大阪市内で子育て世帯の人気が高いのが西区です。淀屋橋・本町というビジネス街に近い一方、落ち着いた雰囲気の町並みが好まれています。近年は事業所等の跡地に続々とタワーマンションが建設されています。ここ数年は毎年の様に就学前児童数が増加し、昨年1年間では4%以上も増加しました。
人口が急増する反面、それに伴う弊害も顕著となっています。子供が使用する施設、具体的には保育所・幼稚園・小中学校の不足や過密化が深刻な問題と化しています。
特に深刻なのは、西区東部の中心にある堀江学区です。遂に大阪市会へ「西六・堀江地域の保育・教育環境の課題解決を求める陳情書」が提出されました。
タワーマンション等を販売する業者はなかなか発信できない、いわば負の側面をお伝えします。主に堀江学区内の情報を掲載しますが、西区東部(木津川以東)の多く地域にも該当する内容です。
保育所が圧倒的に足らない堀江学区・西区東部
堀江学区を中心とする西区東部は、大阪市内で最も保育所へ入所するのが困難な地域です(詳細はこちら)。急増するタワーマンション・就学前児童に対し、保育所の整備が全く追いついていません。就学前児童が年に4%も増加してしまうと、どうしても後手後手に回ってしまいます。
その為か、西区東部では認可外保育施設や0-2歳児の保育を行う小規模保育施設が数多く存在しています。しかし、前者は高い保育料が、後者は3歳児以降の保育は行えず、子育て世帯を困らせてしまいます。
私立幼稚園が全くない西区東部
堀江学区内には市立堀江幼稚園があり、3-5歳児に対して幼稚園教育を行っています。また、西隣の日吉学区には市立日吉幼稚園があります。
しかし、堀江学区の周囲にあるのはこの2幼稚園のみです。実は西区は私立幼稚園が乏しい地域で、何と西区東部は皆無です。就学前児童が自宅近くで保育・教育の場を探すとなると、保育所か市立幼稚園しか選択がありません。保育所不足に拍車を掛けている一因でしょう。
過密化する堀江小学校と堀江幼稚園の移転問題
堀江小学校の児童数の増加見込みと必要教室数
年度 児童数(見込み) 必要教室数 不足教室数 27年度 873 27 +1 28年度 941 29 -1 改修工事で教室確保 29年度 1029 30 -2 30年度 1167 34 -6 改修工事では対応不可
抜本的な対策が必要31年度 1309 38 -10 32年度 1413 41 -13 33年度 1562 45 -17 ※平成27年度の教室数:普通教室28、特別教室7
※児童数の増加に伴い、普通教室の他、特別教室の増設も必要となります永井啓介委員配付資料より作成
就学前児童数が急増すると、徐々に小学生の人数が増えていくのは当然です。堀江小学校では既に毎年の様に児童数が増加しており、特に新入学者が急増しています。過密化に伴い、平成28年度には教室数が不足(特別教室の改修で確保?)し、平成30年度には改修工事でも対応できないほどの規模で不足する状態が予想されています。現に過密化は著しく、特に運動会では保護者が校庭に入りきれず、校舎内から見学する状況になっているそうです。
堀江小学校の過密化・施設不足に対応する為の方法として大阪市教育委員会が検討しているのは「堀江幼稚園の移転・民営化」です。具体的には、(1)老朽化している子供文化センターを取り壊して移転させる、(2)跡地に私立認定こども園を誘致して堀江幼稚園を移転し、待機児童対策を行う、(3)堀江幼稚園跡地に堀江小学校を拡張する、という内容です。
堀江幼稚園の移転や堀江小学校の過密問題等について、市会教育こども委員にて永井委員(自民)が集中的に取り上げています。そこで上記の様な資料も配付しました。永井委員は堀江幼稚園の移転ではなく、堀江小学校南側にある阿弥陀池公園を移転させて校地を拡張するべきではないかと指摘しています。
堀江幼稚園の移転の是非は分かりません。少なくとも、早急に堀江小学校の施設を拡充しなければ、児童が青空教室で過ごす事になるでしょう。永井委員が「タワーマンションはもう勘弁してもらいたい」と零すのにも納得できます。その一方で、こうした問題が発生するのが明らかだったにも関わらず対応しなかった行政や議会に大きな責任があるでしょう。
運動会が自校で開催できない堀江中学校
運動会等の学校行事は自校で行うのが原則ですが、堀江中学校では出来ません。生徒数は約600人(16学級)と多く、加えて校地面積が約5500平方メートルと市内で最も狭い中学校だそうです。東向かいにある南堀江公とさほど変わりません。その為、運動会は市立西高校のグラウンドを借りて行っているそうです。
堀江小学校のみならず、同じく堀江中学校へ進学する日吉小学校の児童数も急増しており、近い内に1000人を突破するそうです。2小学校の児童が進学する堀江中学校がパンクするのは時間の問題でしょう。
子育て世帯人気エリアは要注意
子育て世帯からの人気が高いエリアは何らかの魅力があるのでしょう。その反面、この様に子育て世帯が集中してしまうと、施設規模を柔軟に変更できない教育施設等が溢れかえってしまう恐れがあります。
堀江学区の教育・保育環境は、残念ながら極度に悪化しつつあると言わざるを得ません。好立地のタワーマンションは魅力的ですが、こうした負の側面も十分に認識してご検討下さい。保育所不足も含め、子供にツケを負わせる場面が余りに多すぎます。