◆家庭の事情を素通り
四月から下の子を上の子と同じ保育所に入れられなかった市内のある主婦は、点数制による選考を「家庭の細かい事情を考慮してくれない。不親切な制度」と感じている。
上の子は障害があり保育時間が短く、通院なども多いため、下の子も同じ保育所の入所を希望した。障害児用の特殊な靴の購入や、専門医のいる遠い病院まで車で行くためガソリン代がかかるなど負担は大きく、仕事を探している。
だが、保育時間は七時間だけなので正社員は無理。時間の短いパートだとランクが低くなる矛盾がある。これまでは兄や姉が通園している場合は、弟や妹も同じ所に入りやすいとされていた。この主婦の場合もランクは一つ上がったが、障害児の介助に対する加点はなく、選考は有利にならなかった。「どこも大変だと思うが、障害児のいる家庭特有の事情は点数では示せない」と話す。
上の子が入所した際は児童福祉の観点から個別に判断がなされた一方、下の子はそうした判断がなされなかったと推測されます。
そうした判断がなく、かつ求職中であれば、名古屋市の入所選考基準表によるとGランクと評価され(きょうだい加算を含む)、希望する保育所へ入所するのは難しくなってしまったのでしょう。
子供がお世話になっている保育所でも障害児は数人おり、保護者が苦労されている状況は見聞きします。
一方、そうした児童や世帯に特段の配慮を行うと、点数順であれば入所できていた児童が弾き出されてしまいます。
両立するのが難しいケースです。
昭和区の会社員女性(39)は育児休業の終了が迫るが、長男(1つ)の預け先が決まらない。通勤に片道一時間かかるため、駅近くにある第一希望の保育所だけ申し込んだ。「区役所で何度も入所が難しそうなら教えてほしいと頼んだ。駄目なら他の園も検討したかった」と区の対応に不満を持つ。ランクは最高のAで指数の加点もあったので、他に入れる所があったかもしれないとの思いが消えない。
区によっては追加の希望がないか聞く所もあるが、昭和区は選考状況を知らせなかった。当面は長男が二歳になる十二月まで育休を延長する予定だが、後は退職するしかない。区内の認可保育所や家庭保育室は既に空きがなく、ビルの一室などに開設された認可外施設の利用も視野に入れ始めた。「親なら誰でも納得いく所に預けたいはず」と割り切れないでいる。
昭和区は市内中心部にほど近いいわゆる文教地区で、子育てがしやすそうな印象を受けました。
大阪市にたとえると西区に近い印象です。
区内の認可保育所や家庭保育室に空きが無いのも肯けます。
こうした地域で駅近くにある保育所は多くの方が入所を希望する一方、受け入れには限度があります。
入所が難しそうなら教える旨を区役所が事前に了承していたのであれば対応に問題がありますが、そうでなければお願いだったのかもしれません。
「絶対にこの保育所が良い」「ここしか通園できない」等の事情があれば第1希望のみを申し込む方法も考えられますが、そうでなければ複数箇所の保育所へ申し込むのが望ましく、それによる不利益も限定的でしょう。
大阪市の場合、どの保育所・年齢でもほぼ確実に一斉入所で入所する為には、兄姉加算を越える208点以上が必要だと考えられます。
「誰でも納得いく所に預けたいはず」なのには強く共感できます。
本来は皆が希望する保育所へ入所できるのが理想ですが、現実には極めて困難でしょう。
<点数制> 政令市で点数制を導入しているのは、横浜や大阪など14市(2013年度)。名古屋市は認可保育所に入れない待機児童が多く、「明確な基準を」との声を受けて3年前から横浜市の制度を参考に検討してきた。13年度に導入した大阪市では事前に意見を公募したが、名古屋市は「以前からあった基準を全市で統一して公表した。制度そのものは変えていない」(保育企画室)として、昨年8月の市議会教育子ども委員会に報告して実施した。
4月の入所希望者1万595人のうち、1月末の選考の結果、1168人が希望の所に入れなかった。
大阪市の場合、4月入所希望者約1万4000人の内、少なくとも2000人程度が入所できなかったと推測されます(詳細はこちら)
遅くとも5月中には発表されると考えられます。
点数制にはメリットもデメリットもあります。
また、児童福祉の観点から、特段の判断が行われる場合があります。
結果が判明してから慌てても遅いので、特段の事情あったり配慮が必要な方は、早め早めに区役所等に相談されるのが望ましいでしょう。