子育て世帯が直面する問題の一つは「住居」です。周囲でもより良い住居環境を求めて大阪市外へ転居する方もいれば、利便性の高さや勤務地への近さを求めて大阪市内へ転居してきた方もいます。
決して簡単とは言い難いものの、小中学校の転校手続は滞りなく進みます。義務教育なので、転居先自治体には受け入れ義務が発生します。どの学校も転出入の扱いには慣れているので、転出先学校や自治体の指示通りに進めれば問題ありません。
複雑なのは保育所等に関係する手続です。転出先の自治体にある保育所等へ新たに申しこみたい方もいれば、しばらくは大阪市内の通い慣れた保育所等へ登園したい方もいます。住んでいる自治体の保育所等より、勤務地に近い大阪市内の保育所等へ通わせたい糧もあります。
大阪市と他自治体が複雑に交錯する保育所等への申込みはどの様に考えれば良いのでしょうか。いわゆる「広域利用申込」です。大阪市淀川区役所の保育担当が手続・必要書類・留意事項等を詳しくまとめています。
認可保育施設等の広域利用申込について(淀川区から大阪市外への申込または大阪市外から淀川区への申込)
https://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/page/0000659559.html
「淀川区から~」と標記されていますが、「大阪市から~」と読み替えても差し支えありません。
組み合わせは8パターンです。現住所・新住所・保育所等の所在地につき、大阪市内かそれ以外かでパターン化されます。淀川区役所が記した5パターン(表の上部)に加え、それ以外の3パターンを補足しました。
| 現住所 | 新住所 | 保育所等の所在地 | 備考 |
| 大阪市 | A市町村 | A市町村 | 大阪市からの経由申請、もしくはA市町村へ直接申請(転出先によって異なる)。 |
| 大阪市 | 大阪市 | A市町村 | 大阪市からの経由申請。利用出来るのは当該年度末まで。 |
| A市町村 | 大阪市 | 大阪市 | 他自治体からの経由申請。新住所に関する証明書が必要。卒園まで継続利用可。 |
| A市町村 | A市町村 | 大阪市 | 他自治体からの経由申請。利用出来るのは当該年度末まで。 |
| 大阪市 | A市町村 | 大阪市 | 利用出来るのは当該年度末まで。 |
| (以下補足) | |||
| 大阪市 | 大阪市 | 大阪市 | 大阪市での通常申請。 |
| A市町村 | 大阪市 | A市町村 | A市町村の判断による。 |
| A市町村 | A市町村 | A市町村 | A市町村での通常申請。 |
いずれもパターンでも、原則として現住所がある自治体を経由して手続等を行います。新住所や保育所等が所在している自治体へ直接申し込むのではありません。
申込に利用する書類や書式は判断が分かれます。大阪市(淀川区)は「現在お住まいの市区町村の指定がなければ、大阪市の書式をお使いください。(お住まいの市区町村の書式でも申込可能ですが、内容が不足する場合は追加で書類のご提出をお願いする場合があります。)」としています。
申請前に居住している自治体から大阪市へ相談や確認を行ってもらうのが無難です。一般的な他自治体と比べて大阪市の申込書は記入量が多いです。他自治体の書式を利用して申し込んだ後に様々な事項を補充する手間を考えると、初めから大阪市の書式を利用した方が楽だと思います。
新住所と保育所等の所在地が異なる自治体の場合、利用出来るのは原則として当該年度末までです。翌年度以降も利用を希望する場合は、新たな手続が必要です。
なお、大阪市の保育所等の利用調整では大阪市民が優先されます。大阪市民が保育所等の利用を希望する場合は、事由によって保護者1人につき30~100点が付与されます。一方、大阪市民以外からの利用希望は一律20点とされています(保育利用調整基準(令和7年度用))。大阪市民の調整が終わった後も空きがあれば、市外からの利用出来るという意味です。
大阪市外から利用しやすい市境付近にある保育所等や0歳児クラス(市全体)は、1次調整後も空きがある事が少なくありません。市境付近は大阪市内からは通いにくく(勤務先と逆方向になるケースが多い)、0歳児クラスは年度途中に充足する傾向があるからです。
注意して欲しいのは申請期限です。自治体間を経由した申請を行うので、通常の申請より大幅に時間が掛かります。大阪市(淀川区)は「申込先市区町村の締切の8開庁日前まで」としています。ほぼ2週間前です。
手続が複雑、そして転出先の自治体でも保育所等へ入所出来るとは限りません。用具類等を買い直す必要があり、新たな人間関係にも直面します。
その為か、周囲では小学校への入学に合わせて転出される方が多かったです。次に多いのは比較的入所枠が多くて幼稚園も選択できる、2歳児クラスの終了(次から3歳児クラス)に合わせたタイミングです。
特に注意が必要なのは、待機児童・入所保留児童問題がより深刻な自治体への転出です。周辺地域でも大阪市より入所が困難な自治体は多いです。特に子育て世帯に人気がある地域や、保育料の引き下げや無償化によって保育需要が急増した自治体は要注意です。
大阪市を経由して利用申込を行っても、入所出来なければ由々しき事態となります。保育所等の利用調整基準は自治体によって異なります。「大阪市では入れたから、○○市でもきっと大丈夫。」とは言い難いです。
必要なのは転出先自治体や入所候補としている保育所等での情報収集です。入所するのに必要な具体的な点数等は教えてもらえなくても、「共働きが殆ど」「パートの人も多い」「18時以降も多くの園児が在園している」などの情報から推測できます。
また、各自治体が公表している「待機児童数」も有益です。大阪市はようやく0人となりました。数十人以上の待機児童が発生している自治体であれば、より多くの児童が入所保留となっています。大阪市と同等、もしくはそれ以上の入所難という可能性があります。
広域利用申込は手続の複雑さ以上に保育所等の情報が入所しがたい点にハードルがあります。極力現地の役所や保育所等にも足を運び、当事者や関係者から情報を得るようにして下さい。
