大阪市立開平小学校(中央区)の過密化が著しく進行し、遂に分離新設校の新設へ向けた動きが生じています。
的当てをしたりスーパーボールすくいをしたりして楽しむ子どもたち。PTAなどが中心となってお祭りを開いていたのは大阪市中央区の市立「開平小学校」です。学校名は変わりながらも約100年前から続く伝統ある学校で、地域の人々から愛されています。
開平小学校があるのは大阪の都会のど真ん中。中之島公園の南、川を挟んですぐそばの場所に建っていて、周りは高層ビルなどに囲まれています。その都心の小学校がいま、ある問題を抱えています。「グラウンドが狭すぎる」というのです。
(5年生)「思いっきりボールを打ちすぎると越えちゃうから。狭いから」
(保護者)「子どもにとって狭いのが当たり前というのがちょっとかわいそう」
(保護者)「実際に校庭に立ってみると『え、ここが校庭なの?』っていう」サッカーにキャッチボールと思い思いに楽しんでいますが、全てが狭いスペースでひしめき合って行われています。
そのため、こんな場面も…。サッカーをする男の子の頭上をフリスビーが飛んでいったり、別々にキャッチボールをする子どもたちは、近すぎてボールが当たりそうです。
上から見てみると、校舎に対してグラウンドがいかに小さいかが分かります。広さは文部科学省が定める基準の4分の1以下しかありません。あまりに狭いことから休み時間にグラウンドを使えるのは学年ごとのローテーションになっています。(以下省略)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6f702353c70374153f34ab3ef1bd1f0a3898a610
開平小学校はとにかく狭いです。狭い校地の8割程度に校舎が建てられており、残り2割程度が運動場とすら呼べない程の広場となっています。
苦境に陥った原因は小学校の統廃合と児童数の急増です。
開平小学校が誕生したのは1990年4月でした。同地にあった集英小学校と、御堂筋沿いにあった愛日小学校が統合したのが由来です。愛日小学校の跡地には民間商業施設(淀屋橋odona)が建築されました。
当時はドーナツ化現象が進み、大阪市内中心部の児童数は極端に減少していました。大阪経済も良くなかった時代です。90年代後半に夜の淀屋橋を歩いた際には、活気の無さに驚いたほどでした。
統合後は広い地域が学区となりました。北は大川、東西は阪神高速1号環状線、南は博労町通に接した街区までが学区です。中央大通を越えて開平小学校へ通う児童もいます。大人でも歩くのを躊躇う距離です。
しかしながら統廃合から25年ほどが過ぎたあたりから児童数が急増します。2014年には124人だったのに対し、2024年には427人へと急増しました。わずか10年で4倍弱も増えました。更に2031年には700人を越える見通しです。17年で6倍増です。
原因は人口の都心回帰、端的には「タワマン」です。雨後の竹の子の様にタワマンが乱立しました。早い段階から保育所等の不足が問題視されており、数年後に小学校の過密化が問題となるのは明白でした。
学校側の受入能力には限界があります。校舎を増築し、空き教室を普通教室に転用しても追いつきません。体育の授業は、大川を挟んで約1キロメートルも離れた南天満公園を利用しています。真夏の暑い時期には移動する事すら困難でしょう。
上記動画では大阪市の担当者が「都心回帰で中心部に住む傾向がここ10年くらいのこと、状況は読めていなかった」と弁解しています。しかし、少なくとも2018年には今後の児童急増を大阪市が把握していました。当ウェブサイトには2018年3月に開催された「児童急増対策プロジェクトチーム会議」にて配布した資料を掲載しています。
開平小学校(中央区)
・2017年の児童数は245人、2027年は835人(10年で3倍増)、2040年には911人となる見通し。
・敷地内で仮設校舎、6階建鉄骨校舎を建築する。
・中之島公園を仮設運動場として利用したい。
・南高校第2グラウンド跡地(長堀橋駅北)に新設校、もしくは分校を設置したい。
大阪市、高校跡地に小中一貫校・小学校や分校設置、公園の運動場化を検討へ
あれから6年、要約分離新設校へ向けた計画が動き出しました。候補地は上記会議で指摘された「南高校第2グラウンド跡地」です。開平小学校の南約1.7kmの場所にあります。
学区が南北に長い事から、南に離れた場所に新設校を設置するのは地理的観点からも効果的です。敷地面積は開平小学校より広いぐらいです。それもそのはず、この場所には過去に「大阪市立渥美小学校」がありました。
問題もあります。実はこの場所は南小学校の学区内です。下記画像の「南中」と書かれた吹き出し付近に跡地があります。
https://www.city.osaka.lg.jp/chuo/cmsfiles/contents/0000541/541695/gakkouannnai.pdf
候補地が学区外にある事を除けば、極めて理想的な場所です。この地域には同等の面積を有する空き地当はありません。開平小学校の過密化を開所するにはここに新設校を設置する、もしくは学区変更(中央大通以南の地域を南小学校へ組み込み等)しかありません。
着目すべきなのは「分離新設校」という記載です。地域分校という前代未聞の手段を選択した大阪市立堀江小学校とは異なり、端的に「分離新設校」とする案が検討されています。
大阪市が本腰を入れていれば2020年頃に新設校を検討し、2025年頃には開校できていた筈です。明らかに後手後手に回っています。
ただ、この様な児童急増に過密化が問題となっているのは、大阪市内中心部の限られた地域のみの話です。大部分の地域では子供が減少しており、学校の統廃合が計画されています。市内は子供が急増する市内中心部と減少が止まらないとで二分されています。