よみうりテレビが大阪市の「隠れ待機児童」問題を取り上げています。

 大阪府は23日、今年の待機児童数を発表した。大阪市は「28人」と、数字上は減っているが、取材すると“隠れ待機児童”の存在が見えてきた。

 大阪市淀川区。1歳と4歳、6歳の子を持つ専業主婦の上田さん(仮名)。末っ子が1歳になり、仕事を始めようと、保育所の入所を申し込んだ。「子どもを(保育所に)入れていないと、仕事で採用してもらえないので、まず保育園にと思ったのですが…」

 上田さんは近所の幼稚園に通う4歳の姉と一緒に送り迎えができる近くの保育所の希望を伝えた。4か所の希望を出したといい、「(4歳の姉を)幼稚園に送って、(1歳の弟を)同時に送る事を考えたら、遠い保育園は無理だったので」。しかし、希望する保育所には入れないと、今年2月、区役所から通知を受けた。それでも、息子は「待機児童」としては数えられないという。

 育休を取得している場合や求職活動中ではない場合・条件をしぼって保育所探しをしていた場合は「待機児童」ではなく、入所保留扱いのいわば“隠れ待機児童”にあたる。上田さんの場合も家の近くの保育所を条件にしているため、待機児童ではない、というのだ。

 大阪市の“隠れ待機児童”の数はここ5年、2000人台を推移していて、28人の待機児童の約80倍の2295人。子育ての情報を発信している「ママそら」関西支部の桑原あずさ代表は、こうした“隠れ待機児童”の問題についての悩みを、よく聞くという。

 桑原代表「徒歩や自転車で行ける範囲の保育園に預けることができないとか、兄弟と違うところになってしまうという声が一番多い。待機児童はゼロといっているところでも、実際は希望の保育所に行けていないので、希望を待っているお母さんは掲示されている数よりもっと多いと思う」(以下省略)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190823-00000072-ytv-l27

上記記事で指摘されている「隠れ待機児童2,295人」とは、H31一斉入所における保留児童数2,721人から転所希望426人を控除した数字ですね。

【H31保育所等一斉入所結果分析】(1)大阪市全体/在籍率は過去最高の42.9%に、新規入所決定率は低下

転所希望の多くは遠い保育所へ登園していたり、きょうだいが別の保育所等に入所しているケースです。転所希望も「隠れ待機児童」に含めるべきでしょう。

淀川区の1歳児は入所困難

それはさておき、上田さん(仮名)が住んでいる大阪市淀川区は、待機児童が深刻な地域の一つです。

特に「1歳児」は非常に厳しく、143人が一斉入所で入所できませんでした。保留率も30%を超えています。

【H31保育所等一斉入所結果分析】(4)区毎の入所保留率(1歳児)

【H31保育所等一斉入所申込分析】(5)淀川区/1歳児の4割、2歳児の3割が入所保留か


大阪市の保育所等入所調整基準において、求職中の方の点数は低く抑えられています。既に仕事に就いている方の入所を優先するという判断からでしょう。

この記事を読む限り、上田さん(仮)が希望した保育所数は過少く、かつ入所希望者が多い保育所を記入したのではないかと想定されます。

淀川区では200点(フルタイム共働き)でも入所するのが厳しい地域や保育所等もありました。

もしも私が相談を受けていたのでしたら、「淀川区の1歳児入所は難しい。低い点数でも入所できる可能性が高い、地域型保育事業や企業主導型保育を検討しましょう」とお伝えしていたでしょう。

ただ、幼稚園は教育を目的とする施設です。保護者の参加を求める行事や諸活動も多いと聞きます。また、6歳児は小学校へ入学したばかりでしょう。

こうした事情を踏まえると、ここで1歳児を保育所等に預けて仕事を始めても、幼稚園や小学校の対応までこなすのは非常に難しいと感じました。事実上の「3か所保育」です。

西淀川区も年々困難に

淀川区の隣、西淀川区も年々保育所等に入所しにくくなっていると感じています。

 ところが、お母さんたちの思いとはかけ離れた実態も見えてきた。西淀川区に住む山根詩織さん。4歳と3歳の2児の母。娘は近所の認定こども園に入れたものの、3歳の息子は入所できる保育所がなく、日中は息子の面倒をみて、夫が帰ってきてから夜、工場で働いているという。「仕事から朝帰ってきたときは、2時間とか3時間しか寝てないので、その日は結構きついです」

 保育所に入れない理由の一つは、夜働いていることが作用していると話す。「区役所に行った時に、深夜働いているとお昼に保育できる状態だから、申請しても無駄と言われて諦めたんです。(入所を)待っている人も多いし、という対応だったので、じゃあ無理なのかなと」

区役所の説明には少し問題があると感じました。深夜労働していても、入所調整基準においては昼間に働いている方と同じ基準で点数化される筈です(別の内規があるのでしょうか)。

「仕事から朝帰ってきたときは、2時間とか3時間しか寝てない」とされているので、1週間の労働時間が少し短いのかもしれません。そうであれば、点数も低くなってしまいます。

西淀川区の担当者が「(点数が低いのだから)申請しても無駄です」と発言したのが真意かもしれません。

しかし、仮にそうであったとしても、この発言は大問題です。「無駄だ」と諦めさせるのでは無く、どうすれば良いのかを担当者が区民と共に考えるべきでした。

ただ、3歳児は選択肢が限られます。西淀川区で3歳児入所できる保育所やこども園は決して多くありません。H31一斉入所では新設保育所もなく、打つ手が乏しい状況でした。

大阪市は積極的に対策中、でも足りない

大阪市も保育所等を積極的に新設しています。しかし、それでも足りません。

最大のボトルネックは「保育士」です。

 この問題に対し、大阪市は保護者の要望をくみ取った上で、対策を講じたいと話す。大阪市こども青少年局保育施策部の環境整備担当、迫野京子課長「都心部では子どもに見合った保育所の入所枠がない。そういう必要なところに整備を進めていくことを考えていて、保育人材確保は非常に厳しい状態である。保育士が採用できれば入所枠を増やすことができる施設もあるので、保育人材確保はいっそう進めていく必要がある」

市内中心部(北区・中央区・西区・天王寺区等)での立地対策は、補助金の大幅な積み増しや減税等によって用地を確保しやすくなったと感じています。

ここ数年は時間貸し駐車場からの転用事例が多いですね。駐車場用よりも保育所の方が利回りが良いからでしょうか。

同様に保育士採用にも予算を積み増しています。ただ、他の自治体でも同様の対策を行っているのに加え、「企業主導型保育」に保育士を奪われているという話をしばしば聞いています。

多くの保護者が入所を希望しているのは「6年間通える保育所等」です。政策のちぐはぐさを感じています。