昨年末に大阪市の吉村市長が「教員評価基準の一つに学力経年調査の結果を利用する」と表明しました。
最終的に「小中学校の校長の人事評価において、大阪市小学校学力経年調査・中学生チャレンジテストの結果を反映させる」という方針が決定しました。
校長評価にテスト結果反映 大阪市、学テ活用は見送り
大阪市は29日、大阪府や市が独自に行う学力テストの結果を小中学校の校長の人事評価に反映させる制度を、2020年度から本格導入する方針を決めた。吉村洋文市長は全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を校長の評価に使う考えを示していたが、課題が多いとして見送られた。
新制度は市や府が毎年実施する独自テストの結果を利用。学校ごとに具体的な成績目標を定め、その達成度を校長の評価に反映させる。校長はテストの結果を教員の評価の参考にする。19年度は試行実施する。
吉村市長は18年度の全国学力テストの結果が政令指定都市で最下位だったことを受け18年8月、全国学力テストの結果を教員らの給与に反映させる意向を表明。その後、市教育委員からテスト結果の活用には慎重な意見が出るなどし、校長の評価にのみ使用する考えを示していた。
吉村市長は29日の会議で、新制度について「百パーセントではないが、(学力向上に関する)僕の問題意識を共有した上で、妥当性のある制度を提案してもらえた」と述べた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40644170Z20C19A1AC8Z00/
大阪市、学テ結果の教員評価反映を断念 地方公務員法抵触の恐れ
大阪市は29日の総合教育会議で、学力向上に重点を置いた教員の新たな人事評価制度をまとめた。吉村洋文市長が提案し、波紋を広げた全国学力・学習状況調査(学テ)の結果に応じて教員の手当を増減させる案は、家庭や経済力の差といった指導力以外の要因を排除できず、公正な人事評価を定めた地方公務員法に抵触する恐れがあるとして導入を断念した。
ただ、テスト結果を重視した評価に移行する流れは変わらず、吉村市長は「100%ではないが、現行制度と比べれば大きな前進だ」と評価した。新制度では、子どもの学力・体力の向上に関する評価のウエートを、現在の校長20%、教員35%から、それぞれ40%に引き上げる。
対象学年や教科が限定され、公正な指標化が難しい学テに代わり、市の学力経年調査(小学3~6年)と大阪府教委のチャレンジテスト(中学1~3年)を活用。各学校に自校の偏差値を前年度から何ポイント上げるか目標設定させ、達成度に応じて校長の人事評価の一部に直接反映させる。一方、教員については、校長が人事評価の際の参考にする。2020年度から本格実施する。
また、これまで特色ある学校づくりに活用してきた「校長経営戦略支援予算」の一部(1.6億円)を、学力向上に関する目標を達成した学校に配分。学テの結果向上に成果がみられた学校を対象に、研究活動費を支給する制度も設ける。
会議では、大森不二雄・市特別顧問(東北大教授)が学力向上や安心安全などで顕著な功績があった教員らを表彰し、一部を昇給させる制度の導入も提案した。
【吉村洋文 大阪市長】
「子供たちの学力を上げるそういった先生についてはきちんと評価しなければいけないし、そうじゃない先生は評価しないというのは僕は当然だと思う」
また、学力には家庭環境なども大きく関わっているとの指摘もありましたが、教育委員会は「相関関係を示すデータがない」として、当面、評価に生徒の周辺環境は考慮しない方針です。
大阪市ウェブサイトには、全国学力・学習状況調査(学力テスト)の結果が公表された直後に開催された大阪市総合教育会議の議事録等が掲載されています。
平成30年度第2回大阪市総合教育会議開催結果
http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000447342.html
当初は学力テストの結果を、担任等を担っている一般教員の人事評価に利用するという方針も検討されていました。
しかし、地域間や児童間の学力差を控除し、学力テストの結果と教員の指導力を相関付けた公正な評価制度を構築するのが非常に困難だったのでしょう。
何よりも「4月に行われるテストの結果と担任の指導力には、何の関係もないのではないか?」という指摘が致命的だったと感じています。
最終的には各学校が「大阪市・大阪府独自テストの結果(偏差値)を前年度より何ポイント上げるか」と目標として設定し、達成度に応じて校長の人事評価に反映させる制度に至りました。
また、テストの結果は一般教員の評価には直接反映されないものの、校長が教員を人事評価する際に参考資料として活用されるそうです。
大阪市の学力低迷は危機的状況です。小学生の保護者としても、学力の低さを実感する機会が多いです。
宿題やテストの出来と比べて、通知表の評価が良いのに疑問を感じた事がありました。担任の先生に訊ねたところ、「クラス内の順位によるものです」との返事がありました。学力の二極化に加え、平均的な学力も低いのでしょう。
学力には両親の学歴や世帯収入が大きく影響(データあり)
小中学校がこれまで以上に学力向上を重視するのは歓迎します。一方、各学校の指導だけでは足りないのも事実です。FNNニュースに掲載されている「学力には家庭環境なども大きく関わっている」という指摘がその現れです。
教育委員会は「相関関係を示すデータがない」としていますが、当ウェブサイトではデータを掲載しています。
地域の大卒率・世帯収入と学力テストの結果には、明確な相関関係が存在しています。これを無視しては、効果的な学力向上策を打ち出せないでしょう。
学力向上は大阪市ぐるみで
とは言え、小中学校が努力しても両親の学歴や世帯収入が向上しません。これを促せられるのは大阪市でしょう。
例えば学歴を向上させるには市内への大学誘致が考えられます。同じ政令市たる京都市や神戸市と比べ、大阪市内では大学・大学生の存在感が希薄です。市内にある主要大学は大阪市立大学しか思い浮かびません。
阪大(豊中市や吹田市)・大阪府立大(堺市)・関大(吹田市)・立命館大(茨木市)・近畿大(東大阪市)・関学大(西宮市)と、大阪市を取り囲む様に主要大学のメインキャンパスが存在しています。
また、子育て世帯の世帯収入を向上させるには、様々な支援策が必要でしょう。未就学児がいる世帯は幼児教育無償化によって金銭負担が軽減されました。
しかしながら、小中学生がいる世帯が私費負担する教育費は依然として重たいです。小中学校により大きな予算を付け、十分な学習環境を整備したり公費負担を拡充するのが待たれます。
詰まるところ、ここ数十年に及ぶ大阪経済の地盤沈下が小中学生の学力に影響していると感じています。東京一極集中が進む現在、このままでは大阪市の学力低下がより進行する事態が心配です。
学力向上を一義的に担うのは各学校です。しかし、各学校の校長や担任等は入れ替わります。各校に任せきりにするのではなく、市・教育委員会・区役所を挙げてバックアップして欲しいものです。
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