大阪市の横山市長が「(企業主導型保育を利用する)第2子以降の保育料無償化の実施を検討するよう担当部局に指示をいたします」と発言しました。

大阪市がことし9月から実施している0歳から2歳の第2子の保育料無償化について、横山市長が、「企業主導型保育施設」も対象に加える意向を示しました。

(中略)
17日の大阪市議会で、大阪市の横山市長は、認可外保育施設の利用が敬遠され、新たな待機児童が発生するのを防ぐため、認可外保育施設のうち企業が従業員のために運用する「企業主導型保育施設」も無償化の対象に加える意向を示しました。

https://www.fnn.jp/articles/-/803115

本会議の録画中継はこちらです。
https://youtu.be/WIgbkCNacrY?si=Q4-LkL-riKcpjpMm&t=1924

上記記事では「意向を示しました」としていますが、市長答弁を聞く限りではやや勇み足だと感じました。市長は「第2子以降の保育料無償化の実施を検討するよう担当部局に指示をいたします」に留めてます。

市長答弁は大西しょういち議員(維新)の一般質問に対するものでした。質問文は同議員のウェブサイトに掲載されています。

次に0から2歳児の保育無償化について、お伺いします。
・横山市長が発表された「0から2歳児保育無償化実現に向けたロードマップ」に沿って、令和6年9月から、まずは、第2子以降の保育料が無償化されたところです。
・対象の保護者からは、「負担が軽減されて良かった」との声を数多くお聞きしてます。
・しかし、今回の対象は認可保育施設等に限られており、企業主導型保育事業については今回対象となっていません。
・そのため、企業主導型保育事業が保護者から敬遠される可能性があり、新たな待機児童が発生するのではないでしょうか。
・市長におかれましては、この第1ステージにとどまらず、すべての子どもたちが平等な子育て支援を受けられるように、ロードマップを最後までやりきっていただきたいと考えます。
・しかし、現状のままでは認可保育所への入所希望が増えて、「保育を必要とする人が入所できる環境の確保」が出来ないおそれがあります。
・そのため、現在、待機児童解消に繋がっている企業主導型保育事業の0から2歳児についても、第2子以降の保育料を無償化すべきと考えますが、市長のご所見をお伺いします。

https://ishinnokai-osakashikai.jp/wp-content/uploads/2024/12/%E2%86%92%E5%A4%A7%E8%A5%BF%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%84%E3%81%A1%E8%AD%B0%E5%93%A1-%E4%B8%80%E8%88%AC%E8%B3%AA%E5%95%8F%E5%85%A8%E6%96%87.pdf

これに対する市長答弁です。全文を引用します。

 2歳児の保育無償化につきましては、0から2歳児保育無償化実現に向けたロードマップに沿いまして令和6年9月から第1ステージとして第2子の無償化を実施しましたが、引き続き最優先で取り組み、令和8年度中に第2ステージである第1子の無償化等を実現できるように取り組んでまりたいと考えております。

 企業主導型保育事業につきましては前提となる国の制度が認可保育施設とは大きく異なるとともに施設の運営実態の把握が困難といった課題もあり、議員ご指摘の通り現在本市の実施する保育料無償化の対象とはしておりません。そのため一部の保護者からは企業主導型保育事業よりも第2子以降の保育料負担のない認可保育施設を利用したいという声が寄せられております。

 現在令和6年度7年度待機児童対策の集中取り組み期間として第2ステージが実現できるよう保育の受け皿確保に努めている中で、企業主導型保育事業が敬遠されることで新たな待機児童が発生するという事態は避けなければならないと考えております。実現に向けて乗り越えなければならない様々な課題はありますものの、企業主導型保育事業の0から2歳児についても第2子以降の保育料無償化の実施を検討するよう担当部局に指示をいたします。

https://youtu.be/WIgbkCNacrY?si=7xmeMDf91Ark3fKT&t=2023

まだ「実施を検討するように指示」した段階です。また、仮に実施されるとしても時間が掛かります。

第2子保育料無償化拡大については、2024年12月11日に行われた教育こども委員会にて「第2子以降保育料無償化の対象を企業主導型保育園まで広げる要望の陳情書」(陳情第199号)が取り上げられました。

同陳情に対し、子ども青少年局長は下記の様な見解を表明しました。
・第2子保育料無償化の対象は認可施設のみ、企業主導型は対象外。
・認可保育施設の保育料は市町村が決定する、国制度として第2子半額がある。
・認可外保育施設の一種であり、事業者が独自に保育料を定め、国制度の第2子半額もない保育事業は無償化対象外とした。
・私的契約による事業者が入所を決定している。入所や保育料決定に大阪市が関与していない。実態を把握するのが困難。
・従業員の福利厚生の為に開設する側面もある。無償化は市税では無く、事業者の拠出金によって国が行うのがあるべき姿。
・国の助成の下、認可保育施設に準じた施設とされている。保護者等から無償化対象にして欲しいとの声も寄せられている。
・ロードマップに則り、幅広い視野に立って検討を進めていく。

次いで宮脇委員(維新)が質疑を行いました。
・第1子が2歳半から認可外、下の双子2人は認可保育所の結果待ちをしている。
・性質や開設数は?
→市職員「地域の児童も受け入れている、令和6年3月末で243施設、3,690人」
・第2子保育料無償化対象外となっている理由は?
→市職員「認可外保育施設の一種であり、事業者が独自に保育料を定め、国制度の第2子半額もない保育事業は無償化対象外とした。入所や保育料決定に大阪市が関与していない。」
・企業主導型保育料を対象外としたら、保護者がますます認可保育所を利用するのではないか。待機児童対策の観点から無償化対象とすべきではないか。
→市職員「一部保護者から同様の指摘があった。無償化は事業者拠出金で行うのがあるべき姿。」
・待機児童対策、既存施設の有効観点から無償化検討を進めて欲しい。
・認可外保育施設や在宅保育等、公平な制度設計をお願いしたい。

更に山田正和委員(公明)も質疑を行いました。
・実務上の取り扱いは?
→市職員「実務は国から委託を受けた財団法人が行っている。設置届を受け、年1回の立入調査を行っている。区役所で情報提供を行っている。在籍児童は待機児童から除外している。」
・認可保育施設と企業主導型保育の類似性を踏まえると、保護者の理解は得られにくいのではないか。無償化の対象とすべきではないか。
→市職員「企業が従業員の福利厚生や人材確保という側面もある(以下省略)。」
・市長が掲げたのは「子育てにかかる保護者の負担軽減を図るという目的」が趣旨ではないか。
・市中心部の区役所で「(初めから)認可外保育施設を考えておいて下さい。」と言われた事もあった。
・保護者視点では認可施設も認可外も一緒。地域の方も受け入れている。検討を進めて欲しい。

各会派の見解に基づき、同陳情は継続審査と決せられました。

企業主導型保育の実情・待機児童問題・第2子保育料無償化拡大の問題点等は、市長・議員・市職員の発言通りです。

子ども青少年局は極めて後ろ向きな態度を崩していません。議員からの質問には問答集通りの答弁を何度も繰り返しました。

ただ、上記質疑等では「第2子保育料無償化により、企業主導型保育が敬遠されている」「認可保育所へ入所させたい」という発言については違和感を覚えました。第2子無償化以前から認可保育所等を第1希望とする家庭や児童が多数でした。

費用面でも無視できない差があります。第2子保育料無償化以前から認可保育所等へ通う第2子の保育料は半額とされていました。今に始まった話ではありません。

一方、保育所等も企業主導型保育も認可外保育施設も同じ「保育施設」です。所管等の違いはあれど、機能面で大きな違いはありません。子ども青少年局は所轄官庁の違い(保育所等は市町村、企業主導型保育は内閣府)や大阪市の関与の濃淡を指摘していますが、子育て世帯としては「縦割り行政」に見えます。

そもそも第2子保育料無償化は国基準を上回る制度です。国制度を理由として企業主導型保育等への第2子保育料無償化拡大を拒絶するのは矛盾した答弁です。国制度に上乗せするのに法令上の支障があるのでしょうか(「ある」という答弁はなかった)。

企業従業員の福利厚生であっても、利用しているのは「大阪市民」です。子育て負担に苦しむ市民に対する助成措置を躊躇う理由にはなりません。

確かに施設によって保育料は違います。福利厚生という側面もあります。だとしても、各家庭が実際に負担している金額に基づいた助成措置(半額助成や一定額までの全額補助等)は可能でしょう。

議論の先行きに要注目です。