北九州市が「保育送迎ステーション」の設置を検討しています。

 保護者に代わり、バスで子どもを保育所に送迎する「保育所送迎ステーション事業」実施に向け、北九州市が新年度、検討会を立ち上げる方針だ。この事業の試行は、昨年初当選した武内和久市長の公約の一つ。ただ、市内では保護者の多くが自家用車で送迎しているのが実情で、そもそも需要があるのか不透明だ。

 送迎ステーション事業は、駅などに設けたステーション(一時預かり所)で保護者から子どもを預かり、保育士の同乗する巡回バスでそれぞれの保育園に送迎する仕組み。

 親にとって交通の便の良い場所に子どもを連れていけば、まとめてバスで送迎してもらえるため、保護者は保育園に直接立ち寄らずに通勤でき、園の選択範囲が広がる。国は待機児童などの対策として、バス導入費などを助成しており、2021年度には全国45自治体が導入した。

 全国に先駆け07年度から待機児童対策のため実施する千葉県流山市では、駅近くにステーション2カ所を設置。もっとも多かった13年度には延べ約5万6千人が利用したという。

 武内市長は昨年2月の市長選で、公約の一つに「保育所送迎ステーション事業の試行」を掲げて当選。市子ども家庭局は、ステーション事業試行に向けた準備費300万円を含む新年度一般会計当初予算案を市議会に提出しており、審議が進められている。(以下省略)

https://digital.asahi.com/articles/ASS3C6WW9S3CTIPE007.html

事業を担当する北九州市子ども家庭局は「送迎保育ステーション事業」として727万円を要求していましたが、当初予算では「送迎保育ステーション試行準備事業」として300万円へと減額しています。

事業を新年度から開始したかったものの、様々な準備等が必要として先送りにした様子が窺えます。

【予算要求】

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/001060022.pdf

【当初予算】

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/001074918.pdf

そもそも車社会たる北九州市に保育送迎ステーションが必要なのでしょうか。保護者に行ったアンケートでも、「作って欲しい」と回答したのは少数に留まっています。

 ただ、北九州市の今年度初めの待機児童はゼロ。市が昨夏に認可保育所166施設を通じて保護者1万4764人にアンケートしたところ、回答数3372人のうち車で送迎している家庭が84%を占めた。送迎時間についても8割以上が15分以内で、保育に関して希望することを尋ねた設問に「駅周辺に送迎センターを作ってほしい」と答えた人は3%だった。

市長は流山市の成功例を強調しています。東京への鉄道による通勤アクセスが極めて良い流山市では子育て世帯が急増し。待機児童問題が深刻化しました。そこで鉄道駅付近に送迎ステーションを設け、駅から離れた保育所等へ送迎しています。

送迎保育ステーションのご案内

朝(登園)
・7時00分 ~ 7時50分
送迎保育ステーションへお子様を預ける

・8時00分 頃
バスが各保育所(園)へ向けて出発

・~ 9時00分
 各保育所(園)へ登園

夕方(降園)
・16時00分 頃
 バスが各保育所(園)へ向けて出発
 各保育所(園)より降園

・~ 17時00分 頃
 お子様を乗せたバスが送迎保育ステーションへ戻る

・~ 18時00分
 送迎保育ステーションにてお子様をお預かり、保護者がお迎え

https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1001107/1001188/index.html

これは駅が交通結節点となっている首都圏(都市部)だからこそできる事業です。また、利用者は全体の2.4%に留まっています(令和4年度)。

送迎保育ステーション事業は便利サービスではない(待機児童対策)
https://note.com/mihokondoh/n/n9531d2bb2d24

翻って北九州市は工業が主体の街であり、主要な交通手段は自動車です。街の構造が流山市とは全く異なります。

確かにピンポイントで「保育送迎ステーションがあったら助かる」という方もいるでしょう。しかし、より必要なのは「自宅周辺は通勤途中で利用出来る保育所等」の存在です。

自動車等で送迎ステーションへ預けるより、利用しやすい場所にある保育所等へ直接送迎した方が楽です。何より子どもを担当する保育士と直接コミュニケーションが取れるのは何よりのメリットです。

まだ、送迎ステーションの運営には保育士・バス・バス運転手等が必要です。保育士やバス運転手はいずれも求人が難しい職種です。この事業に充てる人員は採用できるのでしょうか。

今後は急激に少子化が進みます。北九州市でも保育所等へより入所しやすくなり、登園するのに不便な保育所等へ入所せざるを得ない事例は減っていくでしょう。

果たして保育送迎ステーションは本当に必要なのか、そして滞りなく運営できるのか、少し疑問の目で見ています。