(建設予定地の駐車場、グーグルSVより)

何の予告もなく、隣地で保育所の建設が始まったらどう思うでしょうか。

「うちの子が入園できそうだ!」「賑やかになりそうだ」と喜ぶ方もいれば、「うるさい」「交通事故が心配だ」「全く説明が無かった」と感じる方もいるでしょう。

吹田市のとある住宅街で、唐突に保育園の建設が始まったそうです。これまで報じられてきたケースと異なるのは、認可保育所ではなく「企業主導型保育(認可外保育の一つ)」という点です。

大阪・吹田市の閑静な住宅街に突如、建設されはじめた認可外保育所。周辺住民は当初、何の工事が始まったのかわからなかったといいます。事業者から事前に説明会などは開かれず、建設する旨の手紙が入っていただけで、周辺住民は困惑しています。

きっかけは6月。閑静な住宅街の中にある駐車場に使われていた土地で民間業者が突然、認可外の保育所の建設工事を始めたのです。オープンは来年4月で0歳から5歳児までの子ども60人を受け入れる予定だということですが、住民は当初、何の工事が始まったのかすらわからなかったといいます.

建設工事が始まる直前、近隣の住宅のポストには「認可外保育所の建設工事を開始する」という内容の手紙が投かんされていました。事業者が事前に説明会などを開くことはなく、一方的な通告だったといいます。

そして、住民にとってはもっと深刻な不安があります。保育所の建物が立った場合、住宅から一番近いところで約1メートルしか離れていないのです。

事前の説明が一切なかったことに不安を募らせていた住民ですが、「計画変更は行わない」と話す事業者への不信感を一層強める結果となりました。

また、自治体が認可している保育所の場合は事前に建設予定地などを把握できるため、事業者に対して周辺住民への説明を行うよう指導することができますが、今回のような認可外の保育所の場合は事前に届け出る必要はなく、事業者は開園した後、1か月以内に届け出を出せばよいことになっているため、事前に把握することが難しいのです。このため、事前の説明会などに関しては今のところ事業者の主体性に任せるしかないのが現状です。専門家は「保育施設にとって、地域の理解は不可欠だ」と話します。

https://www.mbs.jp/voice/special/archive/20180723/ より引用

運営事業者は株式会社ISKAR、設置場所は吹田市江坂2丁目

気になるのは「運営事業者と設置場所」でしょう。運営事業者は株式会社ISKARです。

吹田市江坂町5丁目で「ちびっこランド 服部緑地園」、及び総合幼児学院WARABE江坂児童園を運営しています。

そして新設園の建設が進んでいるのは、吹田市江坂2丁目17-19(住居表示は推定)です。これまで駐車場として利用されていた土地です。地区の南東側が名神高速道路と接しています。

利便性は良い場所です。江坂駅の北西側、駅まで名神高速道路をくぐって歩いて約10分という場所です。保育園へ子供を預け、徒歩で江坂駅へ向かって梅田等へ通勤するスタイルが想像できます。

記事では「閑静な住宅街」とされていますが、私の印象は若干異なります。建設予定地は府道134号線に接しています。そして地区の南東側は名神高速道路、北側は府道145号線に接しています。三方向を交通量が非常に多い道路に囲まれています。

こうした土地の為か、地区内は駐車場が目立ちます。隣接している他地区と比べても、駐車場として利用されている土地の割合が突出しています。自動車交通量が非常に多い地域と言えるでしょう。

とは言え、自宅から1メートルしか離れていない場所に保育園が建設されると、日中は子供達の声が聞こえ続けるでしょう。日中を自宅で過ごしている世帯にとっては一大事です。

また、法的な問題が無いとしても、近隣住民等への説明を行わずに建設を強行すると、開園後に様々な問題が噴出しがちです。

地図を見て真っ先に感じたのは、送迎・業務用車両の駐車です。保育園前の道路(府道134号線)に駐車する車が相次ぎ、著しい交通渋滞や事故が生じるでしょう。

外遊びも問題です。最も近い染の井公園へ遊びに行くには、交通量が多い道路の路肩を歩かなければなりません。安全に行き来する為には、地元住民の配慮が不可欠です。

十分な説明をなくして建設を強行した場合、こうした開園後の諸問題を解決する糸口が何らありません。安全・安定的な保育を行い続けられるのか、少し心配です。

なお、記事で事業者が「計画変更は行わない」と主張していました。が、改めて図面を引き直し、再度建築確認等を行うのは物理的に可能です。諸経費の追加支出・工事日程の遅延・開業日程の延期を危惧した発言でしょう。

企業主導型保育は国主導、都道府県・政令市が監督指導、吹田市はノータッチ

認可保育所や地域型保育事業(小規模保育等)を新設する場合、原則として自治体の公募選定を経る必要があります。選定前後のプロセスにおいて、自治体は立地の適正さや近隣住民等への説明等を審査・指導等を行えます。

仮に建設中に何らかのトラブルが生じても、自治体が間に入る形で対応する事が可能です。

しかし、企業主導型保育は少し異なります。制度設計は内閣府、助成手続は公益財団法人児童育成協会(厚生労働省の外郭団体)、届出や指導監督は都道府県・政令市が行います。

基礎自治体(市区町村)が行うのは、利用希望者への情報提供等に限られています。


http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h280725/pdf/s1-3.pdf

上記記事には吹田市からのコメントが記載されていません。こうした事情からか、吹田市は情報を得ておらず、またコメントする立場にも無かった為ではないでしょうか。

既に工事に着工している以上、改めて図面を引き直して建築計画を変更するのは非常に難しいと感じます。しかし、このまま建設を強行しても、良い結果は見えてきません。