緊急事態宣言の延長に伴い、大阪市立小中学校のオンライン授業も延長されます。先週6日に松井市長が発言した通りです。

【コロナ】大阪市の松井市長「オンライン授業と対面授業の併用を緊急事態宣言終了まで延長」

大阪市のオンライン授業も延長 学校で差、学びに不安

 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が延長されるのを受け、大阪市教育委員会は10日、ICT(情報通信技術)を活用した市立小中学校のオンライン学習を5月末まで継続することを決め、各学校に通知した。

https://www.sankei.com/life/news/210510/lif2105100045-n1.html

通知された文章(雛形)を基とし、各学校が延長後の対応を示しています。

新東三国小学校の通知文(一例)

オンライン授業期間中の過ごし方は、各家庭・各校が大きな差が生じています。

 同市では先月25日からの宣言期間中、全市立小中学校の学習の基本をオンラインに。保護者が仕事で不在だったり、オンライン学習が難しい場合は登校も可能としている。

 小学校では午前中のオンライン学習後、学習状況の確認と給食のため登校するが、市教委が宣言後最初の登校日から3日間の状況を調べた結果、児童約11万4千人の36%にあたる約4万1千人が「登校時間」外に来校。中学校では2・2%の約千人が、同じく「時間外」に学校にいた。

我が家は以前と同じ時間に登校させています。36%の中に含まれています。少なくない家庭が、オンライン授業の導入に伴う時間の変化に応じられていません。当然の結果です。

ボトルネックは「通信回線」

オンライン授業の中身にも大きな差が生じています。

 実際、実施状況にはかなりの「差」がみられる。ICTを活用した教育に力を入れる市立本田小(同市西区)は、全学年で双方向型のオンライン授業を実施中。「保護者の協力もあり、ネット環境が改善された」と銭本三千宏校長は手応えを語るが、別の小学校の校長は「双方向のオンライン授業ができているのは一部の先進校だけ」と明かす。(中略)

 通信環境の課題も露呈している。ある小学校で児童が登校した際に双方向通信を試みたところ、約40人の1クラスでつながったのはたった1人。市教委は通信回線の負荷分散のため、双方向通信を行う日時を地域ごとに分けているが、機能していない状況だ。

 この学校では近く、学級単位で時間を分け、接続テストを行うという。ただ、通信環境が整っていない児童の家庭には機器を貸し出す必要があるが、市教委から学校に貸与された分では「全然数が足りない」(教頭)状態だ。

双方向のオンライン授業を行うには、学校と家庭で十分な準備が必要です。しかし、今回のオンライン授業の実施は急遽決まったものでした。見切り発車です。

強いボトルネックとなったのは大阪市教委と一部家庭の通信回線でした。

大阪市教委は、全児童生徒が一斉に双方向通信を行う状況を想定した設備導入を行っていなかったのでしょう。民間企業でも同様の事例が相次ぎ、対応に追われた話を聞きます。

あくまで推測となりますが、大阪市教委は全校が一斉にオンライン授業へ移行する事態を想定していなかったのかもしれません。感染者が発生して臨時休業した学校のみがオンラインを利用するのであれば、限られた通信回線でも対応できます。

大阪市の子育て世帯には様々な家庭があり、インターネット回線も多種多少です。光ファイバー等の固定回線、モバイルルータ、スマートフォンのテザリング等が混在しています。

通信環境が合っても不安定な家庭が少なくないと聞きます。双方向で大量のデータを通信し続けるには、十分な速度と安定性を有した回線が必要でしょう。

不十分なオンライン授業や家庭からの要望等により、通常通りの対面授業に戻した学校もあります。

 通信環境の課題から、対面授業に戻した学校もある。昨年の休校時期、民間塾提供の動画を使ってオンライン学習を実施した中学校は、今年も同様の手法を試みたが、昨年は塾が休業中だったため無償貸与を受けられた機器が今回は借りられず、各家庭の通信環境頼みに。初日から「動画が見られない」との声が相次いだため、4月末には対面授業を再開した。

カリキュラムが不進捗や家庭の要望、通常授業へ戻す学校も

緊急事態宣言の延長に伴って通常授業に戻す学校もあります。

 本校では、各教科における進度状況や保護者のみな様方からのご要望も多く、大型連休明けの10日(月)から登校時間を通常時間に戻し、学校において学習できる体制を整える予定です。

 生徒のみなさんは、8時25分予鈴・30分本鈴で学習後、給食・清掃・終学活を終え下校となります。

ご理解とご協力をお願いいたします。

http://swa.city-osaka.ed.jp/weblog/index.php?id=j762754&type=1&column_id=1600016&category_id=2176

授業時間数の不足も深刻です。

5月末までのオンライン授業により、大阪市立小中学校は計22日間に渡って通常授業が大幅に短縮されます。学年等によって違いはありますが、概ね100時間程度の授業時間が減少した計算です。

「オンライン授業で学習している」「1日2時間でも学校で通常授業を受けている」という指摘もあるでしょう。

しかし、オンライン授業は市教委が作成した動画の視聴やプリント学習が主となり、十分な学力が身についたとは言い難いです。先生方が2時間の授業で動画を補足し、進捗状況を確認するのが精一杯でしょう。

港区の磯路小学校は「あらゆる教科でカリキュラムが進んでいない」と危惧しています。

このうち、港区の磯路小学校の4年生のクラスでは、給食を食べた児童たちが下校したあと、担任の教員がオンラインの会議システムを使って漢字の学習を行いました。
担任が出席を取ったあと、児童たちは、それぞれが漢字ドリルを使って書き取りなどを進めていました。

担任によりますと、オンラインの学習では児童が理解しているかどうか確認するのが難しいことから、教科書の新しい内容を進めることはせず、これまでに習ったことの復習や、漢字の書き取りといった比較的単純な内容に限っているということです。

担任の教員は、「とりあえず漢字だけでも学習させたいと思って、取り組んでいます。子どもたちが少しでも楽しんで学習できるように、なんとか工夫して頑張っていきたい」と話していました。

磯路小学校の糸井利則 校長は、体育や音楽の授業は実施できず、あらゆる教科でカリキュラムが進んでいないとしたうえで、「教員も児童もオンライン学習には少しずつ慣れてきてはいますが、通常どおり授業を進めることができず、なんとかしたいという気持ちは持ち続けています」と話していました。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210510/2000045372.html

十分な準備を行わずに見切り発車されたオンライン授業により、学校や家庭へしわ寄せが及んでいます。

今月下旬の5月27日には全国学力テストが実施されます。低学力が指摘され続けていた大阪市ですが、一段と低くなるのは避けられないでしょう。

実家から「大阪市が学力が全国一低いらしいけど、大丈夫?」と指摘された事もありました。大丈夫ではありません。