少し前となりますが、2025年8月29日に第23回大阪市待機児童解消特別チーム会議が開催されました。
気になった資料を引用します。
大阪市でも急激な少子化が進行、保育ニーズは微増
西日本を代表する都市である大阪市でも少子化が進行しています。
6年前の2019年の就学前児童数は123,030人でしたが、2025年は106,037人へと減少しています。6年間で約17,000人、1学年あたりは約3,000人減少した構図となります。0歳児に限りると6年間で4,000人も減少しました。
一方で保育ニーズ(申込者数)は横ばいから増加に転じました。コロナ禍の頃はほぼ横ばいでしたが、コロナ禍明けや第2子保育料無償化が実施された頃から増え始めました。
就学前児童数が減少しながらも保育ニーズが増大しているという事は、保育を必要とする割合が急激に上昇している事態を示しています。
保留児童の大半は1歳児
利用保留児童の半数以上を1歳児が占めています。1歳児申込者の内、2割以上が保留となっています。他の年齢とは保留率が全く違います。1歳児入所枠が決定的に不足しています。
とは言え、1歳児入所枠だけを増やすのも容易ではありません。単純に増やしてしまうと、2歳児入所枠が減少してしまいます。2歳児以降の入所枠も維持しようとすると、総定員を増やさざるを得ません。面積基準や保育士配置基準との調整も必要となります。
整備実績は目標の半分未満
保育所等の不足に対し、大阪市はやや高めの目標を設定して整備等を進めています。
しかしながら、令和6年度の整備実績は目標の約55%、令和7年度は約32%(8月22日時点)に留まっています。特に地域型保育事業は応募が非常に少なくなっています。
大きな一因は保護者からのニーズの弱さでしょう。殆どの保護者は6年保育を行う保育所等を第1希望としています。0-2歳児の保育を行う地域型保育事業だと3歳児から別の施設へ転じなければなりません。
こうした課題を解消する為、既に約8割の地域型保育事業は卒園児の受け皿をなる連携施設を設定しています。
ただ、3歳児クラスの受け入れ上限もある為、希望する卒園児全てが連携施設へ入所出来るとは限りません。別の地域にある施設を連携施設としており、登園するのが困難という事例も少なくありません(異なる区にある本園を連携施設とする場合など)。
解消するのが難しいのは2か所保育です。0-2歳児以外の未就学児がいると、必然的に2か所保育をなります。毎日の朝夕に2か所の保育施設を回るのは、子育て世帯にとって極めて負担が重いです。
認定こども園への移行は好調
反対に好調なのは保育所・幼稚園から認定こども園への移行です。
特に私立幼稚園が認定こども園へ移行した場合、0-2歳児向けの保育枠を設置できます(任意)。保護者としては、小学校入学まで同じ施設へ通い続けられるという安心感があります。
ただ、長時間保育を必要とする家庭の場合、幼稚園での長時間預かりが難しい(利用者が殆どいない)という障壁があります。
そこで一部のこども園や幼稚園では、0-2歳児の保育枠を地域型保育事業として運営している施設もあります。長時間の保育を必要とせず、地域に古くからある幼稚園へ通いたいというニーズに合致します。
マンション入居者優先保育施設は第1希望殺到
大規模マンション内に保育施設を設置し、入居者が優先的に利用出来る制度が徐々に広がっています。既に4か所が開設され、2026年4月からは更に2か所が開所します。
いずれの保育所等も数多くの第1希望が集まっています。反対に第1希望が集中しすぎてしまい、マンション入居者であっても入所出来なかったと考えられる事例が発生しています。
第1子保育料無償化の是非は?
大阪市は第1子からの保育料無償化を検討していますが、課題が少なくありません。保育ニーズの増大により、更なる入所枠が必要となります。保育所等を利用しない方への在宅等育児の支援も必要です。
この資料では触れられていませんが、申し込んだが入所できない方からの不満感・不公平感は極めて強くなるでしょう。入所出来たら無償で保育所等を利用出来るのに、認可外保育施設や企業主導型保育施設を利用すると月数万円の保育料が必要となります。余りに大きすぎる違いです。確実にクレームが発生します。
職住近接や住みやすさの改善が評価されたのか、大阪市は20代~30代で大幅な転入超過となっています。0-4歳児の転出超過数は年々減少(=社会減が減っている)、30-34歳は転出超過から転入超過に転じました。婚姻数や妊娠届出数も反転しています。
これらはいずれも数年後に児童数が増加する可能性を示唆しています。児童数が回復する局面で第1子保育料無償化を実行したら、入所保留児童がますます増えるのではないかという懸念が伝わる資料です。保育施設の整備や保育人材の確保も難航しています。
第1子保育料無償化によって最も大きな恩恵を受けるのは、高額の保育料を支払っている高所得世帯です。こうした世帯の多くはフルタイムで共働きしています。入所調整制度にて高い点数が付き、保育所等への入所しやすくなっています。
反対に低所得世帯にとっては保育料の節減額は小さいです。フルタイムでは無く、短時間で働いている方が多いです。第1子無償化によって保育ニーズが高まると、保育所等へますます入所出来なくなりかねません。より保育を必要とする、社会的に弱い立場の世帯が弾き出される構図です。
第1子保育料無償化の可否は、明日12月3日に開催される第24回大阪市待機児童解消特別チーム会議や令和8年度予算編成過程にて示される見通しです。第23回会議の資料を見る限り、市の担当部局は現時点での第1子保育料無償化をネガティブに捉えていると受け止めました。
私自身は子育て世帯間の経済的格差を助長する、第1子保育料無償化には否定的な立場です。もちろん既に第1子が保育所等の利用を終了したという、個人的な立場は否定しません。卒園までの6年間で100万円以上の保育料を支払った記憶があります。
仮に導入するのであれば、保育所等の利用を希望する子育て世帯が容易に入所出来る程度の施設整備が前提です。「保育所等」の定義を認可外保育施設や企業主導型保育にも広げ、保育所等を同程度に公費を投入する(施設補助や利用者補助)という考えもあります。
2026年度一斉入所においても一部の区の1歳児には申込者が殺到しました。「点数が高くて入所出来れば第1子から保育料無償、点数が低くて入所出来なければ月数万円の保育料」に納得できますか?










