新設される保育所等で不可欠なのは「保育士」です。しかし、どの地方も保育士採用に苦戦しています。

保育士需要(施設からの求人)に対して供給(有資格者の応募)が不足しているのに加え、全国各地の保育士を東京が吸い上げる構図が読み取れます。

「東京が先回りしています」。大阪市の保育企画課長、赤本勇(62)は職員の報告に驚いた。

大阪市は今夏から職員が九州や四国の保育士養成学校などに出向き、大阪市内で働いてくれる保育士の採用活動を始めた。職員は行く先々で「東京の自治体の方が来ましたよ」といった指摘を耳にした。

 大阪市は「保育士ウェルカム事業」を用意し、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の年間パス購入補助などが人気。だが赤本は「保育士争奪戦は激しい」と気を引き締める。

東京のリクルート攻勢は激しい。世田谷区は札幌や新潟など7都市で面談会を開き、16年から累計120人以上が参加した。「上京を考える人や、もともと東京に住んでいたが夫の転勤で地方にいる人などが参加している」(世田谷区保育課)

保育士の伊藤美紀(仮名、26)は7月27日、週末を使って東京を訪れた。地元の山形県内で働くが、日ごろから東京の状況を調べている。都内の保育士の平均賃金は28万7000円(2018年)と全国平均より5万円以上高い。「給料や住宅補助の手厚さを考えると、やっぱり他は東京にはかなわない」。都内への転職を考えている。(以下省略)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49634010Q9A910C1EA1000/

「保育士ウェルカム事業」は以前にご紹介しました。

【ニュース・1/23追記】USJ年パス・帰省費も補助 大阪市が保育士確保大作戦

大阪市は他にも様々な補助事業等を行っています。しかし、東京の好待遇と「都会の魅力」に抗うのは容易ではありません。

また、同一地域間の保育所間での転職も盛んです。圧倒的に不足している資格職なので、転職するのは容易です。転職を機会に待遇アップする方も多いでしょう。

若い女性は都会を目指す

少し別の話となりますが、実は全国各地から東京大阪といった都心部へ「若い女性」が大量に転入しているデータがあります。

少子化が止まらない。7日に発表された2018年の合計特殊出生率は、3年連続の低下となった。晩婚や非婚化が原因とされるが、見落とされている論点がある。都市にばかり日本の女性が集まる「女性の都市化」だ。中でも18年の東京都への女性の転入超過数は4万8千人。男性の転入超は3万4千人で年々その差は開きつつある。出生率は低いものの、働きやすい都市に女性が集中し、少子化に拍車をかけている。

転入超過数はその地域に入ってきた人が、出て行った人よりどれだけ多いかを示す。

総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、東京への女性の転入超過数が男性を上回ったのは、近年では09年からだ。その時点では転入超過の男女差は約3500人だったが、18年には約1万4千人にまで広がった。地方から来た女性が東京にとどまる傾向が強まっている。

全国で18年に女性が転入超過となったのは東京のほか、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、愛知県だ。これら転入超過数を合算し、内訳をみると、東京(56%)、神奈川(13%)、埼玉(11%)、千葉(10%)と、9割を首都圏が占める。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO46258790Y9A610C1L92000/

大阪に20代女性が集まり始めた。2019年1~6月の大阪府への転入超過数は前年同期に比べ7割増えた。そのうち20代女性の超過数が全体の9割弱を占める。これまでも大阪に転入する若い女性が目立ってきたが、インバウンド(訪日外国人)の増加を追い風にホテルや飲食店などが採用活動を全国に広げる動きが流入に拍車をかけているようだ。

総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、1~6月の大阪府への転入超過数は6004人だった。転入数では20代の男性の占める割合が最も高く、次に20代女性が続く。ただ男性は転出数も多いため、転入超過では20代女性が5219人と最も多く、足元の10年間では最高水準だ。

長らく人口流出が続いていた大阪府では11年以降、転入超過の傾向が続いている。特に20代女性は安定して転入超過が続き、全体を下支えしている。18年でみると、兵庫県、京都府、奈良県の関西圏のほか、福岡県など西日本からの20代女性の転入が目立つ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48438250Z00C19A8LKA000/

この中には「地方出身で、東京や大阪等で保育士として就職した」方も含まれます。お世話になっている保育所でも少なくありません。

それでも保育士が不足しているのが都心部の現状です。

働きやすく、給料が良い場所へ人間が移動するのは歴史の常です。都心部の自治体や保育所が地方から保育士候補生を引き抜く動きは、ますます加速しそうです。

一方、流出する地方は堪った物ではないでしょう。ただ、対策は難しいとしか言い様がありません。