レイモンド淡海保育園(大津市)に通う保育園児が散歩中に交通事故に巻き込まれた事件の続報です。

【ニュース・5/7追記】散歩中の保育園児の列に車、レイモンド淡海保育園(大津市)の2歳児2人が死亡、2人が意識不明

【大津保育園児交通事故・6/14追記】2人死亡・1人重体、運転手1名を釈放、横断歩道近くで信号待ち? 号泣する園長

遺族がコメント公表

亡くなった原田優衣ちゃんと伊藤雅宮くんの遺族が、「取材を自粛して欲しい」旨の報道機関向けコメントを公表しました。

今回の事故で亡くなった2人の保育園児の遺族は、9日、警察を通じてコメントを出しました。

【原田優衣ちゃんの遺族 父親の原田学さん】
「青葉の候、各位ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さる2019年5月8日、滋賀県大津市にて残念な事故が起きました。
 その中で、私共の娘、原田優衣が今回の不慮な事故に巻き込まれ、わずか2年10ヶ月という短い人生に幕を閉じました。
 レイモンド淡海保育園におかれましては、短い期間ではありましたが娘のかけがえのない笑顔を見守ってくれた事には感謝の意しかなく、今回の事に囚われることなく今後も小さな命に寄り添い、共に歩み続けることを娘もきっと望んでいます。

 私共家族としても、家族5人で苦楽を共にし、普通に過ごせると思っておりましたので、今回、娘優衣の突然の逝去に関しては驚きを隠せず、現実とは思えませんでした。
 然しながら、今自宅で、話をせず、いつも明るく、いたずらっぽい笑顔も見せることもなく、ずっと寝ている娘を見ていると、徐々にではございますが、私共としても娘の死を受け入れざるを得ません。1日たつ毎に家族としても胸が張り裂ける程の深い悲しみに包まれております。

 現在優衣を含め、家族5人で最後の一家団らんを過ごしております。報道関係各位におかれましても、自宅周辺、近隣葬儀場等における取材・撮影等はお断り致します。
 私共としても安らかに娘を旅立たせようと思っております。優衣は2年10ヶ月しか親より愛情を受けておらず、最後に私共夫婦・姉弟よりたっぷりと愛情を注ぐ式にしたいと思います。

 報道関係各位におかれましても、何卒私共の心情を察っして頂き、御配慮の程よろしくお願い致します」。

【伊藤雅宮くんの遺族】
「私たちは、この度の突然の事故で大切な家族を失い、深い悲しみを受けています。
 このような私たちの心情をお察しいただき、自宅や葬儀会場での取材や写真撮影をご遠慮いただきますようお願い申し上げます」。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20190509/2060002600.html

https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20190509000185

突然の事故で大切な家族を奪われ、さぞ心痛でしょう。言葉がありません。

一読者・一視聴者として知りたいのは、遺族や負傷した児童・家族が悲しみに暮れる様子ではありません。

悲惨な事故が起きた当時の様子と原因、事故を繰り返さない為の前向きな対策、そして十分ではない人員で多くの子供を大切に保育している保育施設の現状です。

右折車両による前方不注意か

事故当時の様子や原因等は解明が進んでいます。北上右折しようとした車両の前方不注意が濃厚です。

8日、びわ湖沿いの大津市の交差点で、歩道で信号待ちをしていた散歩中の保育園児と保育士合わせて16人の列に車が突っ込み、いずれも2歳の園児2人が死亡し別の園児1人が意識不明の重体となっているほか13人が重軽傷を負いました。

警察によりますと、事故は、道路を直進していた軽乗用車が交差点を右折しようとした乗用車と衝突し、はずみで歩道に乗り上げたということです。

警察は乗用車を運転していた新立文子容疑者(52)を逮捕し、過失運転致死傷の疑いで調べています。

これまでの調べに対し新立容疑者は「前をよく見ずに右折した」と供述しているということですが、さらに「衝突してから相手の車に気付いた」などと供述していることが警察への取材でわかりました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20190510/2060002602.html

 大津市で8日に車が保育園児らの列に突っ込み、園児2人が死亡、14人が重軽傷を負った事故で、衝突した2台の車のブレーキ痕が現場付近になかったことが9日、滋賀県警大津署への取材で分かった。同署は、右折中に対向車と衝突した乗用車の女(52)=大津市一里山3丁目、自動車運転処罰法違反(過失傷害)容疑で逮捕=が、衝突まで対向車の存在に気づいていなかった疑いがあるとみて調べている。

 同署によると、女は、調べに「衝突音で事故に気づいた」「前をよく見ずに右折した」という趣旨の供述をしている。北から直進してきた軽乗用車の無職女性(62)は、任意の調べに「相手の車が止まってくれると思っていたが、右折したので、とっさにハンドルを切ったが衝突した」と話しているという。

https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20190509000186

北上右折した車の運転手は、南下する車の存在に接触するまで気づかなかったそうです。

前方を右折する車の後を追う事に集中し、対向車線を直進する車が存在する可能性が消し飛んでいたのでしょう。

マンション1階に保育所

事故に遭った児童が通っているレイモンド淡海保育園は、マンション「メルシー瀬田」の1階部分に入居しています。

1階部分には、同じ運営法人(社会福祉法人檸檬会)が経営する「レイモンド・インターナショナルスクール淡海」も入居しています。

では、このマンションに保育所を設置した理由はどこにあるのでしょうか。

大阪や京都と比べ、滋賀県は土地に余裕があるイメージがあります。保育所が接する幹線道路から一歩入ると、一戸建て・マンションと農地が混在する地域が広がっています。大阪市中心部の様に土地取得が非常に難しい、といった状況は窺えません。

同法人が運営する保育所一覧を見ても、マンション等に入居している保育所は一部に限られています。大半の保育所は、独立した園舎を建築して運営されています。

マンションに入居する保育所は、様々な活動が制約されてしまうのが実情です。大きな音が出る活動、園庭を利用した野外活動等は難しくなってしまいます。

同マンションを選んだ理由の一つとして推測されるのは、北隣に児童遊園地がある点です(ストリートビューにも掲載)。ここを園庭代わりに利用すると考えたのでしょう。

また、独立した園舎を建築するのと比べると、マンションへの入居は初期費用や準備期間を大幅に圧縮できます。

園舎を建築するには、準備期間を含めると少なくとも半年以上が必要です(土地の手当てを含めると1年程度)。一方、マンションの改装工事等は3カ月程度で行えます。

しかし、この地域ですぐに保育所へ転用する土地を見つけるのは容易ではありません。

大阪市内で新しく設置される保育所の大半は、貸し駐車場が転用されています。しかし、この地域は非常に少なく感じました。大半の住居に駐車場が備えられ、貸し駐車場のニーズが低いからでしょう。

土地の一定部分を占めているのは農地です。しかし、農地を保育所へ転用するには、一般的に農地法の許可が必要とされます。許可を得るには時間が掛かり、地盤の改良工事等も要します。

この地域で保育所に適した土地を見つけるのは、意外に容易ではなかったのかもしれません(あくまで推測です)。

商業施設等が連なって交通量が非常に多い幹線道路沿い

反面、このマンションに保育所を設置すべきでない理由は少なくありません。幹線道路の交通量が余りに多すぎます。

交通量が多い理由の一つは商業施設の存在です。

報道ではイオンモール草津の存在が報じられていました。

それだけではありません。保育園の南方はジョイフルやスポーツデポ、ロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズ、アヤハディオ、ナフコ、トライアルといったロードサイドショップが建ち並んでいます。

商業施設だけではありません。大津市浄水場やきんでんの営業所もあります。歩道を横切る車は非常に多かったでしょう。

ストリートビューで周囲を詳しく見たところ、保育所の南側から東方へ延びる道路は概ね歩車分離されていますね。幹線道路沿いの南方や東部の住宅街も散歩コースの一つだったのでしょう。

また、保育園のすぐ西は、琵琶湖で交通が遮断されています。西側(大津市中心部や京都)へ移動するには、事故現場のすぐ北にある近江大橋、もしくは南下して国道1号線で瀬田川を越えなければなりません。

園庭がなくマンションに入居している保育所では、どうしても園児の運動量が不足しがちです。児童が成長するには、身体をしっかり動かす必要があります。

この保育園からどこかへ散歩に出掛けるには、幹線道路沿いの歩道を歩かざるを得ません。

驚いたのは2歳児が幹線道路にある交差点を渡って散歩していた事です。

お世話になっている保育所では、2歳児はこうした散歩コースを歩きません。散歩で信号交差点を越えたのは、3歳児クラスの後半が初めてだったと思います。

日常的に幹線道路沿いを行動する散歩は全く気が抜けず、保育士に大きな負担が掛かっていたと考えられます。

園児が死亡した事故が発生する以前に、ヒヤリハット事案は多発していなかったでしょうか。

保育所に不適な場所

近年、全国で園庭がない保育所が増えています。これを問題視する意見もあります。

ただ、園庭がある保育所でも園外へは出掛けます。お世話になっている保育所は園庭がありますが、概ね2週間~3週間に1度程度の割合で近所を散歩しています。

一方、園庭が屋外活動を行うには近隣の公園等を利用しています。毎日の様に外出する保育所もあるのかもしれません。どのルートが安全か検討し、細心の注意を払って移動・活動しているでしょう。

しかし、どれだけ保育士が安全に配慮しても、防ぐのが難しい事故があります。本件事故がそうでした。

問われるべきでは保育士の行動や散歩の是非ではありません。

交通量が非常に多い幹線道路沿いに保育所を設置した運営法人、そしてこれを認可した大津市の判断ではないでしょうか(記者会見で訊ねて欲しいです)。

「様々な選択肢や事情からここが適当と判断した」という主張も理解できます。でも当時、駅から離れた幹線道路に沿ったここ以外に選択肢はなかったのでしょうか。

念の為に付言しますが、あくまで最大の責任は右折しようとした自動車の運転手にあります。

それと比べれば、南下した車の運転手、保育士、保育所、運営法人、大津市の責任は僅かです。

それでも「どうしてもここに保育所を?」という思いは消えません。大阪市内で100か所以上の保育所等を見た経験からの疑問です。