(来年3月末で閉園する「アスク宮前平えきまえ保育園」、グーグルストリートビューより)
耐震性の不足を理由として、川崎市宮前区にある「アスク宮前平えきまえ保育園」が来年3月末に閉園する見通しとなりました。4月に入所した直後に知らされた保護者の間に動揺が広がっています。
川崎市宮前区の認可保育所「アスク宮前平えきまえ保育園」が、耐震性に問題があることを理由に、来年3月末で閉園することがわかった。新年度を迎えたばかりの4月に閉園予定が告げられ、保護者らが転園先を探す事態となっている。
同園は2011年、東急田園都市線宮前平駅の高架下に開設された。今年5月1日時点の在籍園児は76人。鉄骨2階一部平屋の1階部分を使っており、全国で保育所などを運営する「日本保育サービス」(名古屋市)が運営する。
東急などによると、今年2月、同社の任意の耐震診断で「震度6~7の地震発生時に倒壊の危険がある」との判定が出た。移転先を探したが、適切な物件が見つからなかったという。
園側は4月下旬、保護者説明会を開いて閉園の方針を知らせた。4月に入園したばかりの園児もいる中、出席した保護者からはとまどいの声が上がっていたという。子供を預ける父親の一人は、「2月にわかっていたなら早く教えてほしかった」と訴える。
東急は取材に「耐震診断の結果は速報値で、事実確認や協議を進めた結果、4月になった」としている。
市は、保護者が転入を希望する園に対し、園児1人当たりの面積といった基準の上限まで受け入れるよう交渉するなどの支援を行っている。日本保育サービスによると、4月入園の13人を含む園児76人のうち、約半数が転園先の内定を得たという。(以下省略)
川崎市や東急などによると、同保育園は、東急が1974年に建てた田園都市線・宮前平駅の高架下の建物を改築。2011年4月に運営主体の日本保育サービス(名古屋市)に貸与する形で開設された。鉄骨2階建て一部平屋建ての1階部分466平方メートルで運営している。
1981年の建築基準法改正前の建物だったため、耐震診断したところ震度6~7の地震で倒壊の危険があるとの判定が出たという。東急は2月、来年3月末に賃貸契約を打ち切る可能性があることを日本保育サービスに伝えた。川崎市は昨年10月から入園希望を受け付け、今年1月には内定を出していたため、募集停止できる時期を過ぎていたという。
運営しながらの補強工事は困難で、市や東急の担当者も交え、4月下旬に保護者説明会を開いた。4月入園の13人にとっては入園してほどなく1年後の閉園を知らされる形になった。
https://digital.asahi.com/articles/AST624JQJT62ULOB00KM.html
アスク宮前平えきまえ保育園は川崎市宮前区宮前平1-12-5に設置されています。東急田園都市線宮前駅から僅か徒歩1分の場所にある、同線の高架下にあります。紛れもなく「駅直結」です。
同駅から渋谷駅へ30分~35分程度、大手町駅へ50分程度で辿り付けます。交通利便性は極めて良く、都内へ通勤する子育て世帯にとっては非常に有りがたい立地です。
高架下の保育施設だと騒音問題が心配ですが、意外と気にならないと聞きます。若干の振動はありますが、様々な設備によって十分な対策が行えるそうです。
ただ、どうにもならない問題もあります。その一つが「耐震性」です。高架橋や高架下の建物は数十年前に建てられた物が少なくありません。当時の耐震基準を満たしていても、現在の耐震基準を下回るのが専らです。
同駅周辺の高架橋は平成末期に耐震補強工事が行われましたが、高架下の建物は手つかずでした。本来は保育施設として賃貸する前に耐震診断を行い、必要な耐震工事等を行うべきでした。
保育を行いながら耐震補強工事を行うという手段も検討されたでしょう。しかし建物が建築されてから50年以上が過ぎており、耐震性以外の部分も老朽化が甚だしい筈です。
工事中に一部の保育室が使えないとなれば、代替保育室等も必要です。何より、高架下の保育所が運営しながら工事を行えるだけの敷地は確保できないでしょうい。
唐突な閉園告知に保護者が戸惑う気持ちは理解できます。
ただ、貸主である東急が行った耐震診断の結果を保育所側へ伝えたのは今年2月でした。2025年4月からの保育所等申込手続は前年11月前に完了していました。仮に2月~3月に保護者へ伝えても、4月からの転所先は容易に見つからなかったでしょう。
また、閉園するのは来年3月の予定です。1年近くの時間があります。2026年度一斉入所手続に置いて、同保育所の在園児を優先的に転所できる扱いとすれば、来年4月から保育の場が見つからないという事態は避けられます。
この4月に入園したばかりの13人や保護者は早々の転所を迫られる事となり、大きな負担を背負わされてしまいます。診断結果が判明した時期が悪すぎました。