2022年7月30日に認可外保育施設「緑のすず乃保育園」(那覇市、後に閉園)にて、生後3か月の男児が死亡する事故が発生しました。

【4/1追記】男児の死因は窒息死か 緑のすず乃保育園(那覇市)

2年弱が経過した今年3月「重大事案の再発防止のための事後的検証にかかる報告書」が作成・提出・公表されました。

2022年7月30日、那覇市にあった認可外保育施設で一時預かりを利用していた生後3か月の男の赤ちゃんが心肺停止の状態で病院に運ばれ、その後、亡くなりました。

事故のあと、市は学者や医師などによる検証委員会を設置し、3月25日、再発防止に向けた23項目の提言を盛り込んだ報告書が市側に提出されました。(以下省略)

https://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20240327/5090027168.html

報告書はこちらです。

那覇市内認可外保育施設における重大事案の再発防止のための事後的検証にかかる報告書の公表について

Download (PDF, 4.21MB)

資料を一通り読みました。「こうした認可外保育施設が運営を継続できていたのが不思議でたまらない」と言うのが率直な感想です。

最も分かりやすいのは、那覇市が当該施設へ行った指導監督状況です。令和元年度から事故直後に実施した令和4年度までの指導状況等が掲載されています。

令和4年度に「C」(指導監督基準を満たしていない重要事項)が並ぶのは当然としても、令和3年度でも約半数がC評価となっています。指導項目の約半数に基準未達の重要事項がありました。これだけでも安全に保育を出来るとは考えにくいです。

致命的なのは保育従事者の不足です。4年連続でC評価となっています。

全国各地の認可外保育施設で発生した死亡事故の多くは、保育従事者の不足が起因して発生しています。人の目が足らず、事故の予兆等に気づけませんでした。

当ウェブサイトでも幾度となく「保育従事者の不足は要注意」と促しています。ましてや4年連続での不足です。改善する気が無い、と判断せざるを得ません。

また、多くの委員が「利用料金が安すぎる」とも疑問視しました。0歳児(昼)の月極利用料金は34,000円でした。

これでは十分な人数の保育従事者を採用するのも難しかったでしょう。唯一の有資格者たる施設長が長時間労働を行っても、人手不足は補えません。

最初に異変に気付いたのは、施設長とは異なる職員でした。10時半頃に「ミルクを飲み始めない」「普通とは違う」と感じました。が、子供への対応を施設長と代わり、以後は専ら施設長が対応しました。

施設長は「体温があたたかい」と確認し、児童をうつぶせ寝で寝かせ続けました。


異変に気付いたのは12時~12時20分の間でした。迎えに来た母親へ児童を引き渡そうとしたところ、顔が鬱血し、身体が黒くなっている事に気づきました。普段の様子とは懸け離れた光景です。

にも関わらず施設長は「寝ている状態だからシャワーに入れたら大丈夫」とし、身体をゆさぶりながらシャワーを掛けていました。

シャワー後に何度も検温しましたが、体温は34.0~35.0度でした。あり得ない体温です。子供に触るだけで冷たさに気づけた筈です。

驚いた施設長は「冷たいけど、生きていますよ」と話ながら児童を母親へ引き渡します。母親は即座に呼吸が止まっている事に気づきました。救急要請し、心肺蘇生を試みました。

上記資料には「当該施設の保育に関する問題点・課題」という項目があり、多数の指摘がなされています。
・職員から児童の異変を指摘されたが、状況確認を十分に行わなかった。
・児童の体色変化等を職員に指摘荒れたが、施設長はシャワーを浴びせ、救急要請等を行わなかった。
・那覇市への速やかな報告も怠った。
・那覇市からの調査協力依頼にも応じなかった。
・薄暗い部屋の中で保育を行っていた。
・深いベビーサークルに寝かせており、外から児童の安全確認が難しかった。
・保育面積に対する受入可能人数を超えた時間帯もあった。
・慢性的な長時間労働、人手不足だった。
・子供の受け入れ制限を行わずに運営を続けた。
・保育の引継等に関する記録も怠っていた。
・受入時に保護者に健康状態を訊ねる事はなかった。
・園児の健康状態等と職員間で共有する事も無かった。
・ミルクの作り置きが常態化していた。
・寝かせたままの子供に、タオルで支えたほ乳瓶から授乳させていた。
・授乳後のゲップをさせていない時があった。
・園児をうつぶせ寝にさせていた。
・睡眠中の体調確認は身体に触れて体温を感じるだけだった。
・「抱き癖」がつくという理由で、抱っこを行っていなかった。
・泣く乳児を放置死、施設外に泣き声が響き渡っていた。
・屋外への散歩や活動は行っていなかった。

一連の流れからは、「施設長の無能さ」が浮かび上がります。

適当な料金収入や人材採用によって認可外保育施設を維持・運営していく能力も、個別の子供を安全に保育する能力も、異変に際して適切な対応を行う能力も欠落しています。保育に携わる資格がありません。

これほどまでに杜撰な保育を行っていた施設を見聞きした事がありません。少なくともここ10年では「空前絶後の劣悪保育」でした。