大阪市ウェブサイトに掲載されている「市民の声」には様々な意見や相談が掲載されています。

以前に「育休中に地域型保育を卒園予定だが、来春の保育所入所申込を拒絶された」といった旨の相談をご紹介しました。

【大阪市民の声】事実上の育休退園? 育休中に地域型保育を卒園予定、だが来春の保育所入所申込を拒絶された

似た様な事例が発生しています。

「第2子出産後に育休が取得できなかった場合、第1子は保育所を継続利用できないのか?」という相談です。

市民の声

第二子出産後の育休が取れなかった場合の、第一子の保育園継続利用についてです。

現状では第二子を出産する場合、育休を取得できれば期間限定ではありますが、第一子は継続的に保育園に通うことができる制度があると認識しております。

しかし、もし育休が取れなければ産前産後の期間の後、3カ月を休職中として預けても、5カ月で退園となってしまうと市役所で伺いました。その認識で間違いないでしょうか。

大阪市は基本的に6カ月から預けられる保育園がほとんどなので、通える範囲で5カ月の子供を見てもらえる保育園がありません。

基準を満たしていても育休を取れないまま退職を促す会社が多くあるのが現状です。この制度のままでは第二子を考えることが非常に難しく、同じように思っている方が大勢いらっしゃいます。

育休をとる基準を満たしているが、取れなかった方への救済処置を考えていただけないでしょうか。子供が通える月齢になり、保育園の入所が決まるまでは上の子は継続的に通えるように配慮していただくことは難しいでしょうか。

市の考え方

国の制度となりますが、保護者の育児休業期間中は、基本的には子どもを保育することができない場合には該当せず保育施設を利用することはできないものとしつつも、当該育児休業に係る子ども以外の子どもが休業開始時に保育施設を利用している場合であって、当該子どもの発達上、環境の変化が好ましくないと認められる場合には、継続利用することができるものとしております。

就労を事由として保育施設を利用し、産前産後期間中は出産を事由として当該保育施設を継続利用し、産後8週経過後に復職とならない場合には、新たに就労内定や求職活動などの保育事由が認められない限り、引き続き保育施設を利用することはできません。

産後8週経過後に求職活動を保育事由として当該施設を継続利用する場合、保育認定の有効期間は、法令上、求職活動を事由とした保育認定の開始日から90日を経過する日が属する月の末日までの期間と規定されています。

当該求職活動を事由とする保育認定の有効期間終了後、さらに求職活動を事由として保育施設の利用を希望する場合は、改めて保育認定申請及び保育施設等の利用調整申込が必要となり、当該施設の利用を希望する他の保護者の子どもを含めて利用調整(入所選考)を行うこととなるため、利用調整の結果によってはこの時点で退所となり、継続的に利用していただくことができません。

待機児童の解消に至っていない厳しい状況の中、必ずしも保育施設等を継続利用できるとは限らないのが現状ですので、ご理解いただきますようお願いいたします。

https://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000467451.html

第2子出産に伴って育休を取得できずに退職せざるを得なかった場合の取扱いです。

大阪市の見解は下記の通りです。

(1)(法定の)産前産後休業中(産前6週・産後8週)は出産を事由として保育所等を利用出来る。
(2)産後8週後以降は、求職活動を保育事由とした保育認定の開始日から90日を経過する日が属する月の末日まで利用出来る。
(3)それ以降も求職活動を事由として保育所等の利用を希望する場合は、再度の利用調整が必要(=一旦退所する扱い)。

非常に悩ましい内容です。

大阪市保育所等の利用調整に関する事務取扱要綱(調整規則)に当てはめた場合、大阪市の見解は正当です。保育認定事由に応じ、認められた期間内で保育所等を利用できるとしています。

一方でもやもや感もあります。「第2子出産という喜ばしい出来事なのに、第1子は保育所退所を余儀なくされる」という将来が待ち構えているからでしょうか。

育休取得拒否による不利益を押しつけるのはおかしい

本件に関しては、少なくとも相談者に何ら責任はありません。出産後は育休を取得し、勤務している企業等に復職した意向も読み取れます。

しかし、勤務先の一方的な事情によって、育休取得を拒否される可能性が極めて高いと感じています。

そもそも労働者が育児休業の取得を申請した場合、事業主は拒否できません。

質問
出産後,育児休業を取得しようと会社に申し出たところ,「規則がない」と受け付けてもらえませんでした。確かに就業規則には「育児休業」の記載はありません。休業することはできないのでしょうか。

回答
事業主は,対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには,これを拒むことはできません(「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第6条)。

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/work2/wn500094.html

事業主は育休拒否という法令違反を行おうとしています。

そして大阪市は、こうした外形を形式的に規則等に当てはめ、保育施設の継続利用を困難なものにしようとしています。

どうして育児休業を取得できない&保育所からの対処を強いられるという二重苦に遭わなければならないのでしょうか。そもそも「育休拒否」は、調整規則が想定していない事案です。

大阪市が行うべきなのは相談者に労働局等の相談窓口を紹介し、監督官庁による事業主への指導等を促す事でしょう。

また、何度も労働局が指導しても事業主が育児休業の取得を拒否して退職せざるを得なかった場合には、何らかの救済策が必要です。

産後間もない乳児を育てている母親が、すぐに再就職先を決めるのは難しいのが実情です。

育児休業を取得した場合に上の子が継続在園できる期間(原則として下の子が満1歳を迎える年度の年度末)を一つの基準とし、継続在園を認めるべきでしょう。

これを可能とする規定もあります。

保育利用調整基準には「児童福祉の観点から保育の必要性が高いとセンター所長が認める場合」には、在園できるとする項目があります。

見解の中で大阪市は「制度」や「法令」という言葉を利用しています。しかし、制度や法令で保護されない労働者・保護者がいるのも実情です。

原則論にとらわれず、法令の枠内で柔軟に対応するのが望ましい姿ではないでしょうか。