子育て世帯に大きな影響を及ぼす項目を取り上げます。
3歳児幼児教育無償化
4-5歳児に加え、3歳児の教育費相当部分が無償化されます。
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000457673.html
具体的には幼稚園や認定こども園1号の保育料は全面無償化、保育所や認定こども園2号は従前の約半額(教育費部分が無償、保育費部分は応能負担)となります。
ただし、平成31年10月からは全国一斉に「3-5歳児保育料無償化」が始まります。保育料部分も無償化される予定です。
一方、これと同時に、保育所等でも全年齢で給食費等が実費徴収(月額5000円程度?)される見通しとされています。差し引きすると家庭負担は軽減されるでしょう。
保育所40施設・地域型保育事業39施設を整備予定
新年度も多くの保育所・地域型保育事業が新設される予定です。
民間保育所等整備事業
2020年4月時点の保育ニーズ見込みに対応する入所枠を確保するため、2019年度(平成31年度)予算で、認可保育所や地域型保育事業所等の創設などにより、新たに3,770人分の入所枠を確保します。
認可保育所等の創設 40か所 2,912人分
地域型保育事業所の創設 39か所 741人分
認可保育所等の建替整備 6か所 117人分http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000457674.html
指摘すべきなのは「認可保育所等の創設が重視されている」という点です。
実は平成30年度予算では、認可保育所の創設が36か所計画されていたのに対し、地域型保育事業は実に70か所が予定されていました(詳細はこちら)。保育所では無く、地域型保育事業の拡充に重点が置かれていました。
しかし、平成31年度予算案では各40か所・39か所とされています。施設数ベースではほぼ同数、認可定員ベースでは保育所が約4倍となりました。
保育所等への入所を希望する大半の児童は、6年保育を行う保育所を第1希望としています。地域型保育事業の入所希望者は決して多くありませんでした。
市民ニーズを踏まえて地域型保育事業の拡充ペースを落とし、相対的に保育所の新設を重視したのでしょう。適切な判断です。
新採保育士にUSJ年間パスポート?
マスコミで大きく取り上げられ、批判も大きいのが「保育士ウェルカム事業」です。
保育士ウェルカム事業【新規】
他府県から保育士を積極的に呼び込むため、他府県から大阪市内に転入し、市内保育所等で雇用された新規採用保育士に対して、帰省にかかる費用や市内遊興施設の年間パスポート購入費などに相当する費用を保育所等が福利厚生の一環として支給した場合に、保育所等に対し2年間補助金を交付します。
近畿圏外からの保育士については、一人あたり補助上限85,000円(年額)
近畿圏内(府外)からの保育士については、一人あたり補助上限45,000円(年額)http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000457674.html
当サイトでも以前に大きく取り上げました。
全ての新採保育士が対象ではありません。帰省費用・年間パス購入費に相当する費用を保育所等が支給した場合に限り、大阪市が保育所等へ交付するものです。
果たしてどれだけの保育所等が同制度を採用するのでしょうか。「入職したら、2年分の帰省費用・USJパスポートを支給します」との謳い文句が、どれだけの学生に届くのでしょうか。
また、大阪市では若手保育士の離職率の高さが問題視されています。
さらに、若手保育士の離職率の高さが人手不足に拍車をかけている。
大阪市では17年度に約350人いた1年目の保育士が、翌年度には約250人に減った。「他の自治体との引き抜き合戦が激しいことに加え、現実に職に就くと、仕事がつらいと感じる若手が多いようだ。この2つが主な原因になっている」
お世話になっている保育所でも、働き始めて間もない保育士が年度途中に退職していました。
しばしば「多くの業界では3年で3割が退職する」と言われていますが、1年で3割が退職するのは尋常ではありません。原因究明が急務でしょう。
学力向上
全国屈指の学力の低さを誇る大阪市は、形振りを構わず学力向上を講じています。
具体的には学力等に課題を有する(=学力テストの点数が振るわない)学校への指導員の配置拡充、及び学校外での指導施策に注力しています。
学校力UP支援事業
学力等に継続して課題を有する学校(学校力UP支援校:小学校41校・中学校29校、うち9校は大学・行政機関連携モデル校)の複合的課題の解消に向けて重点的に支援しています。
学校の学力等の向上に向けた取組の支援を行う学校力UPコラボレーターを17名増員し、配置日数を拡充します。
・学校力UPコラボレーターを17名増員
2018年度(平成30年度):35名 → 2019年度(平成31年度):52名・配置日数の拡充(1週間1校あたり)
2018年度(平成30年度):1.5日または2日 → 2019年度(平成31年度):2日または3日・学校力UPコラボレーターと連携し、放課後や長期休業等における補充 学習を支援する学力向上支援有償ボランティアをのべ140名を新たに配置(各校2名配置)します。
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000457683.html
学校力UP支援校は公表されていません。ただ、対象校は学校日記に「学校力UP支援員が指導を行った」等と記載されている事が多いです。
また、各小中学校の学力テストの結果を掲載している大阪市立学校データベースから、容易に推測できます。
学習習慣の定着
・生活困窮世帯の小中学生へ学習支援を実施〔淀川区、阿倍野区〕
・学習習慣の定着や学習意欲の向上のために、小学校の放課後等に学習支援を実施〔都島区、福島区、此花区、浪速区、住之江区〕
・家庭訪問型を基本に小中学生を対象に学習支援や登校支援を実施〔大正区〕
・放課後課外授業の参加者を大学生等による悩み相談につなげ、相乗効果により基礎学力の向上と自己肯定感の醸成を図る〔生野区〕
・中・高生を対象に様々な職業従事者と交流し、将来ビジョンの意識と経済的自立に向けた支援などを実施〔旭区〕
・こどもの居場所への学習支援員の派遣による学習支援を実施〔天王寺区、旭区、住吉区〕
・学習状況等の課題を有する小中学校への総合的な支援体制を強化し、学校力UPコラボレーターの配置を増やすとともに有償ボランティアを配置〔教育委員会事務局〕http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000457675.html
大阪市の学力テストの結果が低迷する原因の一つとして、長年に渡って「学校外での学習習慣が定着していない」が挙げられています。
外で働いている親が多くて家庭で学習指導できない(保育所出身世帯は外注する家庭も多い)、自宅が狭くて落ち着いて学習できない、親の学力が低くて指導できない、等と指摘されています。
小学校ですら児童の学力が二極化していると感じます。日々の宿題を授業中に済ませてしまう子供もいれば、自宅で1時間掛けてもできなお子供もいるそうです。
学力は日々の積み重ねです。早期に学習習慣を定着させ、知識を積み上げる事が重要でしょう。
増改築、中之島小中一貫校・堀江小学校分校を新設
北区・中央区・西区の児童急増が加速しています。ようやく危機感を頂いた大阪市は、矢継ぎ早に対策を打ち出しています。
児童・生徒の急増に伴う教育環境改善
市内中心部では、人口の都心回帰により、児童・生徒数が急増する一方で、校地狭隘などの理由から従来の手法により対応を行うことが困難な学校もあるため、2017年(平成29年)5月に設置した「市内中心部児童急増対策プロジェクトチーム」の議論を踏まえて、北区、中央区、西区の小・中学校において教室不足等が見込まれる学校の校舎増築等を実施しています。
児童・生徒の教育環境を考慮した整備手法として、敷地が狭隘な学校においては、増築校舎の高層化により可能な限り運動場面積を確保するとともに、中・長期的な児童・生徒数の推計により、今後も学級数の増加が見込まれる場合は増築校舎の1階をピロティ化し、将来、教室転用することにより継ぎ接ぎ増築の抑制を図ります。
また、過大規模化が見込まれる「扇町小学校(北区)」及び「西船場小学校(西区)」とその進学先である「花乃井中学校(西区)」の教育環境の改善を図るため、北区中之島西部地域に新たな「小中一貫校」を2024年度の開校をめざして整備することとし、それにかかる基本設計費を計上します。
さらに、同じく過大規模化が見込まれる「堀江小学校(西区)」についても、高校再編後の跡地(西高校)を活用して新たな「分校」を2024年度の開校をめざして整備することとし、それにかかる基本設計費を計上します。
2019年度(平成31年度)実施内容
基本設計(2校)
中之島西部地域小中一貫校(北区)、堀江小学校分校(西区)
実施設計(3校)
堀川小学校(北区)、南大江小学校(中央区)、東中学校(中央区)
増築工事(7校)
扇町小学校(北区)、大淀小学校(北区)、玉造小学校(中央区)、中大江小学校(中央区)、開平小学校(中央区)、西船場小学校(西区)、堀江小学校(西区)http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000457684.html
大阪市中心部は学校等を新設できる土地が非常に少ないのが実情です。主に既設校を増改築して対応するのはやむを得ないでしょう。
また、中之島地区には小中学校がありませんでした。扇町小学校や西船場小学校等、やや離れた地域への通学を余儀なくされていました。ここに小中一貫校を設置するのは妥当です。
強いて言えば、中之島地区には保育所もありません。一貫校の一角に保育所(もしくはこども園)が設置されれば、多くの子育て世帯が喜ぶでしょう。
一方、堀江小学校の分校設置は不可解です。本校と分校、合計で2000人近くに達する見通しです。
分離新設校を設置するのが筋でしょう。大阪市会はどう反応するでしょうか。
こども相談センターの機能強化
こども相談センター(児童相談所)の機能も強化します。新システムによる情報一元化、相談センターの森ノ宮から芦原橋への移転が計画されています。
こども相談センターの機能強化
児童相談等システムの開発
児童相談等を実施する区役所とこども相談センター間の情報共有による児童虐待防止体制の強化(早期発見、早期対応等)を実現するため、母子保健サービス情報、子育て支援サービス情報、手帳情報等が集積されている「総合福祉システム」を活用し、「児童相談等システム」を開発します。虐待情報とDV情報の一元管理等するシステムを開発することで、虐待相談・DV相談に対して適切な評価・分析を行うことが可能となります。
こども相談センター(森ノ宮)建替え
児童相談所の機能強化にかかる国の動きに基づいた、こども相談センター一時保護所に求められる環境や設備の改善として、原則として個室対応、最大6人までのユニットケア、家庭仕様のトイレ・浴室の整備、開放的環境の整備が必要です。
現こども相談センターは、1972年(昭和47年)から建築され、2010年(平成22年)からこども相談センターとして使用しています。構造上、個室化に向けた改修が実施できず、老朽化が著しく維持管理等に多額な費用が見込まれるため、もと浪速青少年会館(浪速区)に建替え移転します。
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000457676.html
両者とも必要不可欠な機能です。子供を守り、虐待と躾の狭間で悩んでいる家庭を手助けする制度が重要です。
2/18 13時から審議開始
これらの予算案は、2月18日(月)13時から開催される大阪市会教育こども委員会にて審議されます。
インターネットでも同時中継されます。ご興味がある方は、是非お聞き下さい。