子育て世帯の生活に重大な影響を与えるミスが起きてしまいました。
大阪市西成区役所で保育所等一斉入所に関する重大な処理誤りが生じ、本来は入所できる筈だった児童が入所できなくなってしまいました。
「謝られてもうちの子は入れないんですよね」 手続きミスで子どもが保育施設に入れず・・・大阪・西成区役所が謝罪 母親は育休延長することに
西成区役所は4月からの新年度の保育施設入所に関して、去年10月に希望を受け付け、今年1月下旬に希望者に対し、一次結果を通知しました。
そのうち、入所が内定保留となった子どもの母親から理由について問い合わせがあり、区が調べたところ、実際はその母親がフルタイム勤務という証明書を出していたのに、誤ってパートタイムとして処理されていたことがわかりました。
保育施設の入所は、親の勤務状況などを点数化して判断していて、この母親の場合、フルタイムとして処理されていたら、希望する施設へ入所できていたということです。
区はミスを認め、母親に謝罪しました。
すでにこの施設の空き枠が埋まってしまったことなどから、母親は育休を延長して、枠が空くのを待つことにしました。
「謝られても、うちの子は入れないんですよね」と話していたということです。
母親は当初パートタイムとする証明書を出し、その後、フルタイムへと変更する書類を提出していましたが、区職員が書類を処理する前に「処理済み」として保管してしまっていたということです。
区は「人生に影響を与えるミスだった」として、別の担当者がダブルチェックする手順を取り入れるなど、再発防止に努めるとしています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/af1db28b532d949b596c387d0e845b9a9a14007f
より詳しい内容が大阪市役所ウェブサイトに掲載されています。
1 保育施設入所の手続きについて
保育施設入所にあたり、保護者の就労(日数、時間等)、疾病や障がい、介護の状況、子のきょうだいの保育施設の利用状況等に基づいて、利用調整を行っています。翌年度の4月1日からの入所受付を行う一斉入所手続きでは、10月に申請受付を行った後に、申込状況を公表したうえで、11月中旬まで入所希望施設の変更や書類の追加・変更の受付を行い、1月下旬に入所にかかる利用調整(1次調整)の結果を通知します。その後、1次調整後の受け入れ可能枠を公表したうえで、2月上旬までに入所希望施設の変更等の受付を行い、2月下旬に入所にかかる調整(2次調整)の結果を通知します。
2 経過・概要
令和6年1月30日(火曜日)、令和6年4月から保育施設に入所希望のある区民の方(以下「A氏」という。)より保育施設入所が内定保留になった理由について問合せがありました。担当者が、A氏から提出された就労証明書により短時間勤務と判断され、利用調整にかかる点数が低かったことの説明をしたところ、A氏より令和5年11月13日(月曜日)に変更書類としてフルタイム勤務の就労証明書を提出しているとの申出がありました。すぐに担当者が資料を確認すると、A氏の変更後の就労証明書を受け付けていましたが、受け付けた就労証明書を処理済の申請書類一式の中に入れてしまったため、変更前の就労証明書により利用調整を行っていたことが判明しました。3 判明後の対応
令和6年1月30日(火曜日)に、担当者より変更後のフルタイム勤務の就労証明書であれば利用調整にかかる点数が高くなるため、A氏が希望する保育施設に入所できていたことの説明を行うとともに、事務処理誤りについて説明・謝罪を行いました。その後、2次調整において、A氏が希望する保育施設とも受入調整を行いましたが、当該保育施設の空き枠が生じず、また、他の保育施設の希望もされていなかったことから、令和6年4月からの保育施設入所への受け入れができなくなり、2月29日(木曜日)にA氏あてに内定保留の通知を送付しました。
3月7日(木曜日)、担当者よりA氏のご意向の確認と、空きのある他の保育施設を紹介するため連絡をしたところ、育児休業を延長し、希望する保育施設の受け入れを待つとの返答がありました。再度、A氏に謝罪し、同様の事務処理誤りが生じないよう再発防止に取り組むことをお伝えしました。
なお、西成区において、他に同様の事案がないか調査し、問題がないことを確認しました。
4 原因
担当者が、変更後の書類を受け付けた際に、本来、未処理の書類として保管すべきところ、処理済みの書類として保管したことが原因です。https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/nishinari/0000622624.html
他自治体と同様、大阪市も家庭における様々な状況を保育利用調整基準に基づいて点数化し、保育所等の入所調整を行っています。
一般的に夫婦共にフルタイムで働いていると、大阪市では点数が「200点(夫100点・妻100点)」となります。
しかし、「月20日以上かつ週30時間以上又は週5日以上かつ日6時間以上働いている」という就労状態だと90点に、「月16日以上かつ週24時間以上又は週4日以上かつ日6時間以上働いている」だと80点となります。
多くの子育て世帯が保育所等への入所を希望している保育所等では、「200点」が一つの目安となっています。200点未満となると、急激に入所しづらくなってしまいます。
内定保留となってしまった方は定められた期間内にフルタイム勤務を証明する書類を提出したので、「100点」と評価されるべきでした。しかし、この書類を担当者が失念してしまったので、90点や80点(もしくはそれ未満)と評価されてしまいました。
この点数差により、入所できる筈だった保育所等へ入所できなくなってしまいました。
どの点数ならば入所できるかは、当ウェブサイト上の分析記事を参照したり区役所の担当者に訊ねれば、概ね見通しは立てられます。また、10月下旬における中間発表の数字も参考になります。
西成区は少子化が進んでおり、保育所等へ入所しやすい地域の一つです。「西成区で200点あれば、余程の高倍率で無い限りは入所できる」というのが私の見込みです。
しかし、何故か入所保留になってしまいました。腑に落ちない気持ちで区役所へ訊ねたところ、書類を処理していなかった事が明らかになりました。
非常に怖いと感じたのは、こうしたミスが過去にも生じていた可能性が排除出来ない事です。今回は当事者が問い合わせたのでたまたま発覚しましたが、問い合わせなければ闇に埋もれていました。
以前から当ウェブサイトでは「入所面接時に点数を確認するのが望ましい」という旨を掲載しています。
しかし、担当者が書類を見落として処理してしまったら、面接等で確認する意味がありません。
再発防止策は非常に難しいです。大阪市の保育所等一斉入所には毎年1万人以上が申し込みます。行き交う書類は10万通以上です。これらを全て漏れなく誤りなく確実に処理するのは、本当に大変です(だからといってミスは許されませんが)。
一つの対策は「入所調整点数の(事前)通知」です。
申込者の多くは予め点数を計算し、それに基づいて希望する保育所等を記入しています。何らかの段階で点数が通知されれば、「何かおかしい」と気づく事が出来ます。
大阪市は面接申込等をオンラインで行っています。書類の追加提出等が終了し、必要な情報をシステムに入力し終えた段階で、申込者へ点数をオンライン(もしくは手紙)で通知するのです。
自分で計算した通りの点数なら問題ありませんが、大幅に異なった点数ならば何らかの誤りや思い違いが生じているかもしれません。その段階で区役所へ問い合わせれば、調整前にミスを発見し、本来の点数へ修正する事が可能です。
少なくとも一斉入所の結果を通知(1月下旬)する文書に点数を同封する事は容易です。
現在は調整処理の中身が全てブラックボックスとなっており、何番目で内定したのか、何人が保留となったのか、何点ならば入所できたのか等の情報が全く分かりません。様々な傍証等から推測するしかありません。
ダブルチェックを導入してもヒューマンエラーは生じます。であれば情報を通知し、申込者による確認を求めるのは有力な方法です。
入所保留となってしまった方は、入所したかった保育所等へ入所できるまで育児休業を延長するそうです。ライフプランが狂ってしまいました。
大阪市は適切な賠償等を行うと共に、入所枠が生じた際は最優先で入所できる措置を講じるべきです(当然ながら既に説明していると信じています)。