(手足口病、国立感染症研究所より)

福岡市城南区にある認可保育所が手足口病の症状が酷い7か月女児を事務室の段ボール箱に隔離していたとして、福岡市が「不適切保育にあたる」と指導しました。

福岡市によりますと8月27日、城南区の認可保育園で「手足口病の0歳の女の子を段ボール箱に入れていた」などと匿名で相談が寄せられました。

市は、その翌日と9月4日に行った定期監査で、保育園に聞き取りを実施。

園は今年7月、当時生後7か月の女の子を事務室に隔離し段ボールの箱の中に入れたことを認めたということです。

聞き取りに対し園は、「子供の手足口病の症状が重く、手も足もただれていて抱っこもしづらく、感染が広がるのを懸念して段ボールの箱に入れた」などと説明したということです。

園によりますと事務室に隔離して女の子を段ボールの箱に入れていた時間は保護者が迎えに来るまでのおよそ5分くらいだということです。

福岡市は、段ボール箱での隔離は虐待が疑われる不適切保育に当たるとして、「子供の最善の利益を考えて保育に取り組んで欲しい」などと園を口頭で指導しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e3423aa1d3d5fb80dfdc45a92de94970d8ea6435

市や園によると、クラスで保育中に発疹が全身に広がるなど症状が悪化したため、園側は0歳児を事務室に移した。保護者が迎えに来るのを待つ間、園長が「動き回って事務室内の物を触ると、園児や職員にうつる可能性がある」と判断し、室内にあった約60センチ四方の段ボール箱に新聞紙を敷いて0歳児を座らせた。

 段ボール箱の蓋(ふた)は閉めずに職員が付き添ったといい、園長は取材に「段ボール箱に入れたのは5~6分間だった」と説明。市には「(対応が)良くなかったと思う。反省している」と話したという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ad3f4634ecdc3a3da234e0f999e73ea6f353da3a

保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)によると、手足口病の主な感染経路は飛沫感染・接触感染・経口感染とされています。保育園内では非常に広まりやすい疾患です。我が家の子供達も感染した事があります。

また、罹患した場合の登園の可否は、「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」とされています。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf

手足口病は法定伝染病ではなく、出席停止・登園停止の対象とはなっていません。我が家がお世話になっている保育園では、発熱が無い・普段の食事が摂れる・受診した医師から登園を許された、との判断基準を設けています。

上記記事では「子供の手足口病の症状が重く、手も足もただれていて抱っこもしづらく」とあるので、普段の食事(7か月なのでミルク?)が摂れない状態だったと考えられます。

福岡市城南区の保育園が行った不適切保育については、「(1)隔離の必要性」「(2)隔離方法」について検討すべきでしょう。

まずは隔離の必要性です。空気感染する疾患ではありません。が、他の0歳児と集団で生活すると、飛沫や接触を通して感染が広がるのは避けられません。他の園児や家庭にも影響が生じてしまいます。

いくら法定伝染病ではないとしても、何らかの方法で他の園児から一定の距離を保つのは適切な方法でしょう。

問題は隔離方法です。同保育園では事務室内に隔離し、約60センチ程度の段ボール箱へ5分ほど入れたそうです。感染拡大を防ぐには、他の園児と接触や飛沫等が行き交わない距離を取れば十分とされています。

真っ先に考えられるのは、0歳児保育室内のベビーベッドでしょう。我が家がお世話になっている保育園にもあります。ただ、0歳児クラスでは既に立ち上がって動き回る園児もいる時期です。ベビーベッドに手を伸ばし、接触する可能性は否定できません。

また、保育室の片隅に布団を敷いて過ごすという方法もあります。保育室が付きっきりになり、他の園児が来たら「少し向こうに行っていてね」等と伝える必要があります(0歳児にはなかなか通じませんが)。

0歳児保育室で適切な距離が保てない場合、他の部屋へ移動せざるを得ません。候補となるのは事務室・園長室です。我が家がお世話になっている保育園でも、事務室の片隅に布団を敷き、お迎えを待っている姿を見かけることがあります。ただ、段ボール箱に入っている姿は見かけた事がありません。

原則として事務室には大人しかいません。手足口病の園児と同じ空間で過ごしても、マスクを着用して手洗いを徹底すれば感染経路を絶てます。抱っこ等をしても同様です。

また、一般的に7か月児は寝返りは出来ますが、ずりばいは出来るか出来ないかという月齢だったと記憶しています(昔の事なのでややあやふや)。

ましてや手足口病で体力が落ちている乳児です。抱っこをしてお迎えを待つか、普段から使用している布団等に寝かせれば十分だったと考えられます。身動きが取れない段ボールを使用する必要はないでしょう。

より問題視しているのは、「60センチメートルの段ボールに座らせた」という点です。乳児は手足口病で苦しんでいます。ゆったりと寝かせるか、抱っこして過ごすのが適切な方法です。そもそも7か月の乳児は安定して座るのは難しいです。段ボールが重さに負け、箱と一緒に転倒する危険もあります。しかも、当初は段ボール箱の上に座らせていました(座れるのか疑問)。

ネット上には「段ボールはそのまま処分できる」という声もあります。が、保育園内では日々様々な病気が発生しています。その度に段ボール等を処分していたら、いくらあっても足りません。基本的には感染経路になり得る備品(おもちゃ等)は消毒・洗濯・天日干しを行い、繰り返し使っています。

「7か月児を段ボール箱に座らせて隔離する」のは不適切と言わざるを得ません。

福岡市の担当者は、「保育園では、お子様に対し安全で衛生的な環境を整えてあげることが大事」「例えば、手足のただれが酷かったのであれば、まずはガーゼなどで覆ってあげて、感染しやすくならないよう配慮しながら抱っこしてあげるとか。こうしたことも考えられますよね、とお話ししました」と述べています。

バスタオル等で包んだ上、抱っこしながらあやして待つのが適切だったのでしょう。