周辺住民の反対により、千葉県市川市菅野に開園予定だった保育園が開園を断念しました。

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(4/13追記)
当初投稿を掲載してから判明した事項が多く見受けられたので、内容を大きく変更した投稿を掲載しています。
・【市川市・保育園開園断念】前面道路は幅員3mの抜け道、交通量多い
・【市川市・保育園断念】設置予定法人は成未会(松戸市)・近隣20戸が団結して反対
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千葉県市川市で4月に開園予定だった私立保育園が「子供の声でうるさくなる」などの近隣住民の反対を受け、開園を断念していたことが分かった。同市の待機児童は373人で全国市区町村で9番目に多い(昨年4月時点)。説明会に同席するなどして地域の理解を求めてきた市の担当者は「(住民の反対で)開園が延期したケースは東京都内などであるそうだが、断念は聞いたことがない。残念だ」と言う。

市によると、同県松戸市の社会福祉法人が3月に木造2階建ての園舎を完成させた上で、4月1日に定員108人(0〜5歳児)で開園する計画だった。予定地は市中心部に近い住宅街で、昨年8月に開園を伝える看板を立てたところ、反対運動が始まったという。

住民側は市や社会福祉法人に対し、計画撤回の要望書を提出。社会福祉法人による説明会も複数回開催されたが、「子供の声が騒音になる」「保育園が面する道路は狭いので危険だ」などの意見が強く、建設に着手できなかった。市によると、これまでも市内で他の保育園開園への反対はあったが、最終的に合意を得られていたという。

社会福祉法人は3月下旬の理事会で断念を決定。理事長は「保育園は地域の皆さんから見守ってもらえなければ成り立たない。無理だと判断した」と話している。

http://mainichi.jp/articles/20160412/k00/00m/040/070000c

断念したのは(仮称)ししのこ保育園市川

市川市のウェブサイトに「平成28年4月開設予定の認可保育園について」と掲載されています。これによると、開園を断念したのは「(仮称)ししのこ保育園市川」です。「開園中止のお知らせ」も掲載されています。

平成28年3月
○「ししの子保育園市川」開園の中止について

平成28年4月開園を予定しておりました「ししの子保育園市川」につきまして、諸般の事情により開園が中止となりました。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

同保育園は昨年11月の時点で開園を延期するとしていました。入園を取り消された園児がいなかったのが救いです。

平成27年11月19日
○平成28年4月開園を予定しておりました(仮称)ししの子保育園市川につきまして、開園が延期となりましたので、記載内容を削除しました。
http://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000215540.pdf

保育施設利用のご案内及び報道によると、開園を予定していた場所は「市川市菅野4-1-9(リフォーム会社の跡地)」だと考えられます。京成本線菅野駅から北東へ徒歩5分、戸建住宅が密集する地域です。

建設予定地は駐車場の南西側、オレンジ色の屋根と黒色の屋根に挟まれた場所です。白い屋根が見えるか、もしくは更地化されて表示されています(当初の記述を訂正します)。

あくまで推測となりますが、保育園を建設する予定だったのは街区の北東部、駐車場がある場所だと考えられます。経験上、農地からの転用はやや考えにくいです。
2015年4月に撮影されたストリートビュー、左奥をよく見ると駐車場を測量している人が確認できます。建設へ向けて1年前から準備していたのかもしれません。
ストリートビューで見える建物は現在は撤去されています。建設予定地は更地となっています。

予定地は主に30-40年前に形成された住宅街の真ん中

建設予定地は西側で幅2メートル程度の道路に接しています。自動車がゆっくり通過できる程度の道幅です。報道によると、道路は南側への一方通行でした。保育園へ自動車で送迎する場合、車輌が北へ北へと連なる恐れがあります。何らかの方法により、保育園前の道路へ送迎車輌が進入しない措置は必要でしょう。

この地域は主に戦後に住宅街が形成された様子です。終戦直後は北側道路の南部に少しずつ住宅街が形成されようとしている段階でしたが、北部は田畑ばかりが広がる地域でした。

1970年頃から北部の田畑が住宅化されてきました。1985年頃には建設予定地は戸建住宅に囲まれていました。当時の戸建住宅の主たる購入層は30代~40代、現在は60代~70代となっていると考えられます。建設予定地は街区のど真ん中です。仮に保育園が建設されたら、定年退職の後に閑静な自宅でゆっくり過ごしている老夫婦の生活を子供の声が直撃するでしょう。

北東100メートルの住宅街に市立保育園がある

一方、この地域には既に保育園があります。予定値の北東100メートルの場所に市川市立菅野保育園があります。ここも住宅街に囲まれています。設置されたのは住宅街の形成と同時期である1980年頃です。設置当時は東側を除いて田畑が広がっていました。現在も北側・西側が駐車場として利用されています。

開園中止に追い込まれた保育園と開園から約35年が経過している市川市立菅野保育園、最大の違いは「保育園と住宅街、どちらが先に出来たか?」という点でしょう。保育園が先に設置されていれば考慮して住宅を購入できる一方、後から設置されると定年後の閑静な生活(保護に値するかはさておき)が侵害されかねません。

毎日新聞の記事では「保育園が面する道路は狭いので危険だ」という意見も採り上げられています。しかし、菅野保育園が接する道路も幅が狭く、駐車場に囲まれているので通行量も少なくないでしょう。本質的な意見は「定年後を過ごす住宅の目の前に保育園を建てて欲しくない」でしょう。

閑静な住宅街で難航しやすい保育園新設

全国的に保育園の新設が少しずつ難航し始めています。特に、市川市菅野の様な閑静な住宅街で目立ちます。関西でもたとえば芦屋市で開園断念に追い込まれたケースが発生しています。

残念な情報です。先般お知らせしました待機児童数の多い精道圏域の呉川町に来年春開設予定だった0~5歳児、定員50名の認可保育所(事業者 山手圏域で認可保育所経営の蓮美)が建設予定地周辺の住民の方々の反対の声があるとして、新設を断念されました。(3月3日民生文教常任委員会報告)
よりよい保育・幼児教育を考える芦屋市民の会

逆に、騒音問題は発生しにくい商業地・オフィスビルでの設置の方が反対が少なく進む現象も生じているそうです(賃料という問題は発生しますが)。

こうした反対運動を快くなく思っていた住民もいるでしょう。保育園に入れなくて困っている子育て世帯が典型例です。しかし、こうした世代は仕事と子育てに忙しく、地域における町内会活動等にあまり関わっていないのが実情です。また、町内会活動等は老人や地域名士の声が大きく、若い世代が声を上げても無視されがちです。

順調に保育園が設置されていれば、今頃は入園式を終えた子供達の声(泣き声)でさぞ活気が溢れていたでしょう。様々な事情があるにしろ、残念なニュースでした。