H28保育所等一斉入所結果分析、4回目は区毎・施設種別毎の入所決定状況を考察していきます。

子供子育て支援新制度が始まって2年目、新制度導入後では初の一斉入所となりました。保育所・認定こども園・小規模保育・家庭的保育、それぞれの施設の新規入所者に点数の違いはあるのでしょうか。

大阪市では保育所等毎の入所者の点数(10点刻み)を公表しています。このデータを利用します。

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大阪市の保育所入所待機児童数について(平成28年4月1日現在)より作成
(190点以上の欄を黄色、160点以下の欄を水色にしています)

高得点入所者が多いのは天王寺区・西区・中央区

入所者の平均点(191-200点に属する入所者は中間値の195.5点と仮定、他も同様)が高かったのは、天王寺区(195.1点)・西区(195.0点)・中央区(193.7点)でした。入れ替わりはあるものの、この3区は昨年も上位3区でした(詳細はこちら)。

昨年と比較すると、天王寺区・中央区はやや低下した一方、西区は上昇しています。前2区は年度始まりに合わせて保育施設の新設が積極的に行われたのが原因でしょう。西区は新町第2保育所が一斉募集から外れたのが大きな理由でしょう。

190点を超えているのは、阿倍野区・都島区・福島区・北区です。いずれも都心部にある区です。こうした区で保育所等へ入所するには、殆どの場合で「フルタイム共働き」が前提となります。

「天王寺区・西区・中央区・阿倍野区・都島区・福島区・北区は保育所入所が難しい」と理解して頂ければ、概ね間違いありません。

この7区、実は昨年も上位7区でした。保育所等が新設されているとは言え、中心部がそれ以外の地域より入所しにくい傾向に変化はありません。

保育所・こども園と地域型保育、入所者平均点に大きな違いが

新制度の導入により、保育所以外に様々な保育施設が展開されています。種別毎の入所傾向に違いはあるのでしょうか。

入所者の平均点にはっきりとした違いがありました。保育所(182.6点)・こども園(182.0点)と比べ、小規模保育(173.6~169.3点)・家庭的保育(164.9点)となっていました。概ね10~20点程度の違いが生じています。

これは端的に「ほぼ全ての第1希望が保育所・認定こども園に集中している」のが原因です。広い園庭を有して長年に渡って地域に根付いて保育を行っている保育所・こども園と比べ、園庭がない・歴史が浅い地域型保育事業は分が悪いです。

3歳の壁

決定的な理由は「保育年齢」です。保育所・認定こども園は原則として0-5歳までの保育(一部は教育)を行っています。しかし、地域型保育事業は「2歳まで(満2歳を迎えた年度末)」までが原則です。

地域型保育事業へ入所した場合、3歳児からの保育施設を探す必要があります。保護者・児童にとって負担が掛かります。3歳児でも入所できる施設は決して多くありません。いわゆる「3歳の壁」です。

また、きょうだい児を育てている家庭ではより深刻です。下の子供が地域型保育事業を利用する場合、殆どの家庭で上の子供は年齢が合わずに他の保育施設を利用する事となるでしょう。極めて負担が重い「2カ所保育」を強いられます。小学生がいたら「3カ所保育・教育」です。

こうした理由から、殆どの保護者は保育所・こども園を第1希望としているのが実情です。

市中心部は地域型保育事業の平均点も高い

区毎で見ていくと、より状況が見えてきます。保育所と地域型保育事業の入所者平均点を比較してみます。

市中心部は保育所の平均点がより高くなっています。中心部では地域型保育事業の平均点も決して低くありません。特に西区は違いが小さいです。これは、地域型保育事業へ入所するのにも一定以上の点数が必要だという状況を物語っています。

全施設への入所者平均点が190点を超えた7区は、地域型保育事業の平均点も180点を超えています(福島区は179.9点)。フルタイム共働きに準じた点数が求められています。

優先入所枠がある施設は更に高点数が必要

中には保育所並みの点数が必要だったという地域型保育事業もあります。典型例はおひさまルーム(地域型保育B型・西区)です。この施設には西六保育園への優先入所枠が設けられています(詳細はこちら)。運営法人も同一です。

その為、「3歳の壁」を考える必要がありません。実質的に西六保育園の分園的な位置づけでしょう。付近の地域型保育事業と比べ、入所者平均点が突出しています。

地域型保育事業とは言え、優先入所枠の有無は大きな違いです。しかし、枠が設けられていたとしても、入所先が離れた地域だと登園が困難かもしれません。

この事例に当てはまるのは、たいようランド(西区)です。キッズファーストへの優先入所枠がありますが、施設は東成区にあります。西区から東成区、登園するのは容易ではありません。優先枠があっても利用しづらいです。

市中心部以外の地域型保育は入所しやすい

一方、それ以外の地域はどうでしょうか。

保育所入所平均点は市中心部よりやや低くなっています。地域型保育事業の平均点は更に低くなっています。保育所と地域型保育、概ね30点程度の違いが生じています。

中心部と比べ、それ以外の地域は相対的に保育所へ入りやすい状況です。地域型保育は入所希望者がより少ないのが実情です。短時間勤務等、やや低い点数であっても入所できるケースが少なくありません。

保護者ニーズと食い違う地域型保育

保育所と地域型保育事業、入所者の点数の違いは明白でした。前者が明らかに宇和間っています。

地域型保育事業は地域における多様な保育ニーズへの対応という名目でした。しかし、「保育所が第1希望だったが入所できず、地域型保育へ入所した」というのが専らでしょう。

待機児童対策としての効果はあります。特に土地が少ない都心部では効果的でしょう。しかし、3歳児以降の保育先は保護者の自助努力に丸投げされています。

未就学児の減少が続く都心部以外では、地域型保育事業の新設が止まりかけています。平成29年4月1日に開所を予定する地域型保育事業は、都心部以外の地域の大半で開所が見送られました。

タワーマンション等への転入が相次いでいる都心部でも壁に当たっています。地域型保育事業が新設されても、保護者の第1希望が保育所へ集中する傾向は変わりません。今後、入所するのに必要な点数が更に高くなる懸念もあります。

次回は入所するのに必要な点数が特に高い保育所を取り上げ、その背景を見ていきます。