遂に(ようやく?)NHKも取り上げました。大阪市中心部で児童数が急増し、小中学校の教室・敷地が不足している問題です。
子どもの学ぶ教室が足りない
07月25日 18時34分
少子化が問題となる中で、実は、大阪市の中心部にある一部の小学校で子どもの数が急増し、教室が足りなくなるおそれがでてきています。なぜこうした事態が起きているのか。背景と市の対策を取材しました。
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20170725/5375801.html(リンク先に動画あり)
https://twitter.com/zoomcar63/status/889792817932902402
大阪市中心部における児童急増とその背景は、下記の投稿で詳しく触れています。
中心部の小学校跡地は、半数程度がタワーマンションとなっていました。売却決定時の見通しが甘かったと指摘される一方、当時の経済状況からタワーマンションの乱立・児童急増を予想するのは困難だったとも言われます。
過去を検証するより重要なのは、今後の対策です。吉村市長は「高層校舎を検討したい」と述べています。
「運動場狭いですね」(保護者)
「遊具ももう使えないみたいになっていたので」大阪市では、都心回帰の影響で西区・中央区・北区で児童が急増。運動場が満足に使えない小学校の現状を以前お伝えしました。さらにこんな小学校もあったのです。児童が勉強している教室、実は元々多目的ホールでした。朝の会を開いたり講演会を行ったりしていたホールが…児童急増で3つの教室に変わっています。
「急場をしのぐという意味ではこの方法しかなかったかなと。増築計画が完成した折には、元の開平ホールに戻していただく」(開平小学校 赤銅久和校長)
打開策を求めて、吉村市長は同じような問題を抱える東京と埼玉の小学校を視察しました。こちらの埼玉の小学校は児童数約620人。校舎の老朽化に加え増築できる土地もないため今年3月、7階建ての新校舎となりました。児童が転落しないよう、低い位置の窓を開かなくするなど工夫もされていました。
「でもよく考えたら、今までの学校の建設の仕方がきちんと空間利用していなかったのかもしれないですね」(吉村洋文大阪市長)
と、高層化には前向きな様子。さらに、東京都内の小学校では…
「こちらの小学校では屋上校庭があり、開閉式の屋根が設けられています」(入口茉莉記者リポート)
なんと地下2階、地上6階の建物の屋上に校庭がありました。この建物には小学校に加え幼稚園や児童館もあり、地下のプールは地域住民も使えるオールインワンタイプ。視察した吉村市長は…
「(都心部は)土地の面積が狭くなってくる。その中でも高層化して体育館などをオールインワンにすることで、十分子どもたちの教育環境も良い環境を整えることができると思う」(吉村洋文大阪市長)
ただ、建設費や維持費がかさむことに加え、大阪での都心回帰が長く続くのかなど先を見据えた判断が求められます。
http://www.mbs.jp/news/kansai/20170705/00000080.shtml(リンク切れ)
中心部は土地が無い!あっても40億円以上!高層校舎は約80億円!
大阪市中心部には、小中学校を建設できる土地(概ね1万平方メートル以上)を確保するのは極めて困難です。用途が決まっていない公有地は殆どありません。
購入するのも容易ではありません。例えば過密化が進行している堀江小学校(西区)の地価は約40万円(1平方メートルあたり、路線価より逆算)程度です。1万平方メートル分の土地を購入するだけで40億円程度が必要でしょう。そもそも、これだけのまとまった土地はなかなか市場に出てきません。
限られた土地を校舎・運動場等として有効活用するには、吉村市長が主張する「高層化」は一つの方法でしょう。そもそも中心部に住んでいる児童の多くは高層マンションで過ごしています。小中学校の高層化も検討に値します。
反面、気になるのは「中心部への過剰投資」です。急増した児童が更に急増するか、横ばいへ転じるか、それとも急減するかは分かりません。仮に減少した場合、高層校舎は過剰設備となってしまいます。
また、高層校舎には多額の費用を要します。吉村市長が視察した都内の小学校(昌平小学校)の建設費用は約78億円でした(資料11ページ、但し同一建物内に幼稚園・児童館あり)。通常の小学校2-3校を新築できる予算です。
中心部のタワーマンションに転入する世帯の多くは所得が高く、多くの市民税を納税している世帯でしょう。だからと言って中心部の学校に多額の予算を注ぎ込んでしまうと、それ以外の地域に住んでいる子育て世帯との不公平感が生じかねません(他の施策でも起こりうる事例ですが)。
一方、「中心部でのタワーマンション建設を規制すべきでは?」という指摘もあります。しかし、吉村市長は一貫して否定的な考えを示しています。建設規制、もしくは一定の資金負担(公共施設整備協力金)の要請、いずれも課題の多い方法です。
転居予定先の教育環境調査は必須
子育て世帯ができる方法は「転入する地域の小中学校・保育所や幼稚園の状況をしっかり調べる」しかありません。児童1人あたりの運動場面積が4平方メートルを下回る小学校を納得して転入するか、他の地域を考え直すか。それは世帯の選択です。
避けたいのは「こんな筈じゃ無かった」という結果です。中心部で共働き・子育てしようとしたけど保育所に入れなかった、小学校が過密すぎて教育環境が気に入らない・・・・枚挙に暇がありません。