保育無償化の財源について、政府は消費税増収分や経済界からの拠出を検討していました。

経団連 3000億円拠出を容認 教育無償化などで(毎日新聞)

一方、現在の利用者負担分(保育料)を誰が負担するかも検討されています。その中で、現在の公費負担割合と同じ割合で国・都道府県・市町村が負担する案が軸になっていると報道されました。

この案の通りとなれば、公立保育所の維持に大きな影響を与える恐れがありそうです。

保育無償化の費用負担 私立は国、都道府県、市町村で2対1対1、公立は市町村全額が軸 政府検討、認可保育所

平成32年度から本格実施する保育無償化の費用について、政府が私立の認可保育所は国、都道府県、市町村(東京23区含む)が2対1対1の割合で、公立の認可保育所は市町村が全額を負担する案を軸に検討していることが16日、分かった。地方自治体からは国に全額負担を求める声も出ているが、政府は子育て環境の整備に国・地方が協力して臨む体制をつくる考え。

保育無償化は、安倍晋三政権の看板政策「人づくり革命」の柱の一つ。昨年12月に決めた「政策パッケージ」では、0~2歳の保育は住民税非課税世帯を、3~5歳は所得を問わず認可保育所を全世帯無償化するとした。認可外をどこまで対象とするかは、今年の夏までに決める。

政府は、認可保育所の無償化に必要な費用は国と地方で分担する方針。負担割合は現行の「子ども・子育て支援新制度」を参考にする。現行制度では、認可保育所の運営費は、国が決めた公定価格から市町村が決めた利用者負担額(保育料)を差し引いた部分を、公費で負担している。

公費負担のうち、私立は国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつを負担し、公立は市町村が全額負担している。市町村は別途独自に支出し、利用者の負担額を引き下げることもできる。厚生労働省によると、国の負担額は29年度予算ベースでは7510億円となっている。

32年度から本格実施する無償化では、現在の利用者負担分も公費となる。自治体には「財政負担がかさむため、全額を国で持ってほしい」(東京23区の保育担当者)との声もあるが、政府は原則、現行制度と同じ負担割合とする考え。

財源には31年10月の消費税増税分の国税分と地方税分を充て、不足分は一般財源などから回す方向だ。

http://www.sankei.com/politics/news/180117/plt1801170001-n1.html

記事だと分かりにくいので、図で説明します。便宜的に私立保育所の総運営経費(3-5歳児分)を「1000」、利用者負担額は「200」とします。

私立保育所現行検討案
400500
都道府県200250
市町村200250
利用者負担2000
総運営経費10001000

現在は私立保育所の総運営経費(200)の内、利用者負担(200)を除いた800について、国(50%)・都道府県(25%)・市町村(25%)が負担しています。

保育料無償化によって利用者負担が無くなる分については、国・都道府県・市町村が現行割合通りに負担するとされています。国の政策判断により、都道府県・市町村の負担が増える形です。

このしわ寄せが及びかねないのが公立保育所です。

公立保育所現行検討案
00
都道府県00
市町村225300
利用者負担750
総運営経費300300

保育料無償化によって利用者負担(75)が軽減される分については、全て市町村が負担する案が検討されています。結果、公立保育所の運営経費は全て市町村が負うとされそうです。

財源に余裕がある自治体ならまだしも、そうでない自治体にとって軽減される保育料(私立保育所は軽減額の1/4、公立は全額)を負担するのは決して軽くないでしょう。

となると、こうした負担額をどこから捻り出そうと考えるのでしょうか。思いつくのは公立保育所です。公立保育所を廃止・民営化できれば、市町村の負担が劇的に減ります。

大阪市が行った推計によると、民間委託で6,600万円、休廃止によって8,200万円の歳出が削減されるそうです。


公立保育所新再編整備計画より

既に全国各地で公立保育所が減少する傾向が現れています。民営化の是非には賛否両論があるでしょう。

また、保育無償化によって市町村の負担が増す結果、私立保育所の新設にも待ったが掛かりかねません。

保育無償化は最も望まれている施策なのでしょうか。働き方・地域・収入・環境等によって、子育て支援に対するニーズは大きく違うでしょう。実際に子育てしている世帯の声を聞き、慎重に検討して欲しいです。