低迷する大阪市の学力に対し、大阪市長の発言が波紋を呼んでいます。
教員の査定に学力テストの結果を反映させるという方法は、学力を向上させる効果があるのでしょうか。正直なところ、分かりません。
それより前に、まずは学力が低迷し続けている原因を探り出すべきでしょう。
学力には「家庭の社会的経済的背景(SES, Socio-Economic Status)」が大きく影響していると指摘されています。これは両親の学歴・世帯収入から算出される指標であり、高い世帯の児童ほど学力も高いとされています。
大阪市の子育て世帯のSESはどうなっているのでしょうか。各小学校毎の子育て世帯のみを対象とした詳細な資料は公表されていません。
ただ、国勢調査では町丁毎の大卒率(H22)や居住形態割合(H27)が、また土地住宅統計調査(H25)では居住形態毎の年収帯が公表されています。これらから、「各小学校区毎のSES」を推計し、各小学校毎の学力テストの結果と照らし合わせてみました。
なお、対象としたのは、H29学力テストの結果を公表(もしくは算出可能)している小学校219校(全小学校数は286校)です。
まずは大卒率・世帯年収毎の学校数です。
黄色の網掛け部分は、大卒率・世帯年収の全国平均に該当する箇所です。大阪市の大卒率は全国平均をやや上回る学区が多いものの、世帯年収は大半の学区で大きく下回っています。
なお、大卒率が高くなるにつれて、世帯所得も高くなっています。大卒ほど高収入の仕事を得やすい事の現れでしょう。
これを踏まえた上で、大卒率・世帯年収毎の点数を見ていきます。
赤色の網掛け部分は、学力テストの点数が全国平均を上回った欄です。世帯年収、そして特に大卒率が高いほど、学力テストの点数は高くなっています。一目瞭然です。
残念なのは大卒率20-25%の部分です。学力テストの点数は全国平均を下回っています。これには、世帯年収の低さが影響している可能性があります。
大卒者が多く住む地域で暮らす子育て世帯では、両親の大卒率も高くなっているでしょう。長年に渡って教育を受けてきた両親が多く、子どもにも同じ様な教育を受けさせたいと考えます。小さい頃からしっかり勉強させて、分からない箇所は両親が教えられます。
また、世帯年収が高ければ、様々な教育サービスにも手が届きやすいです。子どもの教育を外部へアウトソーシングし、学力を向上させる期待が持てます。子供用の書籍や道具等も購入しやすいです。
着目して欲しいのは、大卒率・世帯年収はほぼ全国平均と等しい箇所(黄色部分)です。サンプルが1校と少ない物の、点数は63.0点と全国平均を1.2点も下回っています。
この差をどう見るか。
家庭における大卒率や世帯年収以外の要因(家が狭くて勉強できない、親が教えてくれない、本がない)、地域性(繁華街が近くて夜遊びしやすい)、学校(先生の指導力不足、学校が荒れていて勉強できる雰囲気ではない)等、様々な理由が推測できます。大卒率20-25%の学区もオーバーラップします。
次回は各学校毎の数字をベースに、効果的な取り組み等について考えていきたいです。
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