大阪市内有数のマンモス校たる堀江小学校は、2024年度から「東学舎」と「西学舎」に分かれました。東学舎は従前の堀江小学校の敷地等を、そして西学舎はもと大阪市立西高校テニスコート付近に新設されました。
2018年に当ウェブサイトにて『「不動産価値が下がる、学校より地域が大切、校区分割は絶対反対、地域分校賛成」堀江小学校の教育環境改善が迷走中』との記事を掲載しました。
「地域分校」とは何なのでしょうか。ようやく明らかになってきました。様々な資料を見る限り、「外観は堀江小学校からの分離独立校、内部は分校扱い」だと感じました。
学校で最も重要や要素の一つは「学区」です。学校選択制等の諸制度があれど、当該学区に住んでいる子供は指定された学校へ通学します。
東学舎と西学舎は学区が重複しません。あみだ池筋より東の地域は東学舎へ、西の地域は西学舎へ通学します。既に在学していた小学生も、この区割りに応じて東学舎と西学舎に分かれました。いわゆる分離独立校と同じ取扱いです。
学校選択制での制度運用も同一です。東学舎の通学区域の新1年生が西学舎への通学を希望する場合、学校選択制に基づく手続が求められています。
https://www.city.osaka.lg.jp/nishi/cmsfiles/contents/0000564/564512/14.15.pdf
新年度の入学式も東学舎と西学舎とで別個に開催されました。ただ時間を若干ずらし、双方の入学式に関係者が出席できる配慮が為されています。
https://swa.city-osaka.ed.jp/weblog/files/e561156/doc/251987/5452061.pdf
管理職5人、「堀江小学校所属」として発令
学区と同様に重要なのは「人事」です。
2023年度の同小学校は校長・副校長・教頭という管理体制でした。2023年度末の人事異動では新たに准校長職が発令、教頭1名が主務教諭からの昇進しています。つまり、新年度は校長・准校長・副校長(事務職出身か)・教頭2名体制となります。
これだけ手厚い管理体制を敷いている大阪市立小学校は聞いた事がありません。副校長ならまだしも、校長に準ずる「准校長」が設置されているのは珍しいです。
また、異動先の学校名はいずれも「堀江小学校」です。東学舎や西学舎といった指定は附されていません。公表資料には明記されていませんが、一般教職員の配属も同様でしょう。
となると、教職員は堀江小学校という大きな組織に属し、どの学舎に配属されるかは小学校内部で決定するものと考えられます。
一方、教育方針や諸日程等は東学舎・西学舎で同一とされています。
https://swa.city-osaka.ed.jp/weblog/files/e561156/doc/250534/5406751.pdf
始業式後に学校から各家庭へ配布されたプリント類には、「堀江小学校」や「堀江小学校東学舎」といったクレジットが混在しています。両学舎で共通したプリントもあれば、各学舎独自のプリントもあるのでしょう。
大きな行事等をどの様に運営するかは未だ見えていません。小学校で最も大きな行事たる運動会はどの様に行うのでしょうか。混み合う堀江小学校東学舎に西学舎の児童や保護者も集うのは非現実的です。
西学舎は堀江中学校とグラウンドを共有
西学舎には固有の課題もあります。同一敷地に移転する堀江中学校とグラウンドを共有します。どの時間帯にどちらの学校がどの部分を使うか、非常に難しい調整が必要となります。
西学舎の責任者(准校長か)は堀江中学校の責任者と協議すると共に、東学舎とも調整する必要があります。多くの利用者が見込まれる施設の小中共有ですら難しいのに、これに本校たる東校舎が加わります。
「学区・児童は別」「教職員は共通」「教育方針・行事日程は同一」
ここまでをまとめると、「学区・児童は別」「教職員は共通」「教育方針・行事日程は同一」となります。
真っ先に懸念されるのは学校の管理です。管理職の人数を見る限り、東学舎担当と西学舎担当に分かれると考えられます。最終的な決定や責任等は1名の校長が担います。
しかしながら、果たして自分が常駐していない学舎での諸課題等につき、校長が適切な判断等を行えるのでしょうか。学舎が分かれる以上、校内の様子を頻繁に観察するのは難しくなります。
組織が非常に大きくなるので、様々な案件が校長に集中します。一部を准校長等が分担しても限度があります。
運営面でも不安です。教育方針や行事日程が同一とされているので、各学舎が独自の行事等を行うのが難しくなる可能性があります。行う為には両学舎で足並みを揃える必要が生じるでしょう。各学舎における教育が別学舎との調整を要する事となり、極めて煩雑となります。
児童や保護者にとっても面倒な事が起こり得ます。堀江小学校に通っているという話をする度に、西か東かを訊ねられる機会が増えるでしょう。学校関係者以外の視点では、東学舎と西学舎は別物です。校舎も学区も違うのに同一の学校という理屈は、世間一般では理解されがたいです。
両学舎に分かれる前の堀江小学校を経験した教職員や児童が多く在籍している間は、諸課題等についても調整が容易です。が、数年後には教職員や児童が入れ替わり、分離前の堀江小学校を知る人間がほぼいなくなります。
そうした状況下で両学舎の教育方針や行事等を統一していくのは容易ではありません。こうした経緯を知らない保護者からは不満の声も出ます。履歴書等に出身小学校名を記入するに際し、「堀江小学校」か「堀江小学校(○学舎)」と書くかは悩みます。
歪な学校
両学舎に属する児童は1,000人を越えます。当初から難しい運営を迫られ、数年後には一定の見直しを余儀なくされる可能性が高いと推測しています。10年後には「堀江西小学校」と改称しているかもしれません。
堀江小学校の分割(分離独立校)に強く反対した地域有力者の意見に、大阪市教委や西区役所が押し切られたのが不思議で仕方ありません。地域分校としたデメリットは日に日に拡大していく筈です。
歪な分校形式を採用した経緯や諸問題等は在阪マスコミが取り上げていくでしょう。中でも、大阪の教育問題に熱心な産経新聞に期待しています。