———
(9/21補足)
第3回ラウンドテーブルの議事要旨が公開されました。
http://www.city.osaka.lg.jp/nishi/page/0000447658.html

本ページは上記議事要旨を読む前に作成した物です(近日中に議事要旨を反映したものに更新する予定です)。
———

タイトルのカギ括弧部分は、堀江小学校ラウンドテーブル(教育環境課題検討部会)に出席した委員の発言をまとめたものです。唖然としました。

児童数が1000人を優に超え、近い将来には2000人近くに達すると予想されているのが堀江小学校(西区)です。既に学校運営等で大きな支障が生じており、何らかの対応が迫られています。

地域住民・保護者・区役所・教育委員会等で構成される堀江小学校ラウンドテーブルに置いて、「統合再編される市立西高校跡地の一部に、堀江小学校の地域分校を設置する」という意見に集約されました。

【9/20追記】大阪市立西高校跡地に堀江中学校が移転、かつ堀江小学校の地域分校を設置か

具体的にはあみだ筋以東に居住している児童は現堀江小学校(本校)に、以西の児童は平成36年度から堀江小学校地域分校に通うとするものです。

Download (PDF, Unknown)

「地域分校」という選択は、果たして妥当な物なのでしょうか。同ラウンドテーブル等の議事録や関連資料から、様々な側面を検討してみました。

地域分校とは

地域分校とはどういう学校なのでしょうか。大阪市の過去の事例では「特定学区内において、特定地域に居住する児童・生徒のみが登校する分校」と定義できそうです。

過去には分離新設校を設置する前段階として設立されました。その後、分校はそのまま独立校へなっています。

以前から堀江小学校の過密問題を観察していましたが、「地域分校」という考え方は唐突に出てきました。そこで、議論の流れを過去の議事録・資料等から洗い直しました。

過大化対策は喫緊の課題(吉村市長答弁、H29.3.1市会本会議)

・西区の堀江地域においては、小学校の過大校化への対応や中学校の狭隘化対策が、まさに喫緊の課題でありますが、近隣に新たな学校用地を確保することは極めて困難な状況にあります。

・そこで、西高等学校の校舎や広い用地を活用し、狭隘で増築が困難な堀江中学校を移転させるだけでなく、あわせて堀江小学校も西高等学校跡地に分離していくという、小学校、中学校、高校という枠組みを超えた新たな手法で、教育委員会には抜本的な対策を講じてもらいたいと考えています。

・今後、教育委員会から高校再編や小・中学校の教育環境改善の具体案が出されれば、その実現に向けて、私自身もしっかりと支援していきたいと考えています。

堀江小学校の過大化・堀江中学校の狭隘化に対し、抜本的な対策を求めています。現在の校区・敷地・児童生徒数は下記の通りです。

これを受けて、第1回ラウンドテーブルが開催されました。

分離新設か分校か(第1回ラウンドテーブル、H29.5.24)

西区役所から配布された資料には、「分離の手法として、分離新設または分校設置」と記載されています。それぞれのメリット・デメリットや直近事例も紹介されています。

これに対し、ラウンドテーブルでは様々な意見が噴出しました。

・堀江小学校を分離するには、二つのポイントがあり、分離新設か分校設置かという手法に関すること、具体的な児童数のシミュレーションということに関して、メリット・デメリットを考えていく必要がある。

資料にあるメリット・デメリットは、学校の立場からしか書いていない。学校は地域あっての学校なので、もっと色々なメリット・デメリットがある。それをこれから議論していくべき。学校は地域に根を下ろしており、地域のシンボルにもなるし、コミュニティの拠点でもある。

・分校のメリットとして、学校の過大規模状態が終息すれば分校を解消して元に戻せると資料に書いてあるが、堀江地域はそうなるのだろうか。先のことを考えたら分離新設のほうがいいかもしれない。

・状況をみながらという考えもある。まずは分校としておいて、状況によって分離校にする。

・学校が二つに分かれることによって何か問題が起こった時でも、分校なら、地域が一体で支えていける。分離新設となれば、なかなかそうはいかないかもしれない。

第1回ラウンドテーブル議事要旨より

上記意見で注目すべきなのは2番目(太字部分)です。「学校は地域あっての学校」「地域に根を下ろしている」「地域のシンボル、コミュニティの拠点」とし、区役所案を痛烈に批判しています。

次回のラウンドテーブルは平成29年9月以降に開催される事となりました。しかし、実際に開催されたのは、1年以上後の平成30年7月26日でした。

この間に市長をトップとする「大阪市内中心部児童急増対策プロジェクトチーム会議」が成立し、約20年先までの小学校児童数等を推計して議論が行われました。

市立西高を再編、敷地の活用へ(第1回~第3回チーム会議)

第1回会議では西高校跡地の活用が取りざたされました。

そして第3回会議では、「堀江小学校につきましても、2022(H34)年までには、教室不足及び、過大規模化が見込まれ、以降も40学級以上の規模で推移することから、高校再編後の跡地(西高校)を活用し、分校等の設置を検討してまいります。」との発言がありました。

<主な質問事項>

(質問) 西高校の移転が議論の前提となっており、移転予定が2022(平成34)年4月とのことだが、堀江小学校の対策として間に合うのか。移転の前提が崩れた場合の対応はどうするのか。
(回答) 西高校を含む高校の再編整備については、教育委員会の方針としては既に確定しており、移転先の校舎整備工事も進行中である。2022(平成34)年の高校再編が遅れることのないように考えている。

西高校用地での校舎整備となると、校地面積等から考えて、いわゆるオールイン型の、体育館やプールも併設した従来よりも高層の校舎を建てることになる。設計・業者決定・工事期間を考えると最短でも6年はかかると見込んでおり、2024(平成36)年度開校を目指している。このスケジュールでいけば、堀江幼稚園用地に増築する校舎で対応可能と見込んでいる。

(質問) 堀江中学校が西高校用地へ移転するという話だが、その堀江中学校の跡地に堀江小学校が分離して移転していくのか。
(回答) そうではない。堀江中学校が西高校用地へ移転するのと併せて、堀江小学校も西高校用地に新しい小学校校舎を建てて分離していく計画。

(質問) 堀江中学校の跡地は何に使うのか。
(回答) 今は何も決まっていない。どのように使うかは今後の話である。

第2回堀江小学校ラウンドテーブルでの説明内容より

ここで言う分校とは、「地域分校」を指していたのでしょうか。

原則として、高校の建物は小中学校に流用できません。階段の高さ等、規格が大きく異なるからです。

児童急増対策会議の議論を受けて、第2回ラウンドテーブルが開催されました。

地域分校(初出)が既定路線に(第2回ラウンドテーブル、H30.7.26)

同会議では、「学校適正配置 学校形態によりメリット・デメリット」という資料が配付されました。分離新設・学年分校設置・地域分校設置という3パターンにつき、メリットやデメリットを箇条書きしたペーパーです。

Download (PDF, 104KB)

友渕小学校や常盤小学校で採用されている学年分校は、児童・保護者や学校に大きな負担が掛かってしまいます。分離新設校は地域関係とのデメリットが強調されています。

これに対し、地域分校は地域との関係が継続され、児童保護者が独立校の様に登校できるというメリットが記されています。

この資料で初めて「地域分校」という言葉が登場しました。にもかかわらず、出席者の多くは地域分校という言葉を理解し、これを前提とした意見・質問が多く発せられていました。強烈な違和感を覚えました。

・分校とした場合、本校と分校で行事が別々になるのか、クラブ活動などに差ができることはないのか。また、児童が本校と分校の間を移動する回数は年間でどの程度あるのか。信号も数か所ある現在の堀江小学校と西高校の間を、大勢の子どもが整列して移動するのには時間がかかるのではないか。

・大阪市では地域分校の直近事例が無いとのことだが、他都市における地域分校の例はどのようなものか。児童の数によって毎年流動的に通学区域を分けるといった例はあるのか。地域分校のデメリットとして、大規模タワーマンションが建つたびに通学区域を変更するというようなことはないのか。

・仮に今は地域分校を選択したとして、同じ分校なのだから、将来、学年分校の形態に変更することは可能か。

・もし地域分校とした場合、同じ学年でも本校と分校に分かれ、交流が無くなってしまうことを心配する。通う場所は違っても同じ堀江小学校の仲間だという意識を持たせることが必要になる。

・分離新設校として校区を分割した場合には地域活動に影響が出る。また、不動産価値にも影響が出て、納得を得ることが難しいかもしれない。

・学校には1年生から6年生までが揃っていることが望ましい。地域分校案は、堀江小学校は一つという分校のメリットと、分離独立校的なメリットを併せ持っていると思う。

・分校案なら堀江小学校の校区が守られることになるので有難い。通学区域に関しては地域としての想定もあり、今後とも議論していきたい。

・地域分校案が良いと考える。通学区域に関しては、子どもたちにとって何が良いかという観点から議論していきたい。

・地域分校案を支持する意見が多いように思うが、その場合の課題は何か。

第2回ラウンドテーブル議事要旨より

議事要旨を読む限り、地域分校案に反対する意見はありませんでした。これだけ賛成する質問や意見が多いと、反対する発言を行うのは非常に難しかったでしょう。

1ヶ月半後という急ピッチで開催された第3回ラウンドテーブルでは、本校・分校間の区割りが決められました。

境界線はあみだ池筋、オールインワン校舎も検討へ(第3回ラウンドテーブル、H30.9.12)

堀江小学校東側の道路、あみだ池筋、新なにわ筋で区切るという3案を検討しました。児童数のバランス・通学距離・安全面から、あみだ池筋で区切る案に集約されました。

児童数、本校と分校との児童数のバランス、通学の距離や安全面などから、あみだ池筋で区切るのがよい。

[分校の建物] 敷地を少しでも広く活用するために、講堂やその他の教室が同じ建物に入ったオールイン・ワン型の建物も検討する。
地域の区割りができ、分校に通う児童数の推計がでたら教室数などを決めることができるので校舎建設の規模等はお知らせできる。

[意見] ・地域の住民は転勤がなくずっとここに住み続ける。この会の内容も含め、いろんなことを記憶している。
・幼稚園の閉園は、ただただ残念である。
・児童数をおさえるためにも、マンション等の新規の建設を規制してほしい

知っとこ臨時号(堀江小学校)

あみだ池筋で区切ると、本校と分校の児童数は概ね半々となります。

分校の開設は2024年4月を目指しているそうです。設計等で最短6年掛かると見込まれている事から、遅くとも2019年2月市会までには市立西高校の廃止案(大阪府への移管?)・分校建築に係る関連予算案等が決議されなければ間に合いません。

第2回・第3回ラウンドテーブルが間髪置かずに開催されたのは、年内に予算案を作成する必要があったからでしょう。

横浜市は入念な調査・ヒアリングを実施、だが大阪市西区は実質1回のラウンドテーブルで決定

ここまで堀江小学校の地域分校設置に関する流れを説明しました。地域分校を設置する案は第2回ラウンドテーブルで提案され、その場で意見集約されました。あっという間の出来事でした。

分校設置は堀江小学校区の教育環境を大きく左右する、極めて重要な内容です。にも関わらず、簡易な比較資料が配付された僅か1回の会議で決まりました。学校運営の専門家による入念な検討が行われた形跡もありません(内部では行われていたのかもしれませんが)。

大阪市と同じ様に児童急増に悩み、分校を設置した自治体があります。横浜市の市場小学校けやき分校です。

市場小学校 分校体制へ 開校準備部会 意向固める

児童数の急増により、2020年に10年間の暫定開校予定の市場小学校第二方面校について、市場地区の住民らから成る開校準備部会は、7月21日、分校とする意向を固めた。今後準備部会は通学区域や分校名を検討し意見書を提出。最終的に議会の議決を経て、分校体制が正式決定する。

第二方面校の設置は、市場小の児童急増を背景に計画が進められてきた。同校周辺では、工場跡地などで住宅開発が進み、人口が増加。現状の同校の規模では、5年後児童を受け入れられなくなるための措置だ。

設置予定地は、横浜市の下水道用地を一時的に利用。そのため、開校期間は10年間に限定されている。

開校に向け、通学区域や学校名は、自治会町内会や市場小PTAなどが参加する開校準備部会で検討し、地域の意向を集約することにしている。(以下省略)

https://www.townnews.co.jp/0116/2016/07/28/341850.html

横浜市立市場小学校は、平成33年度には児童数1800人に達すると予測されていました。堀江小学校とほぼ同規模の超過大校です。

横浜市は市場小学校第二方面校開校準備部会を設置し、計7回の会議を行いました。議事録は全て公開され、会議毎の決定事項等を「部会ニュース」にまとめて公表しました。

原案は分離新設でした。しかし、歪な学区・新設校は10年限定・地域活動の支障等から、最終的には5-6年生が通う分校を設置すると決まりました。

分離新設という結果を得るに際し、横浜市は分離新設や分校のどちらか適しているかと入念な調査や比較検討を行いました。

政令市における大規模分校(学年分校)の希少な設置例として、大阪市の友渕小学校を調査しました。

http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/gakku/kadaikibo/pdf/ichibanews3.pdf

また、学識経験者にもヒアリングを行い、分離新設案と分校案を詳細に比較しました。比較内容は部会ニュース第2号第3号の計5ページに渡って記されています。

大阪市の資料になく、横浜市の資料に掲載されているのは教職員数の比較表です。

横浜市は分離新設校と学年分校毎に配属される教職員数を比較した資料を公表しています。これによると、教職員数は分離新設校の方が5-7人ほど多いとされています。

教職員数は学校の教育環境に直結します。一般的に(児童1人あたりの)教職員数が多いほど十分な教育活動が行えるとされています。少人数学級や副担任制は一例と言えるでしょう。

その他、大阪市の資料は荒っぽさが目立ちます。

最終的には第4回部会にて各委員が投票し、分校案18票・通学区域案(分離新設)3票・白票1票という結果が得られました。納得感や透明感がある、明瞭なプロセスを経ています。

堀江小学校の地域分校設置は、実質1回のラウンドテーブルにて決められました。他都市の実例調査・専門家のヒアリングを行った形跡もなければ、多数決も行われていません。

地域は堀江小学校の分離新設校を拒絶、地域分校を強く希望

手続論以上に大きな問題なのは、地域分校案に集約された理由です。

キーとなるのは第1回ラウンドテーブルでの発言でした。

資料にあるメリット・デメリットは、学校の立場からしか書いていない。学校は地域あっての学校なので、もっと色々なメリット・デメリットがある。それをこれから議論していくべき。学校は地域に根を下ろしており、地域のシンボルにもなるし、コミュニティの拠点でもある。

小学校の主たる目的は児童の教育です。誰も異論はないでしょう。そうした観点からは、児童・保護者や学校運営におけるメリット・デメリットを最も重視して検討を行うのが当然です。

しかし、「地域のメリット・デメリットを議論すべき」という指摘が行われ、議論の方向性がズレていきます。「地域にとって、どういった学校が望ましいか」という議論が主となっていきました。

第2回ラウンドテーブルは地域分校を前提とした意見・質問が大半を占めました。

児童の教育環境や適切な学校運営という観点はありません。存在したのは「地域にとって、どの様な堀江小学校が相応しいか」という観点でした。教育環境課題検討部会であるにも関わらず。

うがった見方もできます。堀江小学校区内に2つの校舎・体育館・グラウンド等があれば、地域活動で大いに活用できます。贅沢な話です。

「分離新設校は地価が下がる、地域活動に支障、納得できない」

中には耳を疑う意見もありました。

・分離新設校として校区を分割した場合には地域活動に影響が出る。また、不動産価値にも影響が出て、納得を得ることが難しいかもしれない。

・分校案なら堀江小学校の校区が守られることになるので有難い。通学区域に関しては地域としての想定もあり、今後とも議論していきたい。

第2回ラウンドテーブル議事要旨より

不動産価値が下落する・地域活動に支障が出る・校区が分割されないから、分離新設校ではなく地域分校に賛成したと受け取れます。教育環境に関する認識は欠片もありません。

児童の教育環境や適切な学校運営は何も考えていません。頭にあるのは所有不動産の価値最大化と地域活動だけです。地主エゴ・地域エゴ・強欲・身勝手とも呼べる、非常に恥ずかしい意見です。誰もこの発言を咎めなかったのでしょうか。

仮に分離新設による不動産価格下落を避けたいとしても、この場で発言すべき内容ではありません。教育等に関する会議の委員として不適格です。即座に辞任もしくは解任されるべきです。

出席者の多くは非当事者、当事者は未就学児とその保護者・教職員

重要な内容を決定したラウンドテーブルは、どの様な人間で構成されているのでしょうか。第2回会議に出席したのは、地域住民代表7人・保護者代表9人・堀江小学校長・西区役所教育担当課長・教育委員会課長2人でした。

小学校の教育環境の当事者は小学生とその保護者、そして教職員でしょう。

市立西高敷地に建設が検討されている小学校は、2024年の開校が予定されています。今から6年後です。ラウンドテーブルに出席者に、堀江小学校・新しい学校の当事者となる人間はいるのでしょうか。

地域住民代表の大半は連合町会長・町内会長といった地域の有力者でしょう。小学生の子供がいるとは考えづらいです。

保護者代表は小学校PTA関係者でしょう。現在は子供が堀江小学校に通っているとは言え、6年後も子供が通っている保護者は決して多くないでしょう。

堀江小学校長や教育を担当する職員は、6年後は違う部署に異動しているでしょう。

つまり、この決定を行った会議に参加したメンバーの多くは、学校環境の大きな変更に際して「当事者」とならないのです。当事者不在による決定です。

当事者となるべきなのは、6年後に堀江小学校・新校舎に通う小学生やその保護者です。具体的には、現時点で堀江小学校区に住んでいる、未就学児がいる家庭です。

ラウンドテーブルでの決定に際し、こうした家庭の意見を中心に検討したのでしょうか。議事録等を読む限り、地域代表者の意見ばかりが重視されています。

出席者には未就学児がいる保護者もいたでしょう。しかし多勢に無勢か、こうした保護者の意見は無視・軽視されていると感じました。

実は子育て環境の整備等に関して、大阪市が当事者である子育て家庭の声や意見を聞く事は稀です。

重要な話が地域有力者と区役所での話し合いで決まってしまい、子育て世帯が知ったのは決定内容の説明会という場面に何度も遭遇しました。

当事者の意見が反映されない子育て環境の整備は、的を外した物になりがちです。何をするにしても、まずは当事者が何を求めているかを調査・認識するのが重要です。

都市部の地域分校は学校教育法施行規則に抵触しないか

地域分校案には非常に大きな問題が存在します。法的側面です。

そもそも小学校の分校設置について、法令上の規定等は存在するのでしょうか。この点について、横浜市の部会ニュース第2号が指摘する学校教育法施行規則第42条に定めがあります。

第四十二条 小学校の分校の学級数は、特別の事情のある場合を除き、五学級以下とし、前条の学級数に算入しないものとする。

学校教育法施行規則第42条

堀江小学校の地域分校は、開校当初から21学級を予定しています。5学級以下ではありません。では、「特別の事情のある場合」と認められるのでしょうか。

一般的に地域分校は離島・山村といった僻地に設置されます。そうした環境が「特別の事情」と考慮されるのでしょう。

同条の存在について横浜市は早期に把握し、友渕小学校での調査でも活かされた形跡があります。

最終的に横浜市教育委員会は、「(1)10年間の暫定的な学校であること。(2)市場地区は、市場小学校と密接に連携しながら、地域が一体となって子どもの育成を担うことにより地域力の促進も図ってきた長い歴史があること。」という理由から、特別の事情のある場合に該当すると判断しました(第4回部会ニュースより)。

繰り返しとなりますが、地域分校には「特別の事情」があるのでしょうか。地域活動・不動産価値への悪影響は「特別の事情」と言えるのでしょうか。大阪市教委は文部科学省と相談したのでしょうか。

なお、私が調べた限り、大都市の中心部に設置された地域分校は見つけられませんでした。先に記したとおり、過去に大阪市で設置された地域分校は、分離新設校へ至る一プロセスでした。

都心部における永続的な大規模地域分校は、法の趣旨に合致するのでしょうか。

原則は分離新設校の設置

過大化した小学校を分割するのであれば、原則として分離新設という手段が用いられます。旧来の学区を分割(ないしは他学区の学区を一部併合)し、新しく設定された学区を区域とする小学校が新たに新設されます。

分離新設校の立ち上げには、様々な困難や努力が必要とされるでしょう。しかし、母体校となる堀江小学校の支援を受けつつ、新しい学校を教職員や児童が一から作り上げてゆく事ができます。

独立校なので、主体的になって特色ある学校を作り上げてゆく事も可能でしょう。しかし、学年分校や地域分校では上手くいきません。常に本校の校長等の了解・指示を得なければならないでしょう。

学校規模は過大なままです。更に別校地が出現してしまいます。学校組織の運営や全体行事の実施に大きな障害が生じるのは明白です。

様々な議事録等を読む限り、堀江小学校の分離新設を否定すべき明確な理由は見つけられませんでした。否定したい意見として「地域あっての学校」という地域事情が強く主張されて続けていました。

本校・分校間の心理的障壁

地域分校は児童・保護者の心情にも影を落とします。

本校と地域分校に通う児童は、それぞれの校舎に6年間通い続けるとされています。運動会等の行事を行う際は、分校の児童が本校に出向くと計画されています。

分校に通う児童は、果たして本校に愛着や帰属意識等を持てるのでしょうか。イベントの時だけに出掛けるのであれば、お客さんという感覚になってしまうでしょう。本校へ「学び舎」という意識を持てません。

地域分校地域に住む保護者からも不満が高まるでしょう。学校と話し合いたくても、本校と分校をたらい回しにされる危険があります。保護者の意見が学校に反映されにくくなります。

こうした観点から、本校と分校の児童・保護者の間に見えない壁ができるのは明らかです。同じ学校だけど同じ学校では無いと言う、気持ち悪い感覚が植え付けられます。

運動会等を一緒に行おうとしても、上手くできないでしょう。狭い堀江小学校に1,700人以上の児童、そして3,000人程度の保護者が集まるのは非常に危険です。

大阪ドームを利用するという考えは止めて欲しいです。これは校舎工事中の例外措置です。

窮余の一策は「京セラドーム」で運動会…都心回帰で高層マンション建築ラッシュ、対応追われる大阪市の小学校
https://www.sankei.com/west/news/170810/wst1708100005-n1.html

毎年の様に大阪ドームで運動会を行うのであれば、それは「えこひいき・特別扱い」です。

学校選択制との矛盾

仮に地域分校を設置する場合、大阪市が導入している「学校選択制」との兼ね合いが問題となります。西区は「学区、もしくは隣接している学区の学校から選択できる」としています。

第2回ラウンドテーブルで質問が出ています。

(質問) 通学区域の分割という場合、学校選択制を利用して校区外から通学している子どもへの影響は何かあるのか。校区外からも通えるという今の制度は続くのか。

(回答) 通学区域の分割というのは、堀江小学校の校区の中での話なので、学校選択制とは別の問題となる。ただ、仮に地域分校として本校と分校の通学区域を分けた場合には、通学校の指定や学校選択制の運用の部分で検討すべき事項はあるが、それも、堀江小学校をどのようにするかが決まった上での検討となる。

隣接学区に居住している児童は、堀江小学校本校か分校かを明示して希望できるのでしょうか。また、本校学区内に居住している児童は分校を、分校学区内の児童は本校を選択できるのでしょうか。

本校か分校かを選んで希望できないのであれば、学校選択制と矛盾します。選んで希望できるのであれば、それは本校・分校ではなく「独立校」です。

オールインワン校舎は高コスト・教育活動を大きく制約

第3回ラウンドテーブルでは「敷地を少しでも広く活用するために、講堂やその他の教室が同じ建物に入ったオールイン・ワン型の建物も検討する。」という発言がありました。

「大阪市内中心部児童急増対策プロジェクトチーム会議」では、中之島西部に設置が検討されている新設校にてオールインワン型の校舎を検討するとしていました。しかし、堀江小学校の新設校には触れていません。

大阪市立西高校の敷地は約2万平方メートルの広さがあります。校舎・テニスコート・グラウンドの3か所に分かれているとは言え、堀江小学校・中学校の通常校舎を設置できる面積があるでしょう。

オールインワン型の校舎は敷地を有効に活用できますが、建設・運営に大きなコストを要します。

川口市立幸町小学校(公民館との複合)の事業費は52億5700万円、千代田区立昌平小学校(幼稚園・図書館等の複合)は約78億円でした。

冗長性の無さも問題です。将来に更に学級数が増えても、敷地内に教室を増設するスペースはありません。屋上にプレハブ教室を建てるわけにはいきません。

更に大きな問題として、オールインワン型校舎は学校での教育活動(特に野外活動)を大きく制約する恐れがあります。

こうした校舎では、グラウンドは屋上部分に設置されます。児童1人あたりのグラウンド面積は極めて狭くなるでしょう。自由に走り回れない、運動会が開催できない、50メートル走が測定できない、ボール遊びすら禁止される恐れがあります。

そもそも堀江小学校が抱える問題の一つが「児童1人あたりのグラウンド面積の狭さ」でした。現在は市内最低レベルです。新しい校舎でも市内最低レベルを継続しかねません。本末転倒です。

また、多くの小学校に備えられている畑やビオトープは望めません。近隣地を賃借すると、児童が移動するのに大きな時間が掛かります。賃借料も発生します。

せっかく中学校と隣接した敷地に設置されるのですから、大きなグラウンドを共用できないのでしょうか。体育や部活動がより活発に行え、建物を建築できる面積も増えます。

大きなグラウンドは、土日のスポーツ活動等でも有効に活用できます。小学校用と中学校用に明確に分割してしまう事は、デメリットも大きいです。

当初からオールインワン型の校舎にせざるを得ないと検討するのであれば、そもそもこの学区割りに問題があります。

大規模校化する堀江中学校を分割すべき

では、どういった学区割り・校舎配置を行えば良かったのでしょうか。求められているのは(1)超過大校である堀江小学校の分割、(2)狭隘化が深刻な堀江中学校の拡張です。

堀江小学校の一部を分割し、市立西高敷地へ移転するのは不可避でしょう。他に敷地がありません。

同時に検討すべきは堀江中学校です。大阪市内で最も狭く、最も過密な中学校と呼ばれています。全てを西校敷地へ移転すると、敷地は大幅に拡張(5000平方メートル→1万平方メートル以上?)されます。

ところで堀江中学校が移転した後の跡地について、現在は何も計画が定まっていません。

(質問) 堀江中学校の跡地は何に使うのか。
(回答) 今は何も決まっていない。どのように使うかは今後の話である。

第2回堀江小学校ラウンドテーブルでの説明内容より

会議等では強く指摘されていませんが、堀江中学校の大規模校化は急激に進行すると推測されます。

現在は15学級に留まっています。しかし、児童が溢れかえっている堀江小学校・日吉小学校からは、堀江中学校へ進学します。堀江小で起きている問題が、今度は堀江中学校で発生します。

そこで堀江中学校が全面移転するのではなく、一部が市立西高敷地へ分割移転する考え方があります。素直に考えると、現堀江小学校区を学区とする中学校を新設する形となるでしょう。現堀江中学校には、日吉学区からのみ進学する事となります。

少し複雑なので、表にまとめてみました。

学校名敷地面積(㎡)児童生徒数学区
2017年2027年2040年
日吉小12,2588421,245935日吉学区
堀江小7,5431,0161,085930現堀江学区の東部
(新)堀江小合計約20,000(西高敷地を分割して使用)未開校688567現堀江学区の西部
(新)堀江中未開校684??堀江小・(新)堀江小
堀江中5,703558600??日吉学区

こうする事により、堀江小学校の超過大校化・市立西高敷地の過密化・堀江中学校の狭隘化及び過大校化が一度に解決しそうです。

西高敷地に設置される中学校の規模が想定の半分となるので、オールインワン型の小学校校舎を建設する必要は無くなります。事業費は大幅に圧縮でき、児童生徒の教育環境は大幅に向上しそうです。

この案だと、現堀江中学校の建物敷地は今後も中学校として継続利用できます。地域の避難所・集会所等として、今後も重宝されるでしょう。

中学校の分割は学校活動に大きなメリットがあります。大きすぎる中学校は様々な問題が発生します。先生の目が行き届かなくなり、いじめや不登校が発生しやすくなるでしょう。

また、部活動の充実も見逃せません。部員数が大きすぎる部は、レギュラーとして活躍できる生徒が少数となってしまいます。2中学校の分割されると、活躍できる生徒が大いに増えます。

堀江学区(堀江・西六地域)にも大きなメリットがあります。堀江小学校に代わり、今度は(新)堀江中学校を地域一丸となって支える形となるからです。地域と(新)堀江中学校が1対1で繋がります。

気になったのは、堀江中学校ラウンドテーブルが1度も開催されていない事です。狭隘化を深刻に受け止めている、花乃井中学校ラウンドテーブルとの温度差を感じます。

結論:堀江小学校・堀江中学校の分離新設校を設置すべき

過大化・過密化する堀江小学校等の教育環境を再整備するにあたり、社会的資源として準備されたのは市立西高の敷地でした。

教育環境と学校組織の最適化という観点から、堀江小学校・日吉小学校・堀江中学校の学区地図を再確認します。

すると、(1)西高跡地に小学校(学区は堀江小学校区西部)を新設する、(2)同じく西高跡地に中学校(学区は現堀江小学校区)を新設する、(3)現堀江中学校の学区は日吉小学校区に縮小するのがベター、という結論が導かれました。

上記地図の北西部は新設小学校→新設中学校、北東部は現堀江小学校→新設中学校、南部は日吉小学校→現堀江中学校、という区割りです。

学区割り・校舎配置・規模等はいずれも妥当な物でしょう。事業費は堀江小学校区西部の小学生(約650人)が学ぶ校舎等、及び堀江中学校区北半分の中学生(約700人)が学ぶ中学校を建設する規模で収まります。

ラウンドテーブルや児童急増対策会議等では、堀江小学校区西部の小学生(約650人)が学ぶ校舎等(オールインワン型も検討)、及び堀江中学校の全生徒(約1,300人)が学ぶ中学校を建設するという方向性が打ち出されていました。

これと比較すると事業規模は2/3、オールインワン型と比べると半額程度で済むのではないでしょうか。大阪市の厳しい財政事情にも貢献し、事業期間も短縮できます。

堀江小学校の地域分校案は地域事情ばかりを重視し、児童や保護者の心情・教育環境・学校運営・法令を軽視したものです。

また、堀江中学校の全面移転は、学校規模の過大化と向き合っていません。巨大校舎に生徒を押し詰めても、教育環境は良くなりません。

学校は誰の為に、そして何の為にあるのでしょうか。何か忘れていませんか。