給のバランスを辛うじて取っていました。しかし、無償化によって保育需要が著しく増加してしまいました。
無償化は超過需要を発生させます。バランスが壊れつつあるのが現状でしょう。
大阪市での2020年度一斉入所でも、保育需要(=申込)が大きく増加しています。無償化対象となる3歳児のみならず、成長してから無償化対象となる0-2歳児の申込も増加しています。
特に深刻なのは、延長保育の希望者の増加です。在籍園児数は認可定員による制限を受けますが、延長保育利用者数にはそういった制限は原則としてありません。
大幅に増加した延長保育児の保育により、忙しい保育所等がますます疲弊している構図です。お世話になっている保育所でも、延長保育利用者の増加を実感しています。
ただ、大阪市の小学校でのいきいき活動(学童保育の一種)は原則として午後6時までとなっています。
保育所在籍中は無償となった保育料+安い延長保育料金で済みますが、小学校入学後は時間制約(いきいき)ないしは民間学童等での高額料金負担を強いられます。
保育士不足も深刻ですね。どこからも「保育士が足りない」という声をよく聞きます。
岡山市の保育士養成校は、恐らくは広島県・兵庫県・大阪府等の草刈り場となっているのでしょう。
こうした中、関係者が頭を悩ませているのが「保育士の流出」だ。
岡山市内には約20の保育士の養成校がある。しかし、「毎年卒業する約900人の人材が、大きな町のある隣の兵庫県や広島県に流出してしまう」(高山会長)という。
とどまってもらうためにはインセンティブが必要。岡山市では平成29年~令和元年度の3カ年、私立保育園の保育士の給与を2%上乗せしている。
だが、自治体間の保育士獲得競争は年々激しさを増す。
神戸市は昨年度、「緊急プロジェクト」として市内の民間保育施設の保育士に、採用から7年間で最大140万円の一時金を支給するなどの事業を開始。大阪市は今年度から、府外から市内で新規採用された保育士に対し、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の年間パス購入費2万5千円や、帰省する際の費用を支給する取り組みを始めた。
https://www.sankei.com/premium/news/191213/prm1912130006-n1.html
保育施設は無償化による事務負担も負担に感じています。特に保護者から給食費を徴収する手間暇が重荷になっています。
いっその事、給食費は一定額を自治体が口座引き落としで徴収して各園に交付し、各園独自の上乗せ分のみを保護者から直接徴収する形式の方が良いかもしれません。小中学校での給食費の公会計と同じ考え方です。
自治体の財政負担も深刻です。今後は子供向け施策を削減したり、無償化の対象外である0-2歳児保育料を引き上げる自治体も現れるのではないでしょうか。
気になったのはスタジオで「幼児教育・保育無償化は若い世代への投資」と指摘している点です。
無償化はどういったメカニズムで「投資」となるのでしょうか。保育士や設備備品等を充実させ、保育の質を向上させる事こそが「投資」ではないでしょうか。
幼保無償化は、所得が高い世帯ほどメリットが大きい制度です。高所得世帯は浮いた金額を家庭外教育費等へふんだんに投資できますが、低所得世帯は無償化による恩恵は大きくありません。
「幼保無償化による格差拡大」については、番組は全く触れていませんでした。制度に内在する深刻な問題です。非常に残念な点です。
無償化は本当に少子化対策に繋がるのでしょうか。私は懐疑的です。重要なのは若年困窮層への経済・雇用支援、子育て世帯に対しては中等・高等教育への支援だと感じています。
中学校以降の教育費は既に頭が痛い問題です。学習塾・受験代・大学等の学費や生活費、十分な額を準備できる気がしません。
教育費は多子割引が効かないのも辛いですね。
確かに幼児教育無償化は、高収入の世帯の方が得をしますが、他では収入が高いほど税金は取られるし、医療費無償化から外れたり、高校の無償化から外れたりと、むしろ損している、幼児教育無償化は、沢山払っている税金の分をやっと取り返せている様なもんだという沢山の意見を聞き、納得しています。
0歳1歳だと一人あたりの保育費は6~7万にもなるし、お金稼ぐにはそれなりの出費もあるわけで。
世帯年収が1500万位までだと、上記の様に控除が無くなると、子供が2人もいたら、贅沢出来ないです。