日本バスケットボール協会U12カテゴリー「指導⾏動の指針」より

「厚顔無恥」という言葉が頭を過ぎりました。

12年前、特に大阪で中学生や高校生を子育てしている家庭を震撼させる事件が起きました。

大阪市立桜宮高校(当時、現在は大阪府立桜宮高校)のバスケットボール部でキャプテンを務めていた男子生徒が顧問から執拗な体罰や暴言を受け、自殺しました。

顧問は懲戒免職処分を受け、日本バスケットボール協会理事会が公認コーチ資格を取消、大阪市が遺族に支払った賠償金の半額を負担する判決も確定しました(詳細は桜宮高校バスケットボール部体罰自殺事件を参照)。

私も当時の事件は記憶しています。学校の部活動で体罰が横行しているのは知っており、私も大昔に受けた経験があります。

されども未だに続いていた、しかも桜宮高校の殆どの部活動で体罰が横行し、かつ顧問のへの寛大な処分を求める嘆願書を大阪市へ提出したのには驚愕しました。橋下徹大阪市長(当時)が「狂っている」「処分内容は妥当」と突き返したのは妥当でした。

しかし、元顧問は諦めていませんでした。取り消された公認コーチ資格の回復を求め、日本バスケットボール協会に申立てを行いました。しかし、協会はこれを認めませんでした。

12年前、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部の男子生徒が当時の顧問から体罰を受けて自殺した問題で、指導者の資格を取り消されていた元顧問が、ことしに入って日本バスケットボール協会に資格回復を申し立てていたことがわかりました。しかし、協会の裁定委員会は9日までに資格回復を認めない判断をしたということです。(以下省略)

これを受けて協会の裁定委員会は、元顧問や遺族から事情を聴くなどして調査や審議を進めてきましたが、9日までに「再び体罰などを行うおそれがないとはいえない」などとして「復権」を認めない判断をしたことが関係者への取材でわかりました。

関係者によりますと、体罰で資格取り消しの処分を受けた指導者の「復権」の可否をめぐって協会の裁定が出されるのは初めてだということです。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240509/2000084184.html

同協会が復帰を認めなかった理由の一つとして、「再び体罰などを行うおそれがないとはいえない」が挙げられています。二重否定で表現されていますが、言い換えるは「再び体罰等を行う恐れがあるから認めない」となります。

また、元顧問は遺族に対する謝罪を殆ど行わず、反省の色が乏しいと判断されました。自分の行為に向き合っていません。

全国各地の部活動では今も体罰等が横行しており、しかも一度は処分された指導者が早々に復帰するケースが相次いでいます。

指導力を持った指導者の早期復帰を願う生徒や保護者からの嘆願が一つの根拠とされていますが、再び体罰等を繰り返さないとは限りません。また、体罰等を受けて部活動や学校を去り、社会になかなか復帰できない生徒を蔑ろにしています。

同協会は「暴言暴力の根絶」を目指しています。「暴力行為等通報窓口通報フォーム」を設置し、現在はU12カテゴリーの保護者を対象としたアンケートを実施しています。

大阪市も部活動の指導体制を一新しました。「大阪市部活動指針~プレイヤーズファースト~」を掲げ、健全で充実した部活動の実現を目指しています。

大阪市立中学校の運動部に所属している子供に「部活で体罰はある?聞いた事はある?」と訊ねたところ、「全く聞かない。とある部は指導が厳しいと聞くぐらい。」と話していました。

現在は外部の部活動指導員(当該競技の経験者や大学生が主)も指導に加わっていますが、学校の先生より指導が優しい(かつ適確)とも聞いています。中学校の先生にも「授業研究に時間を割ける」「経験したことがない競技を教えるのが大変だった」「残業が減った」などと好評です。

元顧問が行ったのはただの体罰ではありません。自殺する前日には顔面や頭部を数十回も殴打する等、「凄惨な暴行」でした。一般社会や事業会社等で行えば即座に取り押さえられて逮捕される行為です。学校だから「体罰」として見逃されるのは間違っています。

仮に元顧問が資格を回復して指導者として復帰しても、過去の事件を覚えている保護者は指導を徹底的に避けるでしょう。「あの元顧問だけは勘弁してくれ」と。それだけのインパクトを残した事件です。

遺族感情は今も熾烈です。2年前に「命絶った息子が受けたのは“体罰”じゃない」と(詳細はこちら)、朝日新聞の取材に対しては「あれだけの行為をした人が復権するなんて到底、認められないと思っていたので妥当な判断だと思う」と語りました。私も同感です。

人は時として過ちを行う事もあります。しかし反抗できない部員に暴行を加え続けて死に追い込んだ人間が、同じ競技に指導者として復帰しようとするのは狂っています。

同協会が復帰を認めなかった判断は適切です。