厚労省は子供が3歳になるまでのテレワーク努力義務化を検討しています。

少子化対策として育児の時間を増やす政策の整備が進む。厚生労働省は3歳までの子どもがいる社員がオンラインで在宅勤務できる仕組みの導入を省令で企業の努力義務とする。いまは3歳までとする残業の免除権も法改正で就学前までに延ばす。

育児休業後、復帰しても柔軟に働ける環境を整え、希望する数の子どもを持ちやすくする。2024年中にも育児・介護休業法や関連省令の改正を目指す。70歳までの就業機会確保を努力義務とするのと同じような扱いとし企業に行動を促す。

中小企業などにとってはテレワーク対応は容易でない。関連設備の負担は増え、対面を避けられない業種では生産性も低下しかねない。新たな制度が厚労省の思惑通りに進む保証はない。企業まかせにせず、社会全体で仕組みを改める必要がある。(以下省略)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA050250V00C23A4000000/

多様な働き方の一種としての在宅勤務が広がるのは朗報です。が、対象となる業種・職種・家族構成等が余りに限られています。対象となる従業員は既に様々な面で恵まれている事が多く、恵まれていない従業員との格差が広がるだけです。メリットよりも弊害の方が大きいと感じます。

これらの制度設計等は、今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会にて検討が進められています。

同研究会によると、現行の両立支援制度は下記の通りです(分かりやすい資料です)。

https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001097010.pdf

ただ、多くの制度は子供が3歳までや就学時までとされています。学校行事・学校からの呼び出し・宿題の丸付け等で意外と負担が重い小学生については、決して十分な物とは言えません。

検討されている新たな制度は、今後の仕事と育児の両立支援について(論点案)に記されています。

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日経新聞で取り上げられた部分です。

1 子が3歳までの両立支援について

① テレワークは、通勤時間が削減されることなどにより仕事と育児の両立のためにも重要なものとして位置付けられてきた。また、コロナ禍を機に柔軟な働き方の一つとして一定の広がりも見られる。さらに、企業に対するヒアリング等においても、テレワークを育児との両立のために活用する事例が確認された。

育児との両立に活用するためには、就業時間中は保育サービス等を利用して就業に集中できる環境が必要であるため、例えば、保育所等への入所に当たり、居宅内での勤務と居宅外での勤務とで一律に取扱いに差異を設けることのないよう、保育行政において徹底していくことが必要である。

こうした条件が整えばテレワークは、フルタイムで勤務できる日を増やせることも含めて仕事と育児の両立に資するものであるため、現行の育児休業制度や短時間勤務制度の単独措置義務は維持しつつも、現在、努力義務となっている出社・退社時間の調整などに加えて、テレワークを努力義務として位置付けることとしてはどうか。

② また、短時間勤務が困難な場合の代替措置の一つに、テレワークも設けてはどうか。

保育所等の利用を前提とした上で、テレワークを努力義務に位置づける事を検討するものです。

上記資料には「保育所等への入所に当たり、居宅内での勤務と居宅外での勤務とで一律に取扱いに差異を設けることのないよう、保育行政において徹底していくことが必要である」とあります。

が、少なくとも大阪市では、保育所等への入所調整における在宅勤務(自宅内勤務)と自宅外勤務での点数差はありません。数年前までは自宅内と自宅外で点数差が設けられていましたが、現在は解消されています。

この検討案はいわゆる「全面的なテレワーク」を意識したものではありません。「テレワークは、フルタイムで勤務できる日を増やせることも含めて仕事と育児の両立に資するものである」と記されており、テレワークとフルタイムとの併存を念頭に置いた物です。

子育てには様々なトラブルが付いて回ります。典型的なのは子供の体調不良です。熱が長引き、長期に渡って保育所へ登園できなかった経験は数知れません。

とは言え、テレワークが可能な勤務形態で働いている方は少数です。都市部の一部業種・職種という限られた世界の話です。「3歳まで」という線引きにも合理性がありません。

この制度に限らず、最近は都市部の大企業で働くホワイトカラーを念頭に置いた制度設計が目立ちます。東京からは地方や中小企業が見えていません。「また対象外か」という、あたかも蚊帳の外に置かれた様な思いを持ちます。

対象年齢・看護休暇の拡大が重要

上記検討案で注目したのは、「子の看護休暇について」という部分です。

育児目的休暇(努力義務)の目的拡大、看護休暇を小学校3年生までに引き上げ、勤続6カ月未満の労働者への適用除外可能制度の見直しが指摘されています。

3 子の看護休暇について

労働者の心身の疲労を回復させることなどを主たる目的として制度化されている年次有給休暇とは別に、子を育てる労働者の特別のニーズに対応するためのより柔軟な休暇が必要と考えられることから、現行の子の看護休暇について、以下の見直しを行うこととしてはどうか。

a) 取得目的について、現行の育児・介護休業法において努力義務となっている育児目的休暇や、コロナ禍で小学校等の一斉休校に伴い、多くの保護者が休暇を取得せざるを得なかったことを踏まえ、子の行事(入園式、卒園式など)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるものとしてはどうか。

b) 子の看護休暇を取得する労働者の多くは5日未満であることや子どもの病気のために利用した各種休暇制度の取得日数の状況等を参考に、1年間の取得日数は原則5日としつつ、診療を受けた日数の状況等を勘案して、取得可能な年齢については、小学校3年生の修了までに引き上げることとしてはどうか。

c) 子の看護や行事等への参加等のニーズは、労働者の勤続年数にかかわらず存在することから、労働移動に中立的な制度とする等の観点からも、勤続6か月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みについて、見直すことについてどのように考えるか。

【参考:現行制度】・子の看護休暇:子が小学校就学前の場合に、病気・けがをした子の看護、予防接種・健康診断を受けさせるために、年5日(2人以上であれば年 10 日)を限度として取得できる(1日又は時間単位)。(ただし、労使協定を締結した場合、事業主は次の者の子の看護休暇の申出を拒むことができる。①引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者、②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者)

・育児目的休暇:小学校就学前の子を養育する労働者について事業主が措置することが努力義務となっている休暇。いわゆる配偶者出産休暇や、入園式、卒園式などの行事参加も含めた育児にも利用できる多目的休暇などが考えられるが、いわゆる失効年次有給休暇の積立による休暇制度も含まれる。

論点案の様に拡大かつ義務化されれば、助かる子育て世帯は非常に多いでしょう。

育児目的休暇の目的拡大は当然です。これまでが狭すぎました。ただ、努力義務だと導入しない企業が多いでしょう(特に中小企業では絶望的)。

子育てしていると、どうしても仕事を休んで出席しなければならない行事があります。入園式・卒園式・保育参観・発表会・様々な説明会・保護者会等、非常に多いです。これらに出席する為に有給休暇を利用すると、子供が体調を崩した際に有給休暇が足りなくなってしまう事態が起こりえます。

保護者がこうした行事等へ参加する重要性や必要性は高いです。であれば、出席できる様な制度が必要です。

また、こうした行事は小学校就学前に限りません。小学校入学後も頻繁に起こります。1学期だけでも家庭訪問・運動会・従業参観・個人懇談会・校外行事の説明会等があります。子育てに関する様々な休業制度を就学前に限定するのは実情に合っていません。

看護休暇も同様です。4年生になったら急に風邪をひかなくなるわけではありません。インフルエンザやコロナに感染してしまうと、長期の欠席や出席停止を求められます。

子育ては長期に渡ります。出産前後や3歳までの支援では足りません。小学校卒業までは仕事を柔軟に休みやすい(短時間勤務を含む)制度を、そして中学校以降は経済的な支援が重要となります。