大阪府の吉村洋文知事は24日、府立の高校と支援学校のうち、築年数が30~60年ほどの約130校について、普通教室の内装をリニューアルする「美装化」に取り組むと発表した。昨年度から一部の学校で試験的に実施し、来年度から対象を広げて5カ年計画で進めるとしている。吉村氏は「生徒にとって教室は自宅より長く過ごす場所。少しでも快適にしたい」と語った。

同日午前、今夏に美装化を行った府立泉陽高(堺市)を視察した吉村知事は、壁面を生徒が選んだ黄色で塗り替えられた普通教室を見渡し、「美装化でこれほど雰囲気が変わるとは」と笑顔。壁面の色選びなどで学校づくりに関わった生徒は「教室が明るくなり勉強へのやる気が上がった」と話した。

府教育庁によると、美装化は普通教室や廊下などの床材の貼り替えや、天井・壁面の塗り替えなどをすることで内装をリニューアルする。老朽化が進んだ校舎の建て替えには多額な費用がかかり、計画から完成まで約10年を要するため、建て替えを待つ間も生徒が校内で快適に過ごせるよう検討を進めていた。

計画にあたり、令和6、7年度で泉陽高を含め7校をモデル校に指定し、美装化を実施中。泉陽高では3年生8学級で工事を行い、費用は約1500万円。工事は生徒不在の夏休みや冬休みを利用して行う。比較的新しく塗料の傷みなどが少ない築30年未満の校舎と、老朽化で建て替えが急がれる築60年超の校舎は対象外としている。

https://www.sankei.com/article/20251024-KMGB2XJUJFJ2PDTE6VKROG2EDQ/

「美装化」を先行実施した府立泉陽高校がブログで詳細を公表しています。

3年生の教室の床、何色にする?
校舎の改修工事が本格化
吉村知事、来校

これによると、「普通教室の内装リフォーム」として、壁・天井の再塗装や床の張り替えを行いました。

リフォームを選択した理由として、大阪府の担当者は「予算と期間」を挙げています。詳細は「令和7年度第1回大阪府総合教育会議」で議論されていました。

大阪府の吉村知事が民間住宅での内装技術を学校へより転用できないかと訊ねたところ、教育長からは複数校でリフォームを実施して子供達からも好評であるとの返答がありました。

(知事)
・今よく考えると、皆さんが住んでいるマンションの団地とかでも一棟をそのまま建替えとか、僕らも府営住宅でもちろんやってますが、今内装技術がすごく高くなってきていて、美装化すると実は新品と変わらないぐらいの家ができたり、躯体を残したままというのは結構民間では普通にあること。ならばそれを学校でもできないのかなと思っていて。学校の耐震性は基本あるわけじゃないですか。(中略)

(教育長)
・ちなみに昨年度、夏休みを利用しまして2校、実際内装リニューアルを行いました。
・YouTube の方にも上げてるんですが、三国丘高校と泉大津高校、大変綺麗になってます。
・子どもたちの声を聞いたところでも、よくやってくれました、ありがとうございますという声は聞いています。
・なお、今年度のこの夏でも3校、内装リニューアルを進めているという状況です。
・やはり今後、この内装リニューアルという手法をもう少し予算を取っていって広めていければと検討しています。
・なお、食堂も内装のところに当てはめていってはどうかなと、魅力化という意味合いでは大切な要素かなと議論をしているところです。

令和7年度第1回大阪府総合教育会議議事録

リニューアル後の教室や生徒の感想がYoutubeに掲載されています。

一方、当ウェブサイトでは「府立高校の老朽化問題」を何度も指摘しています。
老朽化が深刻な大阪府立高校、築70年以上で改築予定
老朽化等による要改修箇所が約24000件も 大阪府立学校

府立高校の老朽化は何より子供自身が深刻に捉えています。府立高校を避けて私立高校へ進学した理由として、「府立高校が古すぎる」「トイレが汚すぎる」といった設備面の不備を挙げた生徒が少なくありません。

また、多くの府立高校は老朽化が深刻です。やっと建て替えが決まった寝屋川高校は築80年の校舎を利用しています。もう何十年も前から「建て替えて欲しい」と言った意見が噴出していたでしょうが、大阪府は重い腰をなかなか上げませんでした。

今回のリフォームを大阪府や府知事は「自画自賛」しています。しかし、保護者目線では「老朽化批判に耐えきれず、限られた予算で行える弥縫策を選択した」かの様に見えます。

府立高校約130校でリフォームを行うに至った決断を後押ししたのは、「府立高校の志願者急減」も一因でしょう。私立高校の授業料無償化により、府立高校への志願者は急減しました。

令和7年度入試では約半数もの府立高校が定員割れしました。その中には、築80年の校舎を有する伝統校たる寝屋川高校も含まれています。

全日制高校128校の内、65校が定員割れ 大阪府公立高校一般選抜(令和7年度)

本来は私立無償化よりも先に公立高校へ様々な投資を行うべきでした。予算の使い方が間違っていました。

そもそもリフォームを大々的に報じるのもおかしな話です。たとえば賃貸住宅に入居する際は、前の居住者が生活していた痕跡が残らない様に壁紙を貼り替えるのが一般的です。傷ついた床材も交換します。徹底的なクリーニングも行います。

しかしながら、学校ではこうした対応はなかなか行われません。できれば毎年、少なくとも数年ごとに定期的なリフォーム等を行うのが当然の筈です。何十年も行わず、老朽化した校舎の建て替えの代わりにリフォームを行うのは筋違いです。

教室や廊下等をリフォームしたとしても、古い時代に建てられた校舎はそのままです。校舎自体の設計は古いままです。特に教室の狭さや断熱性の悪さにはどうにもなりません。

府立に通っている子供は、「空調は効きすぎるぐらいに効くが、教室が狭くて古くさい」「トイレは昭和、怖い」「校舎がどこも薄暗い、ほこり臭い、虫が多い」「体育館は蒸し風呂」「部室はサウナ部屋」と酷評しています。改築すべき状態ですが、改築話はありません。

リニューアル対象はどこ?

一方、これから府立高校を受験・進学したいと考えている方々にとっては、「リフォーム対象となる高校」が気になります。対象となるのは、築年数が30~60年ほどの約130校(府立高校100校と府立支援学校30校)です。具体的には昭和40年~平成初期までに建築された校舎です。

具体的な学校名を指摘するのは難しいのですが、「棟別耐震性能一覧表【府立学校】」に記されている建設年度から推測できます。

意外にも殆どの校舎が築30年~60年でした。平成中期以降に新築された校舎が殆どない為です。むしろ築60年以上という、改築(建替)対象となっている高校を数えた方が早いぐらいです。

大阪府立高校は昭和40年代や50年代に建築された校舎が非常に多いです。今に至る50年余りの間に適切なリフォームが行われていなかったのであれば、驚くしかありません。「社会の常識は学校の非常識」と言われるぐらいです。

不安なのは、リフォーム対象から外れた築60年以上の学校です。吉村知事が認めている通り、改築には長い時間が掛かります。本来はもっと早くから改築に取りかかるべきでしたが、大阪府は先送りを続けました。今後10年以上が使い続けると考えられ、中学生の志願離れが加速しそうです。

府立高校と同様に劣化が深刻なのは大阪市立小中学校です。一部の学校で大規模修繕やリフォーム等は行われていますが、いかんせん建物の作りが古すぎると感じています。

学校による違いも大きいです。日々の清掃や管理を適切に行う事によって綺麗な校舎を維持している学校もあれば、適切な清掃を行わずに砂埃やゴミ等を持ち込んで校舎が日に日に傷んでいる学校もあります。

適切な時期に校舎を改築・リフォームする事も重要ですが、児童生徒の使い方も重要です。清掃が行き届かない校舎で過ごして子供は、自宅を汚しても平気な顔をしています。思わず雷を落としています。